単振動の速度
円運動から速度を考える
等速円運動の影として単振動の位置を考えたのと同様に,速度についても円運動の影として考えることができます。
以下では簡単のため,$x=A\sin\omega t$ で表される単振動について考えていきます。
まずは円運動の復習から!
半径 $r$,角速度 $\omega$ で等速円運動する物体の速さは $r\omega$ でしたね。向きは円の接線方向です。
今回は半径が $A$ の円運動を考えるので,速さは $A\omega$ になります。この速度を図示して,光を当ててみましょう。
上図のように,「速度ベクトルの影」が出てきますね。これが単振動する物体の速度です。
図から,$v=A\omega\cos\omega t$ であることがわかりますね。
速さの最大,最小
この速度の大きさ $|v|=A\omega|\cos\omega t|$ は,$\cos\omega t=\pm1$ のときに大きさが $A\omega$ で最大となります。
$\cos\omega t=\pm1$ となるのは,$\sin\omega t=0$ の場所ですので,$x=0$ すなわち振動中心です。
一方,$\cos\omega t=0$ すなわち $\sin\omega t=\pm1$ となる端点では,速度が $0$ になりますね。折り返し地点ですのでこれは当たり前!
単振動の速さ
単振動する物体の速さは,振動中心で最大値 $A\omega$ をとる。振動の端点では $0$ となる。
円運動の加速度
円運動から加速度を考える
加速度も同様に,円運動の速度の影として考えることができます。
等速円運動の加速度は,大きさが $A\omega^2$ で,円の中心方向を向いていましたね。これを図示して光を当てます。
速度ベクトルの場合と同様に,「加速度ベクトルの影」が出てきます。
この影の長さは $A\omega^2\sin\omega t$ ですが,負の向きを向いているため,$a=-A\omega^2\sin\omega t$ となることに注意しましょう。
$x=A\sin\omega t$ ですので,これを用いて書き換えると,$a=-\omega^2x$ であることがわかります。
一般的な単振動
単振動する物体の位置が $x=x_0+A\sin(\omega t+\varphi)$ で表される,より一般的な場合ではどうでしょう?
$x-x_0=A\sin(\omega t+\varphi)$ と書き換えるとわかりやすいです。$x-x_0$ は,振動中心$x_0$ からの変位を表しています。
つまり,これまでの話の原点 $\rmO$ が振動中心 $x_0$ に変わった,と考えてしまえばokです。$\omega t$ として考えていた位相も,そっくりそのまま $\omega t+\varphi$ に置き換えて考えましょう。
結局,$x\to x-x_0$,$\omega t\to\omega t+\varphi$ と置き換えればすべて解決です。
すると,
$$\begin{aligned}v&=A\omega\cos(\omega t+\varphi)\\ a&=-A\omega^2\sin(\omega t+\varphi)=-\omega^2(x-x_0) \end{aligned}$$として,速度 $v$ と加速度 $a$ が得られます。
この $a=-\omega^2(x-x_0)$ という形が後ほど大活躍します。
単振動の位置と加速度の関係
任意の単振動において,物体の位置 $x$ と加速度 $a$ の間には,
$$a=-\omega^2(x-x_0)$$の関係が成り立つ。
微分を用いた議論
円運動を元に
そもそも「等速円運動する物体に光を当てて影を見る」というのは,「等速円運動する物体の $y$ 方向の運動だけをとり出して見ている」のと全く同じです。
等速円運動する物体の位置,速度,加速度を成分表示すると次の通りでした。
$$\begin{aligned} \vec{r}&=(r\cos\omega t,\,r\sin\omega t)\\ \vec{v}&=(-r\omega\sin\omega t,\,r\omega\cos\omega t)\\ \vec{a}&=(-r\omega^2\cos\omega t,\,-r\omega^2\sin\omega t) \end{aligned}$$
この $y$ 成分だけをとり出して,$y\to x$,$r\to A$ と書き換えることで,
$$x=A\sin\omega t,\,v=A\omega\cos\omega t,\,a=-A\omega^2\sin\omega t$$であることがすぐにわかります。
「これまでの話は一体何だったんだ!」というくらい簡単ですね…。
また,一般の単振動では,物体の位置は $x=x_0+A\sin(\omega t+\varphi)$ と表されるのでした。
$t$ で微分することで,
$$\begin{aligned} v&=\bun{\dx}{\dt}=A\omega\cos(\omega t+\varphi)\\ a&=\Bun{\dv}{\dt}=\bun{\d^2x}{\dt^2}=-A\omega^2\sin(\omega t+\varphi) \end{aligned}$$であることがすぐにわかりますね。
$x-x_0=A\sin(\omega t+\varphi)$ を代入することで,$a=-\omega^2(x-x_0)$ の関係式もすぐに導出できます。
微分を使った議論,どうですか…?シンプルで美しくないですか…?