東京大学 過去問

2026年 東京大学 物理 問題分析・解答への道筋

羽白 いむ

東京大学医学部医学科卒 現役医師
東大指導専門塾鉄緑会 物理・数学科元講師
物理基礎のトリセツ著者
数学のトリセツ共著者

所感

総評:計算量の少ない標準問題が多く,高得点を目指しやすい。

難易度の高い年度が続いていましたが,かなり標準的で解きやすい内容になった印象です。見慣れた系の設定も多く,取り組みやすかったのではないでしょうか。

羽白

落ち着いて,前半から丁寧に解いていくことが重要。

じっくり時間をかけて丁寧に解いていけば満点も充分狙える内容といえます。考えてもわからないであろう,差がつく問題は「第1問 Ⅱ(3)」「第3問 Ⅱ(1)」くらいに思います。

さらにどの問題も誘導が丁寧で,「方針を立てるのに悩まない問題が多い」こと,「明らかに捨て問と思われるような難易度の問題が存在しない」ことも特徴です。

よって,差をつけるためには「解くスピード」「ミスをせず丁寧に解くこと」の2点が重要といえるでしょう。難易度が下がれば下がるほど,計算ミスなどの初歩的なミスが致命傷になります。

羽白

試験中に「今年の物理,簡単かも…?」と思ったら特に慎重に。

第2問が平易なため,最初に解けば勢いに乗れると思いますが,第1問や第3問から解き始めても大きな差はないでしょう。

1問20分程度でスラスラと解き進めて目標点を確実に確保したうえで,化学に時間を回せたらばっちりです。化学を終えて,さらに時間が余ったら戻ってきて残りの問題を解く,という配分が正解かと思います。

逆に,「時間をかければ解けそう」と思えてしまうため,適度なところで切り上げる判断力も重要です。日々の過去問演習の中でしっかりと身に付けておきましょう。

2026年全体の特徴

  • 時間さえかければどの設問も満点を狙える内容。
  • いかに効率よく,時間をかけずに高得点を取れるかが最大のポイント。
  • 標準的な物理の理解ができていれば,大失敗もしにくい。前半の問題でミスをして引きずると致命傷になる。

出題量について

答えるものの数は「28個」であり,前年と同じく少なめです。

さらに,よほど変な解き方をしない限り,1問1問の答えを出すのに必要な計算量も非常に少なく,短時間で解き終えることが十分可能な分量です。大問ごとの差も少ないです。

各大問における文章量は比較的多いため,「短時間で問題設定をしっかりと読み解く力」は引き続き重要となるでしょう。

内容について

全体的に解きやすい問題です。「こんな考え方したことない…!」というような問題はなかったはず。

羽白

一見すると複雑そうですが,考える手順はオーソドックスなものばかりです。

特に第2問はかなり標準的な内容であり,類題を解いたことがないという受験生はいないでしょう。

羽白

だからこそ,解けなかったり間違えたりしたら大変。標準問題を当たり前にスラスラと解けることはとっても重要。

2025年まで多く出題されていた,単元をまたいだ問題もありませんでした。熱力学の内容は力学的な考察ができると楽ではありますが,そうはいっても「融合問題」とまでは言えないものです。

解く順番

全体を俯瞰すると,「第2問が解きやすそう!」と思えるのではないでしょうか。

羽白

回路自体がそもそもシンプルだし,いかにも導体棒が回りそうだし。

結果的にも第2問が最も平易なため,第2問から解くのが正解でしょう。次に第1問を解くか第3問を解くかは,どちらが正解とも言い難いです。得意分野などに応じて選ぶのがよいように思います。

そうは言っても,大問間の難易度差は小さいため,どのような順番で解いても大きな差は生じないセットだといえます。

推奨解答順序

第2問 → 第1問 → 第3問

第1問:苦手な人が多い「剛体」

「剛体」というだけで「苦手!!オワった!!」と思った受験生も少なからずいたことでしょう。しかしながら誘導も丁寧であり,決して難しい問題ではありません。

この手の問題では「どの座標系で考えるか」によって難易度が変わることも多いですが,本文においては「剛体においては力のモーメントのつり合いを考えたいから,剛体と共に動く視点で考えよう!」という方針が立てられればその点も安心です。

羽白

剛体の運動については高校範囲外です!

