物理基礎の復習
「仕事」の復習はこちら!
-
仕事
目次1 仕事とは2 物理学での仕事3 仕事率4 仕事の原理 仕事とは 物理でいうところの「仕事」 「仕事」という言葉は日常生活でよく耳にすると思いますが,物理で扱う「仕事」はまた別の意味を持っています ...
続きを見る
仕事の再確認
内積を用いた仕事の表現
仕事,エネルギー絡みについては入試でも出題頻度が非常に高く,重要な内容ですので改めて理解を深めておきましょう。
「仕事ができない大人」なんてカッコ悪いですよね。皆さんは「仕事が得意な受験生」を目指しましょう。
さて,仕事の計算方法は物理基礎で学習した通りです。$W=Fs\cos\theta$ でした。
この形,よくよく見ると何かに見えてきませんか…?
ベクトルの内積ですね!!
力を $\vec{F}$,物体の変位を $\vec{s}$,$\vec{F}$ と $\vec{s}$ のなす角度を $\theta$ としたとき,$\vec{F}$ と $\vec{s}$ の内積は,
$$\vec{F}\cdot\vec{s}=Fs\cos\theta$$と計算できますよね。
これが仕事と全く同じ形になっているので,$$W=\vec{F}\cdot\vec{s}$$とまとめることができます。
内積を用いた仕事の表現
力を $\vec{F}$,物体の変位を $\vec{s}$,$\vec{F}$ と $\vec{s}$ のなす角度を $\theta$ としたとき,$\vec{F}$ が物体にした仕事$W$ は,
$$W=\vec{F}\cdot\vec{s}$$
実際の仕事の計算
実際に仕事を計算する際には,$Fs\cos\theta$ を,$s\cdot F\cos\theta$ とみて考えると便利です。
$F\cos\theta$ は,物体の移動方向の力の成分ですので,「移動方向に力がどれだけ物体を引っ張ったか」によって仕事が決まっていることがわかります。
移動する物体に対して,移動方向に力が作用すると,その力は仕事をしたことになるのでした。
特に以下の場合については頻出ですので,速やかに仕事を計算できるようにしておきましょう。
$\theta=0\Deg \text{の場合:}\cos\theta=1$
物体の移動方向と力の向きが一致している状況。$W=Fs$ で計算できる。
$\theta=90\Deg\text{の場合:}\cos\theta=0$
物体の移動方向と垂直な向きに力が作用している状況。$W=0$ となる。
$\theta=180\Deg\text{の場合:}\cos\theta=-1$
物体の移動方向正反対の向きに力が作用している状況。$W=-Fs$ で計算できる。
それぞれの状況を図示して整理すると次の通りです。
力方向の移動距離を考える方法
$Fs\cos\theta$ は,$F\cdot s\cos\theta$ とみることもできます。
$s\cos\theta$ は,力の方向の変位(力の向きにどれだけ進んだか)を表している値です。
よって,
$$W=\text{(力の大きさ)}\times\text{(力の向きに移動した距離)}$$として仕事を計算することもできます。
一般的な仕事の定義
内積での表現の限界
「仕事についてはここまで丁寧に確認したし,もう完璧!」といいたいところなのですが,残念ながら「仕事が得意な受験生」への道のりはまだ遠いのです。
もう少し仕事について深く見てきましょう。
弾性力の仕事
ばね定数が $k$ のばねがある。自然長からばねを $x_1$ だけ伸ばしたとき,弾性力がした仕事を求めよ。
さて,この仕事,計算できますか…?
これまでに学習した仕事の式 $W=Fs\cos\theta$ は,$F$ が一定であり,変位も途中で向きが変わらないときしか使えません。
弾性力はばねの伸び $x$ によって力の大きさが変わってしまうので,$W=Fs\cos\theta$ の式から仕事を計算することはできないのです。
仕事の定義の拡張
そこで,力の大きさが位置によって変わっても計算できるように,仕事の定義を拡張します。
仕事の定義
物体が $x$ 軸上を $x=x_0$ から $x_1$ まで移動するとき,力 $F$ のする仕事は,$x$ 成分 $F_x$ を用いて,
$$\displaystyle W=\int_{x_0}^{x_1}F_x\dx$$で表される。
意味としては,「力のした仕事は,その力の,物体が移動している方向成分を位置 $x$ で積分すれば得られる」ということですね。
公式の式を暗記するのではなく,意味をしっかりと確認しておきましょう。
例題
$x$ 軸上を運動する物体に対し,図の $\theta$ の向きに力 $F$ が加えられている。物体が $x=x_1$ から $x=x_2$ まで移動したときに,力のした仕事を求めよ。
力の $x$ 方向成分は $F\cos\theta$ なので,
$$W=\int_{x_0}^{x_1}F\cos\theta\dx=F(x_2-x_1)\cos\theta$$
$x_2-x_1$ は物体の変位 $s$ に等しいので,$W=Fs\cos\theta$ というおなじみの形が出てきましたね。
弾性力の仕事の計算
では最初の問題に戻りましょう。拡張した仕事の定義を用いることで,弾性力の仕事も計算することができます。
例題
ばね定数が $k$ のばねがある。自然長からばねを $x_1$ だけ伸ばしたとき,弾性力がした仕事を求めよ。
ばねが自然長となる位置を原点とし,ばねが伸びる向きに $x$ 軸をとる。
位置 $x$ において,物体に作用する弾性力は $f=-kx$ とかける。
よって,求める仕事は,
$$W_k=\int_0^{x_1}(-kx)\dx=\Bigl[-\bun12kx^2\Bigr]_0^{x_1}=-\bun12kx_1!^2$$
無事に計算できました!
これでよほどへんてこりんな力でない限り,仕事を計算できるはずです。
「仕事が得意な受験生」の仲間入りですね!
面積から考える仕事
数学でよく扱う,横軸が $x$,縦軸が $y$ のグラフは,面積が $S=\int y\dx$ で計算できますよね。
では,$W=\int F\dx$ で表される仕事は,どんなグラフの面積になるでしょう?
難しく考えず,普段の数学のグラフと対応させて考えるのがポイントですね。
$x$ はどちらも共通で,$y$ と $F$ が対応していますね。
つまり,仕事は「横軸が $x$,縦軸が $F$ のグラフの面積」として考えることもできるのです。
$F-x$ グラフと仕事
横軸に位置 $x$,縦軸に力 $F$ を取ったグラフの面積 $\int F\dx$ は,仕事を表す。