物理 電磁気学

地場と磁束

羽白 いむ

東京大学医学部医学科卒 現役医師
東大指導専門塾鉄緑会 物理・数学科元講師
物理基礎のトリセツ著者
数学のトリセツ共著者

磁荷

磁荷とは

羽白

いよいよ電磁気学も後半戦!磁気の世界について考えていきましょう!

基本となる部分は物理基礎で学習しましたね。電気の世界では正負の電荷を考えましたが,磁気の世界では磁荷を考えます。

磁荷は N 極を正として扱い,単位は $\punit{Wb}$(ウェーバー) を用います。

磁気力に関するクーロンの法則

大きさが $m_1,\,m_2$ の磁荷が距離 $r$ だけ隔てておかれている状況を考えます。

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このとき,それぞれの磁荷は互いに,
$$f=k_m\mskip 6mu\bun{m_1m_2}{r^2}\mskip 5mu$$の大きさの力を及ぼし合います。

これを「磁気力に関するクーロンの法則」と呼びますが,電気の「クーロンの法則」と同じ形ですね!

磁荷が同符号なら斥力,磁荷が異符号なら引力になります。

電気との違い

羽白

「つまり電気と全く同じってことね!簡単!!」と思った皆さん!実は大きな違いがあるのです。

それは「単一の磁荷を持つ磁石は存在しない」という点です。

磁石を半分に割ると,必ず N 極と S 極がペアになって新たな磁石ができますよね。どんなに細かく割っていっても,必ず N 極と S 極はペアで存在し,単独で存在することはできません。

正の電荷,負の電荷が単独で存在できる「電気の世界」との大きな違いがここにあります!

磁場

電場の確認

物理基礎では「磁石のまわりには磁場が存在する」と紹介しただけでしたが,すでに学習した電場と同様に考えることで,磁場について理解を深めておきましょう。

電場とは,電荷の存在によって生み出される「場」のことでした。「その場に単位電荷をおいたときに,単位電荷が受ける力」として考えましたよね。

電場が $\vec{E}$ の場所に $q$ の電荷をおくと,$\vec{F}=q\vec{E}$ の力を受けます。

磁場とは

同様に,磁荷の存在によって生み出される「場」を 磁場 と呼びます。

電場の場合と同様に,「その場に単位磁荷($+1$ の磁荷)をおいたときに,単位磁荷が受ける力」として考えます。

磁場が $\vec{H}$ の場所に $m$ の磁荷をおくと,$\vec{F}=m\vec{H}$ の力を受けます。なお,磁場の単位は $\punit{N/Wb}$ です。

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羽白

この話を聞いて,「でも単一の磁荷は存在しないのだから,この話って机上の空論では…?」と思った人は鋭い!

そうなんです。それゆえ,高校物理では磁荷について深く扱いません。

しかし,磁場は通常の磁石のまわりにも,電流のまわりにも存在するため,現実の世界の身近な話です。

こちらについてはしっかりと学習を進めていきましょう!

磁束密度

磁束密度とは

電気の世界では,電場を中心に静電気力について考えました。

磁気の世界では,これから扱っていく「電磁力」や「誘導起電力」を考えるにあたって,磁場を利用するよりも 磁束密度 というものを利用すると便利です。

文字 $\vec{B}$ を用いて表されることが多く,単位は $\punit{T}$(テスラ) です。

羽白

「また新しい話が出てきたもう嫌だ!」と思った人も安心して下さい。

磁束密度 $\vec{B}$ は,$\vec{B}=\mu_0\vec{H}$ として簡単に求めることができます。

$\mu_0$ は(真空の)透磁率 と呼ばれる定数です。つまり,「磁束密度は磁場を定数倍するだけで求まる!」ということです。

磁場を定数倍しただけですので,向きも磁場と一致します。

生徒

磁束密度

磁場に真空の透磁率 $\mu_0$ をかけたものを磁束密度と呼ぶ。磁束密度 $\vec{B}$ は,その場の磁場 $\vec{H}$ を用いて,

$$\vec{B}=\mu_0\vec{H}$$

と表される。

真空中でない場合には,その空間を満たす物質の透磁率 $\mu$ を用いて $\vec{B}=\mu\vec{H}$ とする。

磁気の世界の透磁率 $\mu$ は,電気の世界の誘電率 $\varepsilon$ と対応している。コンデンサーの電気容量を考える際に,極板間が真空のときには $C=\varepsilon_0\mskip 6mu\bun{S}{d}\mskip 5mu$,真空以外の物質のときにはその物質の誘電率 $\varepsilon$ を用いて $C=\varepsilon\mskip 6mu\bun{S}{d}\mskip 5mu$ としたことを思い出してほしい。

磁束線

場の磁束密度を表すのに 磁束線 というものを利用します。

実際には異なる点があるのですが,磁力線とおおよそ同じものであり,本数を $\mu$ 倍したものと考えて差し支えありません。

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本数の決め方のルールは電気力線と同様です。

電気力線は「電場に垂直な,単位面積の面を貫く電気力線の本数が,その場の電場の強さに等しい」というルールがありましたね。

磁束線も同様に「磁束密度に垂直な,単位面積の面を貫く磁束線の本数が,その場の磁束密度の大きさに等しい」というルールが成り立ちます。

磁束

磁束とは

ある面に注目したとき,その面を貫く磁束線の本数を 磁束 といいます。$\varPhi$(ファイ)という文字を用いて表され,単位は $\punit{Wb}$ です。

本数について

単位面積を貫く本数が磁束密度の大きさ $B$ に一致するので,面積 $S$ の面を貫く本数は単純に $BS$ として求めることができますね。

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しかし,磁束はあくまでその面を「貫く」磁束線の本数であることに注意しなければなりません。

たとえば下の左図のような状況ではどうでしょう?

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注目している面の場所の磁束密度の大きさは $B$ だとしても,面を「貫く」磁束線は $0$ 本ですよね。それゆえ,$\varPhi=0$ となるのです。

一方,右の図のような状況ではどのように考えればよいでしょうか。

羽白

面に対して磁束線が斜めの方向に貫いている状況です。

この場合には,磁束密度を成分分解をしましょう。面に垂直な方向の成分と,面に平行な方向の成分に分けて考えます。

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磁束密度の面に垂直な方向成分の大きさは $B\cos\theta$ ですね。これに面の面積 $S$ をかけた $BS\cos\theta$ がこの面を通る磁束です。

一方,面に平行な方向成分は面を貫かないため,磁束を考えるにあたっては考慮しなくて ok です。

磁束

ある面を貫く磁束線の本数を磁束といい,$\varPhi=BS$ として求める。磁束密度と面の向きが直交しない場合は,面に垂直な方向成分の大きさ $BS\cos\theta$ を用いて,$\varPhi=BS\cos\theta$ とする。

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