静止摩擦力の向きも少々難しいですが,わざわざ図に示してくれているのも良心的です。Ⅱ(2)まではすらすらと解けるでしょう。

最初に差がつくのがⅡ(3)でしょう。水平面上で力の作用図を考えて静止摩擦力を考えることができればなんてことないのですが,そこで詰まってしまうと厳しいところ。それでもⅢ(1)は解けるため,さっと答えて切り上げるというのが最低目標です。

次に差がつくのがⅢ(2)。立式の方法によっては計算がとても煩雑になります。うまくいかなければ立式だけして飛ばすというのも1つの手と考えられます。

第2問:あまりにもオーソドックスな誘導起電力の問題

図を見た瞬間に「これはいける!」と思いたい問題。思えなかったならまだまだ演習不足。

羽白

図2-2を見て思わず笑っちゃうくらいがちょうどいい。

しかも誘導起電力の問題で普段ならしっかり考えないといけない「誘導起電力の符号」が問われないなど,出題も非常に良心的。

Ⅱ(3)まではスラスラと解き進めたい内容です。Ⅲからは少々複雑になりますが,そうはいっても丁寧に噛み砕いていけば立式は簡単。

しかし,だからこそ,しょうもないミスが致命的になる問題でもあります。例えば何らかのミスで「$\bun12Bl^2$」の「$2$ 乗」が全て抜けてしまったりしたら…。

羽白

$0$ 点になりかねない状況ですが,$\alpha$ が導入されているので,後半に影響しない設計。どこまで良心的なんだ。

変なミスが無ければ完答も十分狙えるはず!

第3問:目を背けたくもなる「レンズ」

羽白

レンズがでるかぁ…。という意見もあるかと思いますが…。

複雑なことは問われていません。レンズの基本的な内容が理解できていれば充分高得点が狙える内容。

特にⅠの内容は標準的な合わせレンズの問題であり,確実に正解したいところです。

得点を分けるのはⅡ (1)でしょう。

羽白

近似の計算に慣れているかどうか!

ここが乗り越えられればその先の問題もスラスラ解けるでしょうし,ここで詰まってしまうとどうしようもありません。2026年の物理で最も得点をわけたのはこの1問で間違いないでしょう。

目標点

科類第1問第2問第3問
理Ⅰ・Ⅱ13点16点12点41点
理Ⅲ17点18点17点52点

参考資料

解答の作成方法など,東大物理の対策総論については以下のページもご参考に。

東京大学 物理 傾向と対策
東京大学 物理 傾向と対策
東大物理の傾向分析のページです。 試験時間の使い方や解答作成方法について,詳しく説明しています。
詳しく見る

難易度・配点

第1問

設問難易度(A〜D)配点
A2点
(1)A3点
(2)A3点
(3)B3点
(4)B2点
(1)B2点
(2)C3点
(3)C2点

第2問

設問難易度(A〜D)配点
A2点
(1)A3点
(2)A2点
(3)A3点
B2点
(1)B3点
(2)B3点
(3)B2点

第3問

設問難易度(A〜D)配点
(1)A3点
(2)A2点
(3)B3点
(4)B2点
(5)B2点
(1)C2点
(2)B2点
(3)B2点
(4)B2点

難易度は羽白が独自に設定しています。
A:全ての受験生が解けないといけない問題。
B:標準的な難易度の問題。確実に全て解き切ることが目標。
C:やや難易度の高い問題。理Ⅲ志望生なら解きたい内容。
D:難易度が高すぎる問題。よほど物理が得意でなければ撤退推奨。

採点基準

第1問

設問基準点数
運動方程式を立式して1点
正答を得て1点
(1)力のモーメントのつり合いを立式して2点
正答を得て1点
(2)力のつり合いを立式して2点
正答を得て1点
(3)円運動,加速運動に対する慣性力を述べて各1点
正答を得て1点
(4)摩擦力の最大値が $\mu mg$ であると述べて1点
正答を得て1点
(1)力のモーメントのつり合いを立式して1点
正答を得て1点
(2)2方向に分けた力のつり合いを立式して各1点
正答を得て1点
(3)速さの比を数式で表して1点
正しく説明を終えて1点

