日常生活でも身近なドップラー効果
ドップラー効果とは
「ドップラー効果」といわれると,「聞いたことある!」という人が多いのではないでしょうか。
救急車のサイレンの音に関するドップラー効果が有名ですが,「どうして音の高さが変わるのか?」と聞かれてもきちんと説明するは難しいですよね。

そんなドップラー効果について解説していきます!
身近でドップラー効果が起こったときに,その仕組みをすらすら説明できるようになるはずです!
ドップラー効果が起こる理由
振動数の確認
物理基礎でも学習しましたが,音の高さは振動数によって決まっています。
よって,観測者が観測する音の高さが変化する現象であるドップラー効果は,「観測者が観測する音の振動数が変化する現象」と考えることができますね。
音を出す「音源」と,音を観測する「観測者」に注目して,観測者が観測する音の振動数について考えていきます。
具体的な例
まず,最も身近な救急車のサイレンの音に関するドップラー効果について考えてみましょう。
救急車が家の前を通り過ぎる前後で,サイレンの音の高さが変化しますよね。これがまさにドップラー効果なのですが,救急車は音を出している「音源」と考えられますので,「音源が動くことによって,観測者が観測する音の振動数が変化する」ことがわかります。
続いて,観測者が動く場合を考えましょう。自分自身が電車に乗っていて,踏切を通過するとき,踏切の「カーンカーン」という音の高さが変わりますね(え,そうだっけ?という人はぜひ注意して聞いてみてください!)。
この場合は,「音源」である踏切は静止していて,「観測者」である自分が動いています。つまり,「観測者が動くことによって,自身が観測する音の振動数が変化する」ことがわかります。
つまり,音源が動くときも,観測者が動くときも,観測者が観測する音の振動数が変化し,ドップラー効果が起こるのです!さて,この仕組みについて図を使いながら確認していきましょう!
音源も観測者も静止している場合
基本のパターン
まずは,観測者と音源のいずれも静止している状況について考えてみましょう。音源が発する音の振動数を $f_0$,音が空気中を伝わる速さを $c$ とします。
音源が音を出し始めた時刻を $t=0$,観測者に最初に音が届いた時刻を $t$ とします。音源の振動数は $f_0$ ですから,単位時間あたりに発する音波の数は $f_0$ 個ですね。
音を出し始めてから観測者に最初の音が届くまでの時間 $t$ の間に,音源は $f_0 t$ 個の波を出しているはずです。
時刻 $t=0$ において音源が最初に出した音が,時刻 $t$ に観測者に届くわけですが,音源は $f_0 t$ 個の波をすでに発していますので,音源と観測者の間には $f_0 t$ 個の波が存在することになります。
また,時刻 $t=0$ に発せられた音が,時間 $t$ だけかけて観測者に届いたことから,音源と観測者の間の距離が $ct$ であることがわかりますね。
この $ct$ の距離の間に $f_0 t$ 個の波が存在しているので,波1つあたりの幅である波長 $\lambda_0$ は,$\lambda_0=\mskip 4mu\bun{ct}{f_0 t}\mskip 5mu=\mskip 4mu\bun{c}{f_0}\mskip 5mu$ であることがわかります。
音源が動くことによる波長の変化
現象の設定
それでは,音源が観測者に向かって速さ $v$ で近づいている状況を考えてみましょう。
時刻 $t=0$ における音源と観測者の位置は先ほどと同様であるものとします。音源は時刻 $t=0$ に音を出し始め,同時に観測者に向かって動き始めます。
音波の観測

さて,観測者に最初に音が届く時刻はいつになるでしょうか?
ポイントは「一度音源から発せられた音は,音源の動きに関係なく観測者に伝わる」ことですね。
最初に観測者に届く音は,時刻 $t=0$ にスタート地点で発せられた音ですから,音源が動いていてもいなくても観測者に届く時刻は $t$ です。

