非等速円運動
非等速円運動とは
ここまでは等速円運動について考えてきましたが,速さが変化する円運動もあります。
振り子運動がまさにそうですね!
左側の端点へと物体を持ち上げて,手を離した場合を考えてみましょう。
手を離した直後は速さ $0$ です。最下点(位置エネルギー最小!)になると,運動エネルギーが最大となるため速さも最大となります。
そのまま反対側の端点に達しますが,折り返し地点ですので再び速さが $0$ になります。
この往復運動を繰り返しますが,振り子運動の軌跡は円の一部ですので,やはり「円運動」になるのです。
このように,円軌道(の一部)を描くものの,速さが変化する運動を非等速円運動と呼びます。
解析手順
アプローチ
この非等速円運動についても,等速円運動と同様に「向心方向の運動方程式」を立式します。
変化する速さは「エネルギー保存則」から考えることになりますので,非等速円運動ではこの2式を連立するのが定石です。
非等速円運動へのアプローチ
以下の2式を連立して解く。
- 向心方向の運動方程式
- エネルギー保存則
とにかく非等速円運動を見たらこの2式です。
頭が半分(なんなら全部)寝ていても条件反射的にこの2式は立式できるようにしておきましょう。
例題を用いて,考え方,解き方を確認しておきましょう。
例題
水平面に滑らかに接続された,半径が $r$ の半円形をした壁がある。水平面での速さが $v_0$ である小球がこの壁を登っていく場合について,以下の問いに答えよ。ただし,重力加速度の大きさを $g$ とする。
小球が円運動を始めた直後,半円形の壁の最下点$\rmP$において受ける垂直抗力の大きさを求めよ。
最下点から測った角度が $\theta$ であるような点$\rmQ$において,小球が受ける垂直抗力の大きさを求めよ。
小球が最高点$\rmR$まで壁から離れずに運動するために必要な $v_0$ の条件を求めよ。
見るからに非等速円運動の話をしていますので,「向心方向の運動方程式とエネルギー保存則だ!」と強く意識してください。
(1)について
間違っても,鉛直方向の力のつり合いの式を立てないでください!
小球はすでに円運動をはじめていますので,向心方向の運動方程式を立式します。
求める垂直抗力の大きさを $N_0$ とすると,力の作用図は上の通りです。
向心方向の運動方程式より,
$$m\bun{v_0\!^2}{r}=N_0-mg$$と立式できます。これを整理することで,
$$N_0=m\bun{v_0\!^2}{r}+mg$$として答えが得られます。
(2)について
点$\rmQ$での小球の速さを $v$,求める垂直抗力の大きさを $N$ とします。
このとき,力の作用図は上の通りですが,この時点で力を「向心方向」と「接線方向」に分解して考えておくとわかりやすいでしょう。
向心方向の運動方程式から,
$$m\bun{v^2}{r}=N-mg\cos\theta\text{\quad……\ ①}$$と立式できます。
最下点との高さの差は,$r(1-\cos\theta)$ ですので,エネルギー保存則より,
$$\bun12mv_0\!^2=\bun12mv^2+mgr(1-\cos\theta)\text{\quad……\ ②}$$が成り立ちます。
①,② を連立することで,
$$N=m\bun{v_0\!^2}{r}-mg(2-3\cos\theta)$$として答えが得られます。
答えの確認
式変形に自信が持てなければ,$\theta=0$ を代入しましょう!
$\theta=0$ で小球の位置は点$\rmP$ですので,(1) と全く同じ値になるはずです。
実際,$\theta=0$ を $N$ に代入すると確かに,
$$N=m\bun{v_0\!^2}{r}+mg=N_0$$となりますね。
この値が $N_0$ と一致しなければ,計算が間違っていたことに気付けます。
(3)について
「壁から離れない」という条件を考える問題です。
「離れる・離れないを考える問題」ですね。復習になりますが,確認しておきましょう。
離れる・離れない問題
- 2物体が離れていないと仮定して垂直抗力 $N$ を設定し,力の作用図をかく。
- 力のつり合いや運動方程式から具体的に $N$ を求める。
- 離れる瞬間に垂直抗力の大きさ $N$ が $0$ になることを利用して問題を解く。
壁から離れないものとして $\theta$ の位置で円運動を考えたのが (2) でした。
(2) で求めた $N$ が $0\leqq\theta\leqq\pi$ の範囲で $N>0$ を満たしていれば小球は壁から離れずに点$\rmQ$にたどり着けることがわかりますね。
$$N=m\bun{v_0\!^2}{r}-mg(2-3\cos\theta)$$は,$\theta$ について単調減少し,$\theta=\pi$ で最小値をとります。
よって,$N$ は点$\rmQ$で最小となり,その最小値$N_{\rmQ}$は,
$$N_{\rmQ}=m\bun{v_0\!^2}{r}-5mg$$です。
$N_{\rmQ}>0$ であれば,$0\leqq\theta\leqq\pi$ の範囲で常に $N>0$ であることがいえますので,求める条件は $N_{\rmQ}>0$ です!
これを $v_0$ について整理すると,
$$v_0>\sqrt{5gr}$$として答えが得られます。
(3)は難しいですが頻出の内容ですので,しっかりと自分の言葉で説明できるようにしておきましょう!