波動 物理

弦を伝わる波の速さ

羽白 いむ

東京大学医学部医学科卒 現役医師
東大指導専門塾鉄緑会 物理・数学科元講師
物理基礎のトリセツ著者
数学のトリセツ共著者

速さの公式

速さを決める要素

物理基礎で弦振動について学習した際には,「弦を伝わる波の速さは,弦の材質と弦を張る張力によって決まる」とのみ述べましたが,具体的にどのような形で表されるのかを確認していきます。

線密度と張力

まず,「弦の材質」についてです。弦の単位長さあたりの質量は線密度と呼ばれます。$1\m$ あたりの質量 $\punit{kg/m}$ ですから,単位は $\punit{kg/m}$ ですね。

$\rho$ の文字を使って表されることが多いです。

生徒

次に,「弦を張る張力」について。これはそのままですね。弦の張力の大きさ $T$ です。

速さの公式

この 2 つの $\rho$ と $T$ を用いて,弦を伝わる波の速さは

$$v=\sqrt{\frac{T}{\rho}}$$で表されます。

羽白

証明については深く考えずに,確実に覚えてください!分子と分母をひっくり返したりしないように!

$\rho$ と $T$ のどちらが分子でどちらが分母かわからなくなった場合は,単位から考えることができる。運動方程式 $ma=f$ を考えれば,力の単位 $\punit{N}$ は $\punit{kg}\times\punit{m/s^2}=\punit{kg\cdot m/s^2}$ と表せることがわかる。ここで,$\sqrt{\frac{\punit{kg/m}}{\punit{kg\cdot m/s^2}}}$ の単位を考えると,

$$\sqrt{\frac{\punit{kg/m}}{\punit{kg\cdot m/s^2}}}=\sqrt{\punit{s^2/m^2}}=\punit{s/m}$$となってしまう。

速度の単位 $\punit{m/s}$ にするためには,$\rho$ と $T$ の分子・分母を入れ替えればよいことがわかる。

弦を伝わる波の速さ

弦の線密度を $\rho$,張力の大きさを $T$ としたとき,弦を伝わる波の速さ $v$ は,

$$v=\sqrt{\frac{T}{\rho}}$$で与えられる。

問題へのアプローチ

例題

図のように音叉と糸をつなぎ,糸の他端に質量 $M$ のおもりをぶらさげた。この状態で音叉を振動させると,弦に基本振動が生じた。このときの音叉の振動数を $f$,弦の線密度を $\rho$ として以下の問いに答えよ。

物理695

振動数が $\fp $ の音叉につなぎ替えると,弦に $n$ 個の腹が生じた。$\fp $ を求めよ。

おもりの質量を $M\prime $ に変えると,弦に $n$ 個の腹が生じた。$M\prime $ を求めよ。

弦の線密度を $\rho\prime $ に変えると,弦に $n$ 個の腹が生じた。$\rho\prime $ を求めよ。

解き方

問題文の状態で,$v=f\lambda$ の式について考えてみましょう。

おもりに関する力のつり合いから,弦の張力の大きさは $Mg$ であることがわかりますので,

$$v=\sqrt{\bun{Mg}{\rho}\mskip 5mu}$$となります。

弦には基本振動が生じていることから,弦の長さを $L$ としたとき,波長は $\lambda=2L$ として求まります。

振動数は音叉の振動数に等しく $f$ …ではないので気をつけてください!

生徒

図を見ると,音叉は縦つなぎになっているため,弦の振動数は $\bun{f}{2}\mskip 5mu$ です。

よって,

$$\sqrt{\bun{Mg}{\rho}\mskip 5mu}=\mskip 4mu\bun{f}{2}\mskip 5mu\cdot2L$$が成立することがわかります。

この式を元に,各値を代入していって考えてもよいのですが,この手の問題を解く際のポイントは,「$v=f\lambda$ の式の両辺の変化に注目する」です。この考え方が身に付くと,今回の例題のような問題を解くスピードが一気に上がりますので,しっかり習得しましょう!

(1) の解き方

もともと基本振動だった弦の振動が,$n$ 倍振動に変わります。

これはつまり,1つしか収まらなかった「唇の形」が,$n$ 個収まるようになったということですので,波長が $\Bun{1}{n}\mskip 5mu$ 倍になったことがわかります。

羽白

これは (2),(3) についても同様です。

さて,このことを踏まえて $v=f\lambda$ の式の両辺の変化を考えてみましょう。

具体的な値で考えるのではなく,「何倍されたか」という変化のみに注目することがポイントです。

物理696

$M$ も $\rho$ も変化していないので,左辺の $v$ は変化しないはずですね。ということは,右辺の値も変化しないはずです。

$\lambda$ が $\Bun{1}{n}\mskip 5mu$ 倍になっているので,右辺全体の値が変化しないためには,$f$ が $n$ 倍されている必要があります。このことから,$\fp =nf$ であることがわかります。

(2)の解き方

弦に $n$ 倍振動が生じていることから,波長はやはり $\Bun{1}{n}\mskip 5mu$ 倍です。一方で,今回は音叉を変えていないので,振動数は変化していません。

では,$v=f\lambda$ の両辺の変化はどうなるでしょうか。

物理697

$\lambda$ が $\Bun{1}{n}\mskip 5mu$ 倍で,$f$ が不変なので,右辺は全体として $\Bun{1}{n}\mskip 5mu$ 倍になります。ということは,左辺の $v=\sqrt{\bun{Mg}{\rho}\mskip 5mu}$ も $\Bun{1}{n}\mskip 5mu$ 倍にならないといけません。

今回変化させているのは,おもりの質量 $M$ ですので,$\sqrt{\bun{Mg}{\rho}\mskip 5mu}$ が $\Bun{1}{n}\mskip 5mu$ 倍になったことから,$M\prime =\mskip 4mu\bun{1}{n^2}\mskip 5muM$ であることがわかりますね。

(3)の解き方

途中まで (2) と同様です。

物理697

$n$ 倍振動になったことによって,左辺の $v=\sqrt{\bun{Mg}{\rho}\mskip 5mu}$ も $\Bun{1}{n}\mskip 5mu$ 倍にならないといけません。

(3) で変化させているのは,弦の線密度 $\rho$ ですので,$\sqrt{\bun{Mg}{\rho}\mskip 5mu}$ が $\Bun{1}{n}\mskip 5mu$ 倍になったことから,$\rho\prime =n^2\rho$ であることが直ちにわかります。

総括

羽白

どうでしょう!慣れてくると,ほぼ一瞬で答えが出せるようになります。

弦振動で「何かを変化させる」タイプの問題が出たら,具体的な値を代入して考えるのではなく,「$v=f\lambda$ の式の両辺の変化に注目する」方法で考えましょう!

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