では,この時刻 $t$ において,音源の位置はどこになるでしょうか。
時間 $t$ の間に $vt$ だけ観測者に近づいているはずですね。
ということは,時刻 $t$ における「音源と観測者の距離」は,$ct-vt$ であることがわかります。
時間 $t$ の間に音源が発する音の個数はやはり $f_0 t$ 個ですから,この $ct-vt$ の距離の間に $f_0 t$ 個の波がつまっている状態になります。
これより波長 $\lambda_1$ は,
$$\lambda_1=\mskip 4mu\bun{ct-vt}{f_0 t}\mskip 5mu=\mskip 4mu\bun{c-v}{f_0}\mskip 5mu (<\lambda_0)$$であることがわかります。
現象のまとめ
まとめると,「音源が出している波の個数は同じだけど,音源が観測者に近づいたことで,波が存在する範囲が狭くなった!結果として,波1つあたりの幅である波長もきゅっと縮まった!」ということですね。
音源が観測者から遠ざかるときは,$v\to-v$ とおき換えればよいので,
$$\lambda_2=\mskip 4mu\bun{c+v}{f_0}\mskip 5mu\quad (>\lambda_0)$$となります。
音源が観測者に近づくとき,観測者が観測する音の振動数は,
$$f_1=\mskip 4mu\bun{c}{\lambda_1}\mskip 5mu=\mskip 4mu\bun{c}{c-v}\mskip 5muf_0 \quad(>f_0)$$として求まりますので,音源が静止している場合に比べて高い音が聞こえることがわかりますね。
同様に,音源が観測者から遠ざかるときは,
$$f_2=\mskip 4mu\bun{c}{\lambda_2}\mskip 5mu=\mskip 4mu\bun{c}{c+v}\mskip 5muf_0\quad (<f_0)$$であることがわかりますので,より低い音が観測されることがわかります。
これで救急車のドップラー効果について説明することができますね!
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音波の広がり
音波の様子
これまでは「音源が観測者に近づく場合」と「音源が観測者から遠ざかる場合」の2通りについて,音源と観測者を結ぶ直線上で考えました。
しかし実際には,音波は音源を中心として円形に広がるはずですので,平面上で音波の広がりについて考えてみましょう。「一度出された音は,その後の音源の動きに関係なく,出された場所を中心として円形に広がる」ことがポイントです。
具体的な例
まず,音源が動き始める時刻 $t=0$ において発せられた音波について考えます。この音波(① とします)は,音源のスタート地点($\rmA$ 点)を中心として円形に広がっていきます。
続いて,少し時間が経った状況を考えましょう。この瞬間に出された音波(② とします)は,このときの音波の位置($\rmB$ 点)を中心に,広がり始めます。このときすでに,① の音波はある程度の広がりを持っています。
さらに少し時間が経った状況ではどうでしょうか。やはり,この瞬間に出された音波(③ とします)は,この瞬間の音源の位置($\rmC$ 点)を中心に広がっていきます。その少し後に発せられた音波(④ とします)についても同様で,そのときの音源の位置($\rmD$ 点)を中心に広がります。
以上をまとめると,図の通りです。音を出している音源を真上から見ている状況です。
最初に出された音ほど,出されてから時間が経過しているため,広がりを持っていることに注意してください。
波長の変化
図から,音源が近づいてくる側の音波の波長 $\lambda_1$ が小さく,音源が遠ざかる側の音波の波長 $\lambda_2$ が大きくなっていることがわかりますね。
観測者が受け取る音の振動数は,「単位時間あたりに届く波の数」ですが,波同士の間隔(波長)が狭いほどたくさんの波が届くわけですから,音源が近づく側の観測者がより高い音を聞くことも理解できます。
音源の動きによる波長の変化
音源が動くことによって,観測者に届く音波の波長が変化する。
音源から出る音の振動数を $f_0$,音速を $c$,音源の速さを $v$ としたとき,音源が近づいてくる側,遠ざかっていく側の観測者に届く音波の波長はそれぞれ,
$$\lambda_1=\mskip 4mu\bun{c-v}{f_0}\mskip 5mu,\ \lambda_2=\mskip 4mu\bun{c+v}{f_0}\mskip 5mu$$となる。
例題
例題
振動数が $f$ の音を出す音源がある。音源と観測者が以下のように動くとき,観測者に届く音波の波長 $\lambda$ を求めよ。ただし,音速を $c$ とする。
考え方

観測者に届く音の波長は音源の動きで決まります!
観測者の動きは波長に影響しませんので注意して下さい。
解答
音源が観測者から遠ざかっているので,$\lambda=\mskip 4mu\bun{c+v}{f}\mskip 5mu$
音源が観測者に近づいているので,$\lambda=\mskip 4mu\bun{c-v}{f}\mskip 5mu$