原子核反応
異なる核に変化
原子核同士が衝突したり,原子核に $\alpha$ 粒子や陽子が衝突したりすると,はじめと異なる核に変化することがあります。
この反応を 原子核反応 と呼びます。世の中で最初に発見された原子核反応は,次のようなものでした。
$$\ce{^{14}_7N + ^4_2He \cto ^{17}_8O + ^1_1H}$$
反応式からもわかる通り,質量数と陽子数の和が保存されていますね。
簡単にいえば「反応の前後で,左上の数字の和と右下の数字の和がそれぞれ等しくなる!」ということです。
上の反応式では,
$$\begin{aligned}\stext{質量数の和:} &\quad 14+4=17+1 \\\stext{陽子数の和:} &\quad 7+2=8+1\end{aligned}$$
がそれぞれ成立していますね。
色々保存される
原子核反応ではこれらに加えて,運動量の和 と エネルギーの和 が保存されます。
エネルギー保存は,静止エネルギーも含めたエネルギーですので注意してください…!
原子核反応
反応の前後で,「質量数の和」「陽子数の和」「運動量の和」「エネルギーの和」が保存される。
核分裂
ウランを例に
質量数が大きく,核分裂を起こしやすい原子として,$\ce{^{235}_{92}U}$(ウラン)が知られています。
このウランに中性子 $\ce{^1_0n}$ が衝突すると,ウランは核分裂を起こします。この際の反応は次の通りです。
$$\ce{^{235}_{92}U + ^1_0n \cto ^{95}_{39}Y + ^{139}_{53}I + 2 ^1_0n}$$
反応が連鎖する仕組み
生成される $\ce{^{95}_{39}Y}$(イットリウム)や $\ce{^{139}_{53}I}$(ヨウ素)は重要ではありません。
注目すべきポイントは,反応によって再び中性子 $\ce{^1_0n}$ が生成されていることです。
ウランがたくさんある状況では,この中性子が再び別のウランにぶつかることでそのウランが核分裂し,そこでまた中性子が生成されて他のウランにぶつかり…という反応の連鎖が起こります。
原子力発電
この連鎖反応によって得られるエネルギーを利用するのが 原子力発電 です。
よく「原子力発電は核融合を利用している」という誤選択肢がセンター試験表記で出題されますが,仕組みがわかっていればすぐに間違いだと気付けますね…!

原子力発電で利用しているのは「核分裂」!!
核融合
核融合は太陽にて!
太陽の内部では,水素原子核が核融合し,1つのヘリウムが生成されるという核融合反応が起こっています。
この際の反応式は,
$$\ce{4 ^1_1H}+2\ce{e}\cto \ce{^4_2He}+2\nu_e$$
として知られています。

$\nu_e$ は「電子ニュートリノ」と呼ばれる素粒子ですが,ここではあまり気にしなくて ok です!
この核融合反応によって得られるエネルギーで太陽は輝き続けているわけですね。
例題
2つの重水素($\ce{^2_1H}$)が起こす原子核反応として,
$$\ce{^2_1H}+\ce{^2_1H}\cto\ce{X}+\ce{n}$$
が知られている。$\ce{^2_1H}$,$\ce{X}$,$\ce{n}$ の質量をそれぞれ $2.0136\punit{u}$,$3.0149\punit{u}$,$1.0087\punit{u}$ として,以下の設問に有効数字2桁で答えよ。
生成される原子核 $\ce{X}$ の質量数と原子番号をそれぞれ答えよ。
この原子核反応によって生成されるエネルギーを求めよ。ただし,$1\punit{u}$ の質量はエネルギーに換算すると $9.31\times10^2\punit{MeV}$ に相当することを利用せよ。
重水素は,互いに等しい運動エネルギー $3.25\times10^{-1}\punit{MeV}$ を持って正面衝突したものとする。反応後,原子核 $\ce{X}$ と中性子が持つ運動エネルギーをそれぞれ求めよ。
生成される中性子は質量数が $1$,陽子数は $0$ と考えることができる。
反応の前後で質量数の和と陽子数の和が保存されることから,原子核 $\ce{X}$ の質量数は $3$,陽子数は $2$ であることがわかる。
反応によって失われた質量は,
$$\varDelta m=2\cdot 2.0136-(3.0149+1.0087)=3.6\times10^{-3}\punit{u}$$
である。よって,求めるエネルギーは,
$$3.6\times10^{-3}\times9.31\times10^2\fallingdotseq 3.35\fallingdotseq 3.4\punit{MeV}$$
反応前,重水素は等しい運動エネルギーを持って衝突するため,速さおよび運動量は等しい。
その大きさを $p_0$ とする。原子核 $\ce{X}$ と中性子の質量を $m_1,\,m_2$ とし,反応後の速さをそれぞれ $v_1,\,v_2$ とする。
反応の様子は次図の通り。
運動量保存則より,
$$0=-m_1v_1+m_2v_2$$
が,エネルギー保存則より,
$$2\times3.25\times10^{-1}+3.35=\mskip 4mu\bun12m_1v_1\!^2+\mskip 4mu\bun12m_2v_2\!^2$$
がそれぞれ成立する。
ここで,$m_1:m_2\fallingdotseq 3:1$ なので,運動量保存則から $v_1:v_2=1:3$ であることがわかる。よって,
$$4.00=\mskip 4mu\bun12m_1v_1\!^2+\mskip 4mu\bun12m_2v_2\!^2,\quad\mskip 6mu\bun12m_1v_1\!^2:\bun12m_2v_2\!^2=1:3$$
がそれぞれ成立することがわかる。したがって,
$$\bun12m_1v_1^2=1.0,\quad\mskip 6mu\bun12m_2v_2^2=3.0$$