放射線について
追加の暗記事項はなし!
物理で学習した内容も踏まえながら,放射線について改めて考えていきます。

が,新たに暗記をしなければいけないものはありません!!
それぞれの放射線の実体(上の表の通り)がわかっていれば,どれもスムーズに理解できることばかりです。
まずは $\alpha$ 線はヘリウムの原子核,$\beta$ 線は高エネルギーの電子,$\gamma$ 線は電磁波,ということをしっかりと思い出してください!
そしてここから先は「覚えよう」とせずに「理解しよう」という気持ちで学習を進めてください!
放射壊変
3つの崩壊
「不安定な原子核は自然に分裂を起こして」放射線を放出するというお話でしたが,この「原子核が起こす分裂(放射壊変)」について詳しく見ていきましょう。
$\alpha$ 線,$\beta$ 線,$\gamma$ 線が放出される放射壊変をそれぞれ $\alpha$ 崩壊,$\beta$ 崩壊,$\gamma$ 崩壊と呼びます。
$\alpha$ 崩壊
原子核が大きくなりすぎると不安定になり,陽子2つと中性子2つが $\ce{^4_2He}$($\alpha$粒子)として放出されます。

これが $\alpha$ 線ですね。
$\alpha$ 崩壊を起こす原子の一例として,$\ce{^{234}_{92}U}$(ウラン)を考えてみましょう。
陽子と中性子が2つずつ減るので,原子番号は 90 になりますね。原子番号が 90 の元素は $\ce{Th}$(トリウム)です。
一方,質量数は 4 だけ減少するので,反応式は,
$$\ce{^{234}_{92}U} \cto \ce{^{230}_{90}Th} + \ce{^4_2He}$$
とかくことができますね。当たり前のことですが,反応の前後で質量数と陽子数の和が保存されます。
$\beta$ 崩壊
陽子の数に比べて中性子の数が大きすぎる原子核もまた不安定であり,放射壊変を起こします。
中性子が多すぎることが問題なので,中性子が電子を放出することで,陽子に変化します!

放出される高速な電子が $\beta$ 線!
陽子を $\ce{^1_1p}$,中性子を $\ce{^1_0n}$,電子を $\ce{e}$ としたとき,この反応の反応式は,
$$\ce{^1_0n} \cto \ce{^1_1p} + \ce{e}$$
とかけます。
反応の前後で質量数と陽子数の和が保存されるという原則があるので,電子の質量数を 0,陽子数を $-1$ と考えればうまく説明がつきますね。
$\ce{^0_{-1}e}$ と表記することで,
$$\ce{^1_0n} \cto \ce{^1_1p} + \ce{^0_{-1}e}$$
という反応式が完成します!
実際に反応式をかく際には,電子の質量数や原子番号は付記しないこともありますが,質量数が $0$ で陽子数が $-1$ ということを頭に入れておき,反応の前後で質量数と陽子数の和が保存されていることをしっかりと確認できるようにしてください!
では実際の反応を確認してみましょう。炭素は質量数が $12$ である $\ce{^{12}_6C}$ が最も安定しています。
この同位体である $\ce{^{14}_6C}$ は,中性子が2つ多い状態であり,$\beta$ 崩壊を起こします。
$\beta$ 崩壊を起こすと,原子核中の中性子1つが陽子に変化します。

このとき!質量数は変化しないので注意してください!質量数は陽子と中性子の数の合計ですからね。当然です。
一方,陽子の数は 1 だけ増えます。原子番号が 7 の元素は $\ce{N}$(窒素)ですので,反応式は,
$$\ce{^{14}_6C} \cto \ce{^{14}_7N} + \ce{e}$$
とかくことができます。
$\gamma$ 崩壊
$\alpha$ 崩壊や $\beta$ 崩壊が起こった直後は,原子核が不安定な状態(励起状態)になります。
より安定した状態(基底状態)へと変化する際に,余分なエネルギーが光子として放出されます。

これが $\gamma$ 崩壊です。
エネルギーが放出されるだけなので,原子核自体は変化しないですね。
放射壊変
① $\alpha$ 崩壊
$\alpha$ 粒子($\alpha$ 線)が放出される。質量数は 4,陽子数は 2 だけ減少する。
② $\beta$ 崩壊
中性子が陽子に変化する。この際,高速な電子($\beta$ 線)が放出される。質量数は変化せず,陽子数が 1 だけ増加する。
③ $\gamma$ 崩壊
光子としてエネルギーを放出する($\gamma$ 線)。質量数や陽子数は変化しない。
3種類,丁寧に説明しましたが,「$\alpha$ 線はヘリウムの原子核,$\beta$ 線は高エネルギーの電子,$\gamma$ 線は電磁波」ということと,「反応の前後で質量数と陽子数の和が保存される」ことがわかっていれば,どれも覚えるまでもありません!
内容を丸暗記するのではなく,とにかくこの2点をしっかりと理解してください!
例題
$\ce{^{238}_{92}U}$(ウラン)は,$\alpha$ 崩壊と $\beta$ 崩壊を繰り返し,$\ce{^{206}_{82}Pb}$ へと変化することが知られている。この変化において,$\alpha$ 崩壊と $\beta$ 崩壊はそれぞれ何回起こるか。
$\alpha$ 崩壊が $x$ 回,$\beta$ 崩壊が $y$ 回起こるとする。
$\alpha$ 崩壊では質量数が $4$,陽子数が $2$ だけ減少し,$\beta$ 崩壊では陽子数が $1$ だけ増加する。
よって,質量数と陽子数について,
$$238 - 4x = 206,\quad 92 - 2x + y = 82$$
が成立する。
これを解くと,$x=8,\ y=6$ が得られるため,$\alpha$ 崩壊が 8 回,$\beta$ 崩壊が 6 回起こる。