力学 物理

見かけの重力・遠心力

羽白 いむ

東京大学医学部医学科卒 現役医師
東大指導専門塾鉄緑会 物理・数学科元講師
物理基礎のトリセツ著者
数学のトリセツ共著者

みかけの重力

みかけの重力とは

「慣性力」のページの例で見た通り,$a$ で加速する電車の中の視点では,加速度と反対向きに $ma$ の慣性力が作用します。

この慣性力は,自分自身も含めてあらゆる物体に作用することに気をつけてください。

羽白

電車が発進するとき,後ろ向きに倒れそうになりますよね…?

まわりの人もみんな倒れそうになっているはずです。

生徒

つまり,電車の中の視点では,あらゆる物体に常に「進行方向と逆向きの慣性力 $ma$」と「鉛直方向下向きの重力 $mg$」が作用していることになります。

この2つの力をまとめて,電車内での視点での"重力"として考えてしまうことが可能です。

この「慣性力と重力をまとめた,加速する視点での"重力"」を,みかけの重力と呼びます。

このみかけの重力 $mg\prime $ の大きさは,三平方の定理から,

$$g\prime =\sqrt{a^2+g^2}$$であることがわかります。

電車の中の世界では,はじめから「$mg\prime $ の重力が働く」ものとして考えることで,問題が解きやすくなることがあります。

遠心力

円運動における慣性力

ここまでは,直線上を加速している物体について慣性力を考えましたが,円運動の場合でも考えてみましょう。

円運動の加速度が,円の中心向きであったこと,$a=r\omega^2=\mskip 4mu\bun{v^2}{r}\mskip 5mu$ で表されることを思い出してください。

向心力 $f$ を受けて円運動している物体があったとしましょう。円運動を外から見た場合,物体と一緒に円運動している視点から目の前の物体を見た場合とで力の作用図を比較してみます。

外からの視点

外からの視点では,「物体が向心力 $f$ を受けて円運動している」と考えられるため,向心方向の運動方程式として,

$$m\mskip 6mu\bun{v^2}{r}\mskip 5mu=f\quad\stext{\hspace{-.5em}(または $mr\omega^2=f$)}$$と立式できます。

一緒に円運動する視点

一方で,物体と一緒に円運動している視点においては,物体は目の前で静止しているはずですので,力はつり合っているはずです。

この視点において,「円の中心から外向きに,$\fp =mr\omega^2=m\mskip 6mu\bun{v^2}{r}\mskip 5mu$ の大きさの慣性力が働いている」と考えれば,うまくこの状況を説明することができますね。

遠心力

この「円運動する視点における慣性力」のことを,遠心力と呼びます。

車で急カーブを曲がるときに,外側に向かって押し付けられるような力を受けたことがあるかと思いますが,その力の正体がこの遠心力です。

遠心力についても向きを含めると,$f=-m\vec{a}$ とかくことができます。

羽白

みかけの力であるために反作用が存在しないことも確認しておきましょう。

遠心力

加速度 $a=r\omega^2=\mskip 4mu\bun{v^2}{r}\mskip 5mu$ で円運動する物体と共に運動する視点において,物体には,

$$f=mr\omega^2=m\mskip 6mu\bun{v^2}{r}\mskip 5mu$$の大きさの遠心力が円の中心から外向きに作用する。

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