第2問

設問基準点数
$\varDelta\varPhi$ を求めて1点
正答を得て1点
(1)導体棒に流れる電流の大きさを求めて1点
導体棒に作用する電磁力の大きさを求めて1点
正答を得て1点
(2)正答を得て2点
(3)回路に流れる電流が $0$ となることを述べて2点
正答を得て1点
誘導起電力の大きさを求めて1点
正答を得て1点
(1)正しく立式して1点
$C_2,\,Q_2$ を求めて各1点
(2)電荷保存則を立式して2点
正答を得て1点
(3)正答を得て2点

第3問

設問基準点数
(1)写像公式を正しく立式して1点
正しく説明を終えて2点
(2)正答を得て2点
(3)写像公式を立式して1点
$f,\,\tan\theta$ を求めて各1点
(4)条件を正しく述べて1点
正答を得て1点
(5)正しく説明を終えて2点
(1)正しく立式して1点
正答を得て1点
(2)正答を得て2点
(3)ボケの大きさを求めて1点
対応する大きさを求めて1点
(4)正答を得て2点

第1問

手書き解答

東大2026_1

Ⅲについて

どこまで記述するかがすこし悩ましいところです。

$$\bun{v_2}{v_1}=\sqrt{\bun{1+\bun{1}{\mu}\tan\theta}{1-\mu\tan\theta}}$$

の形をしっかりと明記して,説明はほどほどで良いかもしれません。時間があれば書くに越したことはありませんが。

羽白

一番のポイントは「視点の取り方」でしょう。

一輪車とともに動く視点で考えるか,静止系で運動方程式を立式するか。

どちらでも解けるのですが,そもそも「剛体」の問題ですから,「剛体が静止している視点で考えたい…!!」と考えたいところ。

以下では,一輪車とともに動く視点で考えていきます。

東大2026_1_1

力の作用図はスラスラかけるはず。力のつり合いも,

$$mg=N_1,\,ma=f_1$$

と速やかに立式できるはず。静止摩擦力の最大値は $\mu N_1$ ですので,これを整理すればok。

静止摩擦力の向きが左であることは問題文の図から明らかですが,この向きが与えられていなくても自分で正しく考えられないといけません。

そもそも水平方向に作用する力が静止摩擦力しかないので,「一輪車は静止摩擦力によって加速しているはずだ」ということがわかっていれば当たり前のことなのですが…。

Ⅱ(1)

この問題では視点の取り方をしっかりと考える必要があります。

「力のモーメントのつり合いを立式するだろうな」ということがわかった時点で,剛体が静止して見えていないと困ってしまいますから,迷うことはないと思いたい。一輪車とともに円運動する視点で考えましょう。

東大2026_1_2

遠心力を含めて力の作用図を丁寧にかき,あとは力のモーメントのつり合いを立式するだけ。

$$mg\cos\theta \cdot\bun{L}{2}=m\bun{v_0\!^2}{R}\sin\theta\cdot\bun{L}{2}$$

となります。

Ⅰ(2)

(1)の力の作用図を見ながら,力のつり合いを立式するだけです。

$$f_2=m\bun{v_0\!^2}{R}$$

となります。$N_1$ については,Ⅰと同じことが明らかなので,文字もそのままですし,力のつり合いの立式もしていません。

Ⅰ(3)

こちらもまず考えるのは「どの視点で考えるか」です。やはり剛体である一輪車が静止する視点で考えます。

遠心力に加えて,接線方向の加速に伴う慣性力も考える必要があります。加速度が $a$ であることから,大きさが $ma$ となることはすぐに分かるでしょう。向きに注意しながら,水平方向の力の作用図(真上から見た図)をかきます。

羽白

この力の作用図を正確にかけるかどうかがポイント!!

