空気抵抗とは
傘を忘れてしまった雨の日。雨に打たれながら歩いた経験は誰しもあるでしょう。
このとき,どのように感じますか?
どう感じる?
- 雨に濡れてしまって大変。風邪を引かないように早く歩こう。
- 雨が頭に当たって痛くて仕方がないから早く歩こう。
頭皮の感覚がよほど敏感でない限り,普通は 1 ですよね。
でもちょっと考えてみてください。
空から降ってくる雨粒って,雲の高さから自由落下してくるわけですから,地面に到達する頃には相当な速さになっているはずですよね。それでも,傘に穴が空いたり頭に怪我をしたりすることはありません。
これは,雨粒が空気抵抗を受けるためです。
ラケットで思いっきり打ったバドミントンのシャトルがすぐに減速してしまうのも,机から落ちるプリントが地面に向かってひらひらと落ちていくのも空気抵抗の影響です。
空気抵抗の数式的な扱い
物体に働く空気抵抗の大きさは,物体の速さ $v$ に比例することが知られています。比例定数を $k$ とすれば,空気抵抗の大きさ $f$ は,$f=kv$ の形で表されます。
これを踏まえると,重力場で自由落下する物体の力の作用図は次図の通りとなります。
鉛直下向きの運動方程式は,
$$ma=mg-kv$$とかくことができますね。
物体の速さ$v$ によって加速度 $a$ が異なるため,等加速度運動ではありません。よって,$v-t$ グラフは直線にはなりません。
落下開始直後と,十分に時間が経過した後の状態から,$v-t$ グラフの概形を考えてみましょう。
落下開始直後
落下し始めた直後($t=0$)ですので,速度は直前と同じ $0$ のままです。
よって物体は空気抵抗を受けず,運動方程式は $ma=mg$ とかけるため,$a=g$ であることがわかります。
物体の加速度は $v-t$ グラフの傾きを表しているので,$t=0$ における $v-t$ グラフの傾きは $g$ であることがわかります。
十分に時間が経過した後
物体の速度が大きくなるとそれに応じて空気抵抗も大きくなり,やがて重力とつり合います。
力がつり合うため,物体の加速度は $0$ となります。すなわち,$v-t$ グラフの傾きも $0$ になります。
このときの速度の値 $v_f$ は,力のつり合い $mg=kv_f$ から,$v_f=\Bun{mg}{k}$ であることがわかります。
この速度 $v_f$ のことを終端速度と呼びます。
以上の情報をもとに,$v-t$ グラフの概形をかくと次の通りになります。
$t=0$ における傾きが $g$ であることと,終端速度が $v_f=\Bun{mg}{k}$ となることを理解しておきましょう。
空気抵抗がある場合の落下運動
空気抵抗の大きさは物体の速さに比例する。
時刻 $t=0$ に物体から手を離して落下運動させたときの速度 $v$ を表すグラフは右図の通りとなる。