ホイヘンスの原理
波の進み方
これまで,水面波も光波も「まっすぐ直進するもの」として考えてきました。

しかし現実世界では,波が直進以外の振る舞いをすることもあります。
たとえば,海の波は防波堤のすき間を通過した後,防波堤の裏側にまで回り込んで広がることが知られています。
ホイヘンスの原理
このような「波の進み方」は,ホイヘンスの原理によって説明されます。
ホイヘンスの原理は,以下の手順で考えます。
ホイヘンスの原理
① その瞬間の波面の各点から,波の進行方向に無数の素元波が出る。
② 素元波の包絡面が次の瞬間の波面になる。
この方法によって,どのように波面が形成されて進んでいくかが決まるわけです。
言葉でいわれてもわかりづらいと思いますので,球面波を例に考えてみましょう。

それぞれの状況を図と対応させながら確認してください。
球面波の例
ある瞬間の波面を考える。
点 $\rmO$ から発せられ,球面状に広がる球面波の一部を考えます。ある瞬間における波形を確認しましょう。
波面上の点波源から発せられる素元波を考える。
01 で考えたの波面上に無数の点波源が存在すると考え,そこから球面波が送り出されているものとしましょう。この球面波のことを素元波と呼びます。
素元波の包絡面を,次の瞬間の波面とする。
02 で考えた素元波に共通して接する面(包絡面)が次の瞬間の波面になります。
感覚的に明らかですが,次の瞬間の波面も $\rmO$ を中心とする円となることが確認できますね。「平面波は直進する」という事実もこのホイヘンスの原理から確認することができます。
「そんなの明らかなんだし,わざわざホイヘンスの原理で確認しなくても!」と思うかもしれませんが,ホイヘンスの原理から考えないとわからないこともあるのです!後に学習する「回折」がそのよい例です。
回折
防波堤の例
海の防波堤を想像してみてください。すき間が空いていて,そのすき間から波が防波堤の内側に入ってきますが,どのように広がると思いますか…?
ホイヘンスの原理から

この問いについて,ホイヘンスの原理を用いて考えてみましょう。
防波堤を通り過ぎた後の波をまずは考えます。その後の波の波面を考えていくためには,素元波を考えるのでしたね。
ここで注目すべきは「平面波の端の部分」です。図から,端の部分からも生成される素元波によって,防波堤の裏側に波面が回り込んでいくことがわかりますね。
このように,波が障害物の後ろに回り込む現象を回折といいます。
壁があっても奥から音が聞こえてくるのは(音波が伝わってくるのは),この回折によります。

屈折やら全反射やら回折やら,言葉が増えてきました。試験でこれらの用語を問われることがあるので,しっかり整理してください。
回折の起こりやすさ
どのくらい回り込むか
障害物の幅の広さによって,回折の起こりやすさが変わることが知られています。

物理が得意な人でも意外と抜けがちな部分なのですが,こちらもホイヘンスの原理と結びつけておくと忘れにくいのでオススメです。
波の波長に対してすき間が広いと,すき間を通過した波面上に点波源が沢山並ぶことになるため,波はほぼ直進します。
一方,すき間が狭いと波面上に並ぶ点波源も少なくなります。
その結果,点波源を中心とする同心円状に波が進んでいくため,よりすき間の裏側に回り込むことができます。
結論
まとめると,波長に対してすき間の幅が広すぎると回折が起こりにくいということです!「すき間の幅に対して,波長が小さすぎると回折が起こりにくい」と表現することもできますね。
ホイヘンスの原理と結びつけておけばその場で考えられると思いますが,知識として覚えてしまいましょう。
回折
波が障害物の背後に回り込む現象を回折と呼ぶ。
すき間の裏に波が回り込む回折を考える際,波長に対してすき間の幅が広すぎると回折が起こりにくい。