熱力学

問題へのアプローチ方法

羽白 いむ

東京大学医学部医学科卒 現役医師
東大指導専門塾鉄緑会 物理・数学科元講師
物理基礎のトリセツ著者
数学のトリセツ共著者

状態変化のまとめ

4つの代表的な状態変化

さて,ここまで見てきた4つの状態変化は入試でも出題頻度が非常に高く,とってもとっても重要です!

特に $Q\in,\,\varDelta U,\,W\out$ についてはそれぞれ一瞬で求められるようにしておき,$P-V$グラフの概形も瞬時にかけるようにしておくのが理想です。

羽白

以下の表にまとめましたので,どれも瞬時に埋められるようにしておきましょう!

この表,とっても大事です!すらすらと自分でかけるようにしておきましょう!!

生徒

問題へのアプローチ

どの状態変化化を考える

特に難しい入試問題になると「その状態変化が何変化なのかがわからない」という状況が多々あります。

「自分の知らない変化なのかな…」と難しく考えてしまう人が多いのですが,表にまとめた4つの状態変化うちのどれかであることが大半です。

まずは「どうせ4つのうちのどれかだろう!」と疑う習慣を付けておきましょう。

定圧変化について

特に定圧変化はなかなか気付きにくいことが多いですが,ピストンとの相性が抜群です。ピストンを見たらまずは定圧変化を疑いましょう

さて,この定圧変化について補足をしておきます。定圧変化では,以下が成立するのでした。

$$Q\in=n\CP\varDelta T,\ \varDelta U=n\CV\varDelta T,\ W\out=nR\varDelta T$$

それぞれを個別に求めてもよいのですが,もっともっと楽な方法があります。

$Q\in,\,\varDelta U,\,W\out$ に,$n,\,\varDelta T$ が共通していることに注目すると,

$$Q\in:\varDelta U:W\out=\CP:\CV:R$$が成立することがわかります。

これより例えば,$W\out$ を求めることができた場合,比を利用して,

$$Q\in=\mskip 4mu\bun{\CP}{R}\mskip 5muW\out,\ \varDelta U=\mskip 4mu\bun{\CV}{R}\mskip 5muW\out$$のように計算することができます。

つまり,$Q\in,\,\varDelta U,\,W\out$ のうちどれか1つがわかれば,残りの2つは比を用いてすぐに計算できるということです。

特に単原子分子理想気体の場合は,

$$Q\in:\varDelta U:W\out=\mskip 4mu\bun52R:\bun32R:R=5:3:2$$という非常にシンプルな比の関係が成り立ちます。

この性質を利用することで,瞬時に解ける問題が増えますので必ず習得しましょう!

羽白

定圧変化の問題で比を利用する方法,使いこなせるととっても便利です。

定圧変化の扱い

定圧変化において,常に

$$Q\in:\varDelta U:W\out=\CP:\CV:R$$の関係が成り立つ。特に,単原子分子理想気体の場合には,

$$Q\in:\varDelta U:W\out=5:3:2$$が成り立つ。

例題

単原子分子理想気体に,定圧条件下で $10\J$ の熱量を加えた。この際,気体が外界にする仕事 $W\out$ および内部エネルギーの変化 $\varDelta U$ を求めよ。

単原子分子理想気体なので,$Q\in:\varDelta U:W\out=5:3:2$ が成立する。よって,

$$\varDelta U=10\cdot\mskip 6mu\bun35=6.0\J,\ W\out=10\cdot\mskip 6mu\bun25=4.0\J$$

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