東大2026_1_3

力のつり合いが成立するので,静止摩擦力,慣性力 $ma$,遠心力 $m\bun{v_0\!^2}{R}$ の3力がつり合う関係になっています。

羽白

次図のような補助線を引いて考えるとわかりやすいのではないでしょうか!

東大2026_1_4

立てる式も自ずと見えてくるはずです。三平方の定理より,

$$f\mskip 2mu\prime =\sqrt{(ma)^2+\left(m\bun{v_0\!^2}{R}\right)}$$

と立式できますね。

Ⅱ(4)

(3)が解けていればサービス問題です。垂直抗力の大きさは $N_1$ のままですので,静止摩擦力の上限値は $\mu N_1$ です。

よって,$f\mskip 2mu\prime =\mu N_1$ となるときの $a$ を求めればok。

羽白

すらすらっと解けてしまいますが,「垂直抗力の大きさが $N_1$ から変わっていないこと」は必ずチェックしましょう!こういう細かなチェックの習慣を…!

Ⅲ(1)

まずは何より丁寧に力の作用図をかきましょう。

東大2026_1_5

円運動の中心を正確に把握すること,遠心力の向きを間違えないこと,といったあたりがポイントでしょうか。

下図の三角形に注目すると角度の把握が容易になります。

東大2026_1_6

水平面に対する一輪車の角度は $\theta$ ですので,立式する力のモーメントのつり合いは Ⅱ(2) と全く同じになります。

よって答えも一瞬で出ます!

生徒

Ⅲ(2)

力のつり合いを立式していくわけですが,「求める値が何か」を明確に意識しながら力を分解していくことが重要です。

力の作用図を見ると $N_3$ と $f_3$ を分解すると楽に立式できそうですが,そうすると計算が非常にややこしくなってしまいます。

羽白

逆に時間がなければ,$N_3$ と $f_3$ を分解した力のつり合いを2式立てるだけ立てて他の問題にうつる,というのも一つの戦略でしょう。

$N_3$ と $f_3$ をそのままにするために,$mg$ と $m\bun{v_0\!^2}{R}$ を分解する方法を考えます。そのために,$f_3$ と平行な補助線(図の赤線)を引きましょう。

東大2026_1_7

この補助線が引ければ,力のつり合いが非常に立式しやすくなるかと思います。

$$\begin{aligned}N_3&=mg\cos\varphi+m\bun{v_0\!^2}{R}\sin\varphi\\ f_3&=m\bun{v_0\!^2}{R}\cos\varphi-mg\sin\varphi\end{aligned}$$

ですね。あとは $f_3=\mu N_3$ となるときの $v_0$ を求めればok!

$$v_2=\sqrt{\bun{\mu+\tan\varphi}{1-\mu\tan\varphi}}$$

となります。

羽白

「$N_3$ と $f_3$ を分解したくない!」ことを踏まえて考えられるかどうかが全てです。

答えの式の分数の分母に「$-$」が含まれています。ここから,$1>\mu\tan\varphi$ であることが前提条件であり,問題文で与えられている式「$\tan\varphi<\bun{1}{\mu}$」がこれに相当することがわかります。

Ⅲ(3)

問題文から,「勾配が付いてる方がいいんだよ!大きな速度で走行しても安全なんだよ!」という意図が読み取れます。つまり,$v_2>v_1$ であることを示したいわけです。このことから,

$$\bun{v_2}{v_1}>1$$

が示すべき式だとわかるでしょう。

羽白

時間がなければ,途中式を一切かかずにしれっと「設問の結果から,$\bun{v_2}{v_1}>1$ であることがわかるので〜」とかいても部分点はもらえるはず。

実際に比を取ってみると,

$$\bun{v_2}{v_1}=\sqrt{\bun{1+\bun{1}{\mu}\tan\varphi}{1-\mu\tan\varphi}}$$

です。明らかに,

$$1+\bun{1}{\mu}\tan\varphi>1,\ 1-\mu\tan\varphi<1$$

ですので,$\stext{(分母)}<\stext{(分子)}$ です。よって,$v_2>v_1$ であることが示されました!

