力学 物理

単振動の概要

羽白 いむ

東京大学医学部医学科卒 現役医師
東大指導専門塾鉄緑会 物理・数学科元講師
物理基礎のトリセツ著者
数学のトリセツ共著者

心構え

羽白

力学の山場といわれることが多い「単振動」について勉強していきましょう。

初学の段階では難しく感じる人が多いはずです。一方で,一度理解してしまえば難しい問題もスムーズに解けるようになることが多いのが特徴です。

物理が苦手な人に「力学で一番むずかしい単元は?」と聞くと,「単振動」と答える人が多いです。

しかし不思議なことに,物理が得意な人に「力学で一番簡単な単元は?」と聞くと,「単振動」と答える人が多いのです。

問題の解き方が理解できてしまえば,同じ流れでさくさく解き進めていけるはず!「単振動って簡単!」と思えれば,周囲に大きく差を付けられますので頑張りましょう!

単振動とは

結論!

先に結論をいいます!単振動とは,等速円運動の「影」です!

等速円運動している物体に光を当てると,壁に物体の影が現れ,往復運動を行います。この往復運動が単振動です。

このことを踏まえて,単振動する物体の位置 $x$ を時刻 $t$ の関数として表してみましょう。

半径が $A$,角速度が $\omega$ であるような等速円運動を行う物体の影について考えます。

図のように,等速円運動している物体の位置ベクトルの影を考えることで,単振動する物体の位置がわかりますね。

時刻 $t$ において,$x=A\sin\omega t$ となります。

「影を考える」というのは,位置ベクトルの正射影を考えている,ということ。

横軸に時刻 $t$,縦軸に位置 $x$ を取ったグラフは,$x=A\sin\omega t$ をそのままグラフにしたものになるので,上図のようになりますね。

$y=\sin x$ と同じ形をしていますので,このグラフの形を「$+\sin$型」と呼ぶことにします。

時刻 $t=0$ では $x=0$ ですが,時刻が進むことで「$x=0$」→「$x=A$」→「$x=0$」→「$x=-A$」→「$x=0$」といった往復運動を行うことが確認できます。

$x=0$ の位置は振動中心,$x=\pm A$ の位置は振動の端点と呼ばれます。また,振動中心から端点までの距離(つまり $A$)を振幅と呼びます。

スタートの位置から考えるパターン

一方で,$x=A$ から単振動がスタートする状況も考えられます。この場合,元の円運動も上の位置からスタートします。

位置ベクトルの影は長さが $A\cos\omega t$ となりますので,単振動する物体の位置 $x$ は,$x=A\cos\omega t$ ですね。

グラフの形は $y=\cos x$ と同じになりますので,これを「$+\cos$型」と呼ぶことにします。

ここまでくると予想が付きませんか…?「$-\sin$型」と「$-\cos$型」もありそうですよね。

「$-\sin$型」は,$x=0$ の位置から下に向かって円運動を始める場合,「$-\cos$型」は,下の位置から円運動がスタートする場合に対応します。

単振動として考えたときの位置はそれぞれ,$x=-A\sin\omega t$,$x=-A\cos\omega t$ ですので,グラフの概形はそれぞれ次の通りです。

羽白

基本的にはこの4パターンが考えられるようになればokです!

一般的な単振動

上の4つのどれでもない中途半端な場所(三角関数の中身,つまり位相が $\varphi$ の位置)から単振動がスタートする場合は,$x=A\sin(\omega t+\varphi)$ とかくことができます。

$+\cos$型の単振動は $\varphi=\mskip 4mu\bun{\pi}{2}\mskip 5mu$,$-\sin$型の単振動は $\varphi=\pi$,$-\cos$型の単振動は $\varphi=\mskip 4mu\bun{3}{2}\mskip 5mu\pi$ と考えられる。

また,ここまでは $x=0$ が振動の中心であることを前提としましたが,そうではない場合もあります。

$x=x_0$ が振動の中心となる場合,物体の位置は $x=x_0+A\sin(\omega t+\varphi)$ とかくことができます。この形が最も一般的な形になります。

単振動

等速円運動の影が行う運動を単振動と呼ぶ。振動中心が $x_0$,振幅が $A$,角振動数が $\omega$,初期位相($t=0$ での位相)が $\varphi$ である単振動の,時刻 $t$ における位置 $x$ は,

$$x=x_0+A\sin(\omega t+\varphi)$$の形で表される。問題を解く際には,4つの「型」を元に考える。

等速円運動との比較

同じ点と異なる点を明確に

単振動は等速円運動の影ですので,1往復するのにかかる時間は円運動の周期と同じはずです。よって,単振動の周期 $T$ は,$T=\mskip 4mu\bun{2\pi}{\omega}\mskip 5mu$ で計算できます。

ところで,円運動の角速度 $\omega$ を利用して考えてきましたが,単振動ではこの $\omega$ を角振動数と呼びます。

表しているものは円運動の角速度と同じで,「単位時間あたりに位相がどれだけ進むか」です。単位も角速度と同じで $\punit{rad/s}$ です。

円運動では「単位時間に何周するか」という回転数を考えましたね。単振動では,「単位時間に何往復するか」という値に対応します。

この値を振動数と呼びます。単位は$\punit{Hz}$です。波動と同じですね。周期 $T$ と振動数 $f$ の間には,$f=\mskip 4mu\bun{1}{T}\mskip 5mu$ の関係が成り立ちます。

単振動の周期と振動数

単振動の周期 $T$ は,角振動数 $\omega$ を用いて,$T=\mskip 4mu\bun{2\pi}{\omega}\mskip 5mu$ で表される。

振動数 $f$ との間には,$f=\mskip 4mu\bun{1}{T}\mskip 5mu$ の関係が成り立つ。

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