$\rmX$ 線とは
電磁波の1種
波動の単元では,可視光について学習しました。そして,電磁気学の単元で,この可視光が電磁波であることを確認しました。
今回考えていく $\rmX$ 線も,電磁波の1種です。

レントゲン撮影など身の回りでも利用されているので,一度は名前を聞いたことがあるでしょう。
$\rmX$ 線の波長は,$1.0\times10^{-2}\punit{nm}$ から $1.0\punit{nm}$ 程度とされています。
可視光がおおよそ $5.0\times10^2\punit{nm}$ ですから,それよりもだいぶ波長が小さいことがわかりますね。
波長が小さいがゆえに,小さな小さな世界を議論する原子物理の世界でたびたび登場します。
$\rmX$ 線の発生
電子線を金属にぶつける!
電圧によって加速した電子線を,金属(ターゲット)にぶつけると,様々な波長を持つ $\rmX$ 線が発生します。
この $\rmX$ 線について,横軸に $\rmX$ 線の波長を,縦軸に $\rmX$ 線の強さを取ったグラフをかくと,図のようになります。
色々な波長の $\rmX$ 線が発生していることがわかりますが,特徴のあるグラフになっていますね。
このグラフのように,いくつかの決まった波長の $\rmX$ 線だけ,やたらと強度が強くなるのです。
これは,2種類の $\rmX$ 線の発生の原理を考えることで説明することができます。
順番に見ていきましょう。
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連続 $\rmX$ 線
連続 $\rmX$ 線
実際に得られるグラフのうち,異常に強い強度の $\rmX$ 線以外の連続した波長の $\rmX$ 線を連続 $\rmX$ 線と呼びます。
下のグラフの色を付けた部分の $\rmX$ 線のことですね。

この $\rmX$ 線がどのような仕組みで発生しているのかを考えてみましょう。
エネルギーの議論
$V_0$ の電圧で加速させ,$eV_0$ の運動エネルギーを持った電子がターゲットにぶつかったとしましょう。
衝突によって電子は急激に止まることとなり,この際に $\rmX$ 線が放出されます。
もともと電子が持っていたエネルギーの一部がこの $\rmX$ 線のエネルギーとなり,残りのエネルギーは熱エネルギー $\varepsilon$ として放出されます。
$\rmX$ 線を光子と考えれば,そのエネルギーは $h\nu=\mskip 4mu\bun{hc}{\lambda}\mskip 5mu$ とかけます。よって,電子1つと光子1つの間のエネルギー保存則から,
$$eV_0=\mskip 4mu\bun{hc}{\lambda}\mskip 5mu+\varepsilon$$
が成立しますね。
熱エネルギー $\varepsilon$ は $0$ 以上の値ですので,
$$\varepsilon=eV_0-\mskip 6mu\bun{hc}{\lambda}\mskip 5mu\geqq0\qquad\therefore \quad \lambda\leqq\mskip 6mu\bun{hc}{eV_0}\mskip 5mu$$
が成りたつことがわかります。
これより,グラフに示した最短波長 $\lambda\min$ が,
$$\lambda\min=\mskip 4mu\bun{hc}{eV_0}\mskip 5mu$$
であることがわかりますね。
この波長の $\rmX$ 線は,電子の持つエネルギーを全て受け取った光子を表しており,最も高いエネルギーを持ちます。
「分配」として考える!
電子の持つエネルギーが $h\nu$ と $\varepsilon$ に分配される現象,と考えるとわかりやすいですね。
多くのエネルギーを受け取った $\rmX$ 線(光子)は波長が短く,逆に一部しか受け取れなかった(大半は $\varepsilon$ になってしまった) $\rmX$ 線は波長が長くなることがわかります。
連続X線
電子の持つエネルギーが全て光子のエネルギーとなるときに発生する $\rmX$ 線の波長が最短となる。その波長は,
$$\lambda\min=\mskip 4mu\bun{hc}{eV_0}\mskip 5mu$$
によって与えられ,加速電圧 $V_0$ のみで決まる。
特性$\rmX$線
金属の種類による $\rmX$ 線
決まった波長において,強い強度で観測される $\rmX$ 線を特性$\rmX$線と呼びます。
この特性 $\rmX$ 線は,ターゲットの金属の種類のみで決まります(加速電圧 $V_0$ にも依存しない!)。
この特性 $\rmX$ 線がどのような仕組みで発生するのかについても確認しておきましょう。
発生原理
電子線がターゲット金属の原子の電子にぶつかり,その電子が原子の外へとはじき出されることがあります。
例えば次図のように,$\rmK$ 殻(量子数 $n=1$ に対応する最も内側の安定した軌道)の電子がはじき飛ばされたとしましょう。
するとここに「空席」ができますが,この「空席」はエネルギーが最も低く安定した「空席」です。
より外側の軌道の電子がこの空席に飛び移ってきます。
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もとの軌道のエネルギー準位が $E_n$,空席ができて電子が飛び移った先のエネルギー準位が $E_n\prime $ とすると,
$$h\nu=E_n-E_n\prime $$
のエネルギーをもつ光子($\rmX$線)が放出されます。これが特性 $\rmX$ 線の正体です。

波長が決まっていることもうまく説明できますね…!
特性X線
当てた電子がターゲット金属の原子の電子をはじき飛ばしたときにできた空の軌道に,他の軌道の電子が飛び移る際に特性 $\rmX$ 線が放出される。
エネルギー準位の差が特性 $\rmX$ 線の波長を決めるため,金属の種類によって決まる値であり,加速電圧には依存しない。
例題
$V$ の加速電圧で加速した電子を金属に当てたところ,$\rmX$ 線が発生した。このときに発生した $\rmX$ 線の波長を横軸に,強度を縦軸に取ったグラフは図の通りである。電気素量を $e$,プランク定数を $h$ として以下の設問に答えよ。
グラフ中の $\lambda\min$ を求めよ。
加速電圧を $2$ 倍にしたとき,$\lambda_1$,$\lambda_2$,$\lambda\min$ はそれぞれどのように変化するか。
電子が持つエネルギーが全て光子のエネルギーとなっている状況を考えればよい。
エネルギー収支から,
$$eV=\mskip 4mu\bun{hc}{\lambda\min}\mskip 5mu\qquad\therefore \quad \lambda\min=\mskip 4mu\bun{hc}{eV}\mskip 5mu$$
(1) の結果より,$V$ が $2$ 倍になると $\lambda\min$ は $\Bun12$ 倍になる。
一方,$\lambda_1,\,\lambda_2$ は特性 $\rmX$ 線の波長を表している。
特性 $\rmX$ 線の波長は加速電圧に依存しないため,$\lambda_1,\,\lambda_2$ は変化しない。