第2問

手書き解答

東大2026_2

問題文で「考え方」が示されているので,「それに沿って考えていますよ」というのが伝わるように簡潔に記述すればokです。

Ⅱ(2)

選択問題なので答えのみでok。

Ⅱ(3)

「回路に流れる電流が $0$ になる」ことなど,ポイントとなる部分にしっかり言及しましょう。

Ⅳ(2)

かこうと思えばいくらでもかけてしまいそうな内容ですが,なるべく簡潔に済ませましょう。誘導で触れられている「電荷保存則」についてはしっかりと言及したいところ。

考え方は誘導で与えられている通りです。導体棒が単位時間に通過する領域の磁束を考えます。

導体棒の角速度が $\omega_1$ ですので,微小時間 $\varDelta t$ の間に通過する領域は次図の通りです。

東大2026_2_1

面積 $\varDelta S$ は,

$$\varDelta S=\pi l^2\cdot\bun{\omega_1\varDelta t}{2\pi}=\bun12l^2\omega_1\varDelta t$$

となります。よって,この領域の磁束(符号を考えない)は,

$$\varDelta\varPhi =B\varDelta S=\bun12l^2B\omega_1\varDelta t$$

ですね。あとはこれを元に,$\left|\bun{\varDelta\varPhi}{\varDelta t}\right|$ を考えればok。

羽白

似た問題を解いたことないって人はいないはず!

Ⅱ(1)

まずはスイッチを入れた直後の状況の整理です。導体棒は静止しているので,生じる誘導起電力も $0$ であることに気をつけましょう。

東大2026_2_2

回路に流れる電流の大きさは,$I=\bun{V}{R}$ としてすぐに求まりますね。電磁力の大きさも,

$$lIB=\bun{lVB}{R}$$

とすぐに計算できます。あとはこれに $\bun{L}{2}$ をかければok。

Ⅱ(2)

導体棒に流れる電流と,磁束密度の向きから考えます。

東大2026_2_3

状況が正しく整理できれば,フレミングの左手の法則で一瞬ですね。

Ⅱ(3)

一定の角速度」というところがポイントです。

羽白

すぐに,導体棒に作用する力のモーメントがつり合っているんだな,と解釈できますか…?

質点が等速度運動を行うときに力のつり合いが成立するのと同様に,剛体が一定の角速度で回転運動を行うとき,力のモーメントのつり合いを考えることができます。

今回の状況では,導体棒に作用しうる力は電磁力のみですので,電磁力が作用しないことがわかります。つまり,回路には電流が流れません。

羽白

この点については解答でも言及しておくとよいでしょう。

回路の状態を整理すると,次図の通りです。

東大2026_2_4

キルヒホッフの第二法則から,$V=\alpha\omega_2$ と立式できますね。$\omega_2=\bun{V}{\alpha}$ が答えです。

$\alpha$ はⅠで求めているので整理して,$\omega_2=\bun{2V}{l^2B}$ とすることもできます。しかし,$\alpha$ も $V$ も答えに含めてよい文字なので,あえて整理するメリットがありません。

むしろ,Ⅰが解けなかった受験生の大学側からの配慮と考えるべきでしょう。$\alpha$ を答えに用いることができないと,Ⅰが解けない(あるいはケアレスミスした)受験生はこの大問をまるまる落とすことになってしまうので…。

導体棒の角速度は一定ですので,やはり回路に流れる電流は $0$ です。このことを踏まえて,状況を整理します。

東大2026_2_5

図をみればすぐに「コンデンサーの電圧が $\alpha\omega_3$ だ」とわかりますね。よって,$\bun12C_1(\alpha\omega_3)^2$ を計算すればok。

羽白

この問題もさらに整理する必要はありません。むしろ $\alpha$ を残して解答しておくのが安心。

状況が整理できてしまえば暗算で答えが出せるのに対して,状況が整理できないとどれだけ時間をかけても解けません。過渡現象の問題と同じで,非常に差がつきやすい問題です。

Ⅳ(1)

