力学

単振動における速度と加速度

羽白 いむ

東京大学医学部医学科卒 現役医師
東大指導専門塾鉄緑会 物理・数学科元講師
物理基礎のトリセツ著者
数学のトリセツ共著者

単振動の速度

円運動から速度を考える

等速円運動の影として単振動の位置を考えたのと同様に,速度についても円運動の影として考えることができます。

以下では簡単のため,$x=A\sin\omega t$ で表される単振動について考えていきます。

羽白

まずは円運動の復習から!

半径 $r$,角速度 $\omega$ で等速円運動する物体の速さは $r\omega$ でしたね。向きは円の接線方向です。

今回は半径が $A$ の円運動を考えるので,速さは $A\omega$ になります。この速度を図示して,光を当ててみましょう。

上図のように,「速度ベクトルの影」が出てきますね。これが単振動する物体の速度です。

図から,$v=A\omega\cos\omega t$ であることがわかりますね。

速さの最大,最小

この速度の大きさ $|v|=A\omega|\cos\omega t|$ は,$\cos\omega t=\pm1$ のときに大きさが $A\omega$ で最大となります。

$\cos\omega t=\pm1$ となるのは,$\sin\omega t=0$ の場所ですので,$x=0$ すなわち振動中心です。

一方,$\cos\omega t=0$ すなわち $\sin\omega t=\pm1$ となる端点では,速度が $0$ になりますね。折り返し地点ですのでこれは当たり前!

単振動の速さ

単振動する物体の速さは,振動中心で最大値 $A\omega$ をとる。振動の端点では $0$ となる。

円運動の加速度

円運動から加速度を考える

加速度も同様に,円運動の速度の影として考えることができます。

生徒

等速円運動の加速度は,大きさが $A\omega^2$ で,円の中心方向を向いていましたね。これを図示して光を当てます。

速度ベクトルの場合と同様に,「加速度ベクトルの影」が出てきます。

この影の長さは $A\omega^2\sin\omega t$ ですが,負の向きを向いているため,$a=-A\omega^2\sin\omega t$ となることに注意しましょう。

$x=A\sin\omega t$ ですので,これを用いて書き換えると,$a=-\omega^2x$ であることがわかります。

一般的な単振動

単振動する物体の位置が $x=x_0+A\sin(\omega t+\varphi)$ で表される,より一般的な場合ではどうでしょう?

$x-x_0=A\sin(\omega t+\varphi)$ と書き換えるとわかりやすいです。$x-x_0$ は,振動中心$x_0$ からの変位を表しています。

つまり,これまでの話の原点 $\rmO$ が振動中心 $x_0$ に変わった,と考えてしまえばokです。$\omega t$ として考えていた位相も,そっくりそのまま $\omega t+\varphi$ に置き換えて考えましょう。

結局,$x\to x-x_0$,$\omega t\to\omega t+\varphi$ と置き換えればすべて解決です。

すると,

$$\begin{aligned}v&=A\omega\cos(\omega t+\varphi)\\ a&=-A\omega^2\sin(\omega t+\varphi)=-\omega^2(x-x_0) \end{aligned}$$として,速度 $v$ と加速度 $a$ が得られます。

この $a=-\omega^2(x-x_0)$ という形が後ほど大活躍します。

単振動の位置と加速度の関係

任意の単振動において,物体の位置 $x$ と加速度 $a$ の間には,

$$a=-\omega^2(x-x_0)$$の関係が成り立つ。

微分を用いた議論

円運動を元に

そもそも「等速円運動する物体に光を当てて影を見る」というのは,「等速円運動する物体の $y$ 方向の運動だけをとり出して見ている」のと全く同じです。

等速円運動する物体の位置,速度,加速度を成分表示すると次の通りでした。

$$\begin{aligned} \vec{r}&=(r\cos\omega t,\,r\sin\omega t)\\ \vec{v}&=(-r\omega\sin\omega t,\,r\omega\cos\omega t)\\ \vec{a}&=(-r\omega^2\cos\omega t,\,-r\omega^2\sin\omega t) \end{aligned}$$

この $y$ 成分だけをとり出して,$y\to x$,$r\to A$ と書き換えることで,

$$x=A\sin\omega t,\,v=A\omega\cos\omega t,\,a=-A\omega^2\sin\omega t$$であることがすぐにわかります。

羽白

「これまでの話は一体何だったんだ!」というくらい簡単ですね…。

また,一般の単振動では,物体の位置は $x=x_0+A\sin(\omega t+\varphi)$ と表されるのでした。

$t$ で微分することで,

$$\begin{aligned} v&=\mskip 4mu\bun{\dx}{\dt}\mskip 5mu=A\omega\cos(\omega t+\varphi)\\ a&=\mskip 4mu\bun{\dv}{\dt}\mskip 5mu=\mskip 4mu\bun{\d^2x}{\dt^2}\mskip 5mu=-A\omega^2\sin(\omega t+\varphi) \end{aligned}$$であることがすぐにわかりますね。

$x-x_0=A\sin(\omega t+\varphi)$ を代入することで,$a=-\omega^2(x-x_0)$ の関係式もすぐに導出できます。

羽白

微分を使った議論,どうですか…?シンプルで美しくないですか…?

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