もはや文章の読解問題です。

$$\bun12Q_2(\alpha\omega)=\bun12C_2(\alpha\omega)^2=\bun12\beta\omega^2$$

と立式できればok。

問題文で与えられている $\beta$ は,慣性モーメントと呼ばれる値です。剛体の「回転のさせにくさ」を表します。

並進運動の運動エネルギーが「加速させにくさ」を表す質量 $m$ を用いて,$\bun12mv^2$ と表されるのに対して,回転運動の運動エネルギーは「回転のさせにくさ」を表す慣性モーメント $\beta$ を用いて,$\bun12\beta\omega^2$ で表されます。

Ⅳ(2)

仮想コンデンサーとして考えることで,シンプルなコンデンサー回路の問題になります。

東大2026_2_6
羽白

この回路をみて,難しそうに見えますか…?すごくシンプルですよね…?

まず,端子 $\rmY$ にスイッチを入れたことで,コンデンサー2に $C_2V$ の電荷が蓄えられます。

続いて,端子 $\rmX$ にスイッチを入れ替えると,この電荷が電気容量の比に分配されるので,コンデンサー1に移動する電気量は,

$$Q_1\mskip 1mu\prime =\bun{C_1}{C_1+C_2}Q_1\mskip 1mu\prime =\bun{C_1C_2}{C_1+C_2}V$$

と計算できます。あとはエネルギーを計算すればokです。

羽白

電荷を設定して,電荷保存則とキルヒホッフの第二法則を立式して,という流れでもよいのですが,構造が見えれば上記の通り暗算で答えが出せます。

Ⅳ(3)

それぞれの設問の答えを比較するだけのサービス問題!

第3問

手書き解答

東大2026_3-1

Ⅰ(2)について

選択問題なので答えのみでok。

Ⅱ(3)について

数値計算問題なので悩ましいところ。後半の問題であること,答えが複数あることから,立式だけでは点数がもらえないと考えて答えのみでokです。

Ⅰ(1)

「物体と実像とレンズの位置関係を表すレンズの式を用いて」とあるので,素直に写像公式を立式しましょう。

レンズと物体の距離を $a$,レンズと像の距離を $b$ とすれば,

$$\bun{1}{a}+\bun{1}{b}=\bun{1}{d}$$

ですね。

考えている状況は,像の位置がレンズから非常に離れているときですので,$a\to\infty$ として考えればokです。$b\to d$ となることはすぐに理解できるはず。

Ⅰ(2)

まずは状況を図で整理しましょう。(1)で考えたように,像の位置は凸レンズの焦点の位置として考えます。

東大2026_3_1

初等幾何的な考察から,像の高さは,

$$H\cdot\bun{d}{D}=\bun{Hd}{D}$$

であることがわかります。この像の高さを大きくするためには,焦点距離 $d$ を大きくすればよいこともすぐわかりますね。

羽白

誘導にもある通り,「レンズの中心を通って直進する光」に注目することが重要です。

Ⅰ(3)

合わせレンズの内容です。目盛り付きのわかりやすい図があるので,状況は非常に整理しやすかったと思います。

定石通り,左側の凹レンズに注目して写像公式を立式していきます。光源が虚光源であることに注意しましょう。

羽白

虚光源の扱い,大丈夫ですか…?

虚光源
虚光源
目次1 合わせレンズ2 虚光源3 合わせレンズにおける写像公式 合わせレンズ 重なったレンズ 焦点距離が $4.0\cm$ の2枚の凸レンズを次図のように $1.0\cm$ だけ離れた位置に設定した状 ...
詳しく見る
東大2026_3_2
羽白

右側の凸レンズのことは一旦忘れて,凹レンズだけに注目して考えるのがポイントです。

「レンズの奥で光が集まるはずだった場所」が虚光源ですので,図の $\rmP_1$ が虚光源の位置になります。よって,写像公式 $\bun{1}{a}+\bun{1}{b}=\bun{1}{f}$ の $a$ に相当する値は $-d$ です。

像はレンズを通過した光が集る場所ですので,今回は $\rmP_2$ です。よって,$b=3d$ となります。

レンズの焦点距離を $f$ とすると,写像公式は,

$$-\bun{1}{d}+\bun{1}{3d}=-\bun{1}{f}$$

です。これを $f$ について解けばok。

続いて $\tan\alpha$ について。こちらは初等幾何的な考察です。

東大2026_3_3

上図のように整理できれば,

$$\tan\alpha=\bun{\bun{w}{5}}{3d}=\bun{w}{15}$$

であることは容易にわかりますね。

Ⅱ(4)

考えるのは次図の状況です。

東大2026_3_4

簡易的な図さえかけてしまえば立式はなんてことないでしょう。直角三角形に注目して,

$$\tan\alpha=\bun{w}{f\mskip 2mu\prime }$$

でokです。

Ⅰ(5)

実際に図をかいてみるとわかると思いますが,$f\mskip 2mu\prime =15d$ ですのでかなり横長な図になります。

羽白

長くなりすぎるので,上の2つ目の図は $\alpha$ をちょっと大きくしてかいてます。最初の図と同じ $\alpha$ でかくと,ページの横幅に収まらないくらい横長な図になってしまいます。

現実世界でも同じ問題が発生します。つまり,「レンズとスクリーンの距離が長くなりすぎる」のです。望遠レンズについては,小型であるに越したことはありません。

羽白

iPhoneもそうですよね。カメラのところだけボコって飛び出ています。あの部分,なんとしても薄くしたいと設計者は考えますよね。

解答としては,「レンズとスクリーンの距離を短くすることができる」ということが簡潔に述べられていればokです。せっかく問題を解いているので,凸レンズ単体のときは $15d$ であるのに対し,合わせレンズだと $7d$ である,という具体的な数字で議論するとより丁寧です。

Ⅱ(1)

近似に慣れているかどうかで大きな差が出る問題です。

羽白

立式だけして飛ばす,というのも手ではあるのですが,その先の3問も解けなくなるのでどうしても差がつきます。

立式については悩まないのではないでしょうか。2点間の距離なので,

$$\begin{aligned}\overline{\rmW_2\rmQ}&=\sqrt{(d\cos\beta-x)^2+(d\sin\beta-y)^2}\\ \overline{\rmW_1\rmQ}&=\sqrt{(d-x)^2+y^2}\end{aligned}$$

です。あとはこれをいかにして,$\sqrt{1+\varepsilon}$ の形に近づけていくかです。

羽白

この部分は多少の慣れもありますが,以下の原則はしっかりと押さえておきましょう。

微小量の近似

$x\ll1$ のとき,

$$(1+x)^{\alpha}\fallingdotseq1+\alpha\,x\quad \sin x\fallingdotseq\tan x\fallingdotseq x$$

さらに,(1次近似においては)「微小量の $2$ 乗以上の項は無視する」というルールが重要です。

これらの近似を使用していくために,まずは「微小量が何であるか」を把握することが重要です。今回は問題文で与えられている通り,$|x|,\,|y|\ll d$ ですので,

$$\bun{x}{d},\,\bun{y}{d}\ll d$$

です。つまり,$\bun{x}{d}$ や $\bun{y}{d}$ といった形を作っていくという目的意識が何より重要になります。

羽白

なんとなくごちゃごちゃ式変形していても解けません。必ず目的を持って。

まずは $\overline{\rmW_1\rmQ}$ から考えていきましょう。$\bun{x}{d}$ や $\bun{y}{d}$ をルートの中に作るために,$d$ をルートの外に出します。

$$\overline{\rmW_1\rmQ}=d\sqrt{\left(1-\bun{x}{d}\right)^2+\left(\bun{y}{d}\right)^2}$$

となります。$\left(\bun{y}{d}\right)^2$ は無視できる微小量の $2$ 乗の項です。$\left(1-\bun{x}{d}\right)^2$ を展開することで,「$1+\stext{(微小量)}$」の形が作れ,さらに $\left(\bun{x}{d}\right)^2$ の形もできる見通しが立つので,式変形を進めます。

$$\begin{aligned}\overline{\rmW_1\rmQ}&=d\sqrt{\left(1-\bun{x}{d}\right)^2+\left(\bun{y}{d}\right)^2}\\ &\fallingdotseq d\sqrt{1-\bun{2x}{d}}\end{aligned}$$ です。$2x\ll d$ ですので,$-\bun{2x}{d}$ の部分が $\sqrt{1+\varepsilon}$ の形の $\varepsilon$ に対応するとみなすことができます。

よって,$\sqrt{1+\varepsilon}\fallingdotseq 1+\bun{\varepsilon}{2}$ の近似を用いることで,

$$\begin{aligned}\overline{\rmW_1\rmQ}&\fallingdotseq d\sqrt{1-\bun{2x}{d}}\\ &\fallingdotseq d\left(1-\bun{x}{d}\right)\\ &=d-x\end{aligned}$$

と変形できますね。

$\overline{\rmW_2\rmQ}$ についても式変形の方針は同じです。$d$ を括り出して,展開して,という手順で変形していくと,

$$\begin{aligned}\overline{\rmW_2\rmQ}&\fallingdotseq\sqrt{(d\cos\beta-x)^2+(d\sin\beta-y)^2}\\ &\fallingdotseq d\sqrt{\left(\cos\beta-\bun{x}{d}\right)^2+\left(\sin\beta-\bun{y}{d}\right)^2}\end{aligned}$$

展開すると $\sin^2\beta+\cos^2\beta=1$ の形が見えると思います。$\left(\bun{x}{d}\right)^2$ と $\left(\bun{y}{d}\right)^2$ の項を無視すると,

$$\begin{aligned}\overline{\rmW_2\rmQ}&\fallingdotseq d\sqrt{1-\bun{2x\cos\beta}{d}-\bun{2y\sin\beta}{d}}\\\end{aligned}$$

です。$-\bun{2x\cos\beta}{d}-\bun{2y\sin\beta}{d}$ が微小量 $\varepsilon$ に相当するので,与えられた近似を用いると,

$$\begin{aligned}\overline{\rmW_2\rmQ}&\fallingdotseq d\left\{1-\bun12\left(\bun{2x\cos\beta}{d}-\bun{2y\sin\beta}{d}\right)\right\}\\ &=d-x\cos\beta-y\sin\beta\end{aligned}$$

と変形できます。

以上を整理することで,

$$\begin{aligned}\overline{\rmW_2\rmQ}-\overline{\rmW_1\rmQ}&=x(1-\cos\beta)-y\sin\beta\end{aligned}$$

が得られます。

羽白

「どうやったらそんな変形思いつくの?」という質問が時折ありますが,上に説明した通り「微小量を意識して,与えられた近似の形を作る」という目的意識を明確に持っていれば,自然とたどり着くはず!

Ⅱ(2)

絶妙に問題文が不親切です。「前問Ⅱ(1)で求めた光路差」は符号付きの議論をしており,$x=0$ の条件下で光路差が $\bun{\lambda}{2}\ (>0)$ に等しくなるとき,

$$-y\sin\beta=\bun{\lambda}{2\sin\beta}$$

となります。$y=-\bun{\lambda}{2}\ (<0)$ となってしまうので,このときの $y$ 座標の値の「大きさ」が求めるボケの大きさになります。よって,

$$|y|=\left|-\bun{\lambda}{2\sin\beta}\right|=\bun{\lambda}{2\sin\beta}$$

が答えです。

Ⅱ(3)

数値設定が親切です。

$$\tan\beta=\bun{R}{d}=\bun{5}{12}$$

ですので, $\sin\beta=\bun{5}{13}$ と計算できます。あとは数値を(2)の式に代入すればok。

後半の「物体上でどれくらいの大きさに対応するか」という部分については,少々方針が立てづらいかもしれません。要するに「スクリーン上のボケは,物体上の大きさにするとどの程度か」というのを聞かれています。

Ⅰ(2)と逆のことを考えればよいので,スクリーン上のボケの大きさを $\bun{D}{d}$ 倍すればokです。

Ⅱ(4)

スクリーンを近づけているので,$x>0$ の状況を考えています。さらに $y=0$ であることから,

$$\bun{\lambda}{2}=x(1-\cos\beta)$$

とスムーズに立式できるはず。これを整理すればokです。

-東京大学, 過去問