力学 物理

剛体に作用する力の合成

羽白 いむ

東京大学医学部医学科卒 現役医師
東大指導専門塾鉄緑会 物理・数学科元講師
物理基礎のトリセツ著者
数学のトリセツ共著者

力の合成について

質点との違い

物理基礎で力の合成について学習しました。質点は大きさを考えないため,力の作用点も必ず質点の位置に一致し,複数の力を足し合わせる際には単純にベクトルの足し算として考えました。

しかし,剛体の場合は大きさがあるため,力の作用点が一致するとは限りません。

このような場合,力の合成はどのように行えばよいでしょうか?

生徒

力の移動

ここで,作用線上で力を平行移動させても力の効果は変わらないことを思い出しましょう。

羽白

力のモーメントを求める際にも,力を作用線上で移動させて考えましたよね。

剛体に作用する力を合成する際にも,作用点が一致するように力を移動させてしまえばよいのです。

2つの力の作用線の交点が共通の作用点となるように力を移動させれば,質点の場合と同様に力を合成することができます。

2つの力ベクトルが作る平行四辺形の対角線となるベクトルが合力を表します。

この合力 F\vec{F} も,必要に応じて作用線上で動かして考えてokです。

平行な2力の合成

棒を用いた例

羽白

剛体に働く2つの力が平行な向きのときはどうでしょうか?

図のような状況を考えてみます。

棒の左端付近の A\rmA 点に大きさが f1f_1 である力 f1\vec{f_1} が下向きに,右端付近の B\rmB 点に大きさが f2f_2 である力 f2\vec{f_2} が下向きに作用しているものとします。

この2つの力を合成するために作用点の交点を考えようとしても,2力が平行なので作用線が交わりません。このような状況では,別の考え方で合力を求める必要があります。

つり合う力を考える

f1\vec{f_1}f2\vec{f_2} の2つの力だけでは,棒に働く力が明らかにつり合っていませんよね。

そこで,棒が静止できるように,大きさが FF\prime の力 F\vec{\it{F\prime }} を追加で棒に加えてみましょう。

力のつり合いより,

F=f1+f2F\prime =f_1+f_2が,O\rmO 点まわりの力のモーメントのつり合いより,

f1l2=f2l1l1:l2=f2:f1f_1l_2=f_2l_1\qquad\therefore \quad l_1:l_2=f_2:f_1が成立します。

力のつり合いは,向きも含むベクトル表記で考えると,f1+f2+F=0\vec{f_1}+\vec{f_2}+\vec{\it{F\prime }}=\vec{0} です。

これを少し変形すると,

f1+f2=F\vec{f_1}+\vec{f_2}=-\vec{\it{F\prime }}となります。

この式の意味するところは,「f1\vec{f_1}f2\vec{f_2} を足すと,F-\vec{\it{F\prime }} になる」ということですね。

つまり!この F-\vec{\it{F\prime }} というベクトルこそがまさに今回求めたかった合力のベクトル F\vec{F} になっているのです。

大きさは F\vec{\it{F\prime }} と同じく f1+f2f_1+f_2,作用点は O\rmO ですね!

なお,この O\rmO 点は,線分 AB\rmA\rmBl2:l1=f1:f2l_2:l_1=f_1:f_2 に内分する点となっています。「力の大きさの逆比の内分点」と考えることができますね。

平行な2力の合成

平行な2力の合力は,2力の作用点を結ぶ線分を「力の大きさの逆比に内分する点」を作用点と考える。向きは2力と等しく,大きさは2力の和となる。

平行で逆向きの2力の合成

同様に考える!

合成する平行な2力 f1\vec{f_1}f2\vec{f_2} が互いに逆向きの場合も考え方は同様です。

ここでは f1>f2f_1>f_2 であるものとし,棒が静止できるように,力 F\vec{\it{F\prime }} を追加します。

力のつり合いより,

F+f2=f1F=f1f2F\prime +f_2=f_1\qquad\therefore \quad F\prime =f_1-f_2が,O\rmO 点まわりの力のモーメントのつり合いより,

f1l2=f2l1l1:l2=f2:f1f_1l_2=f_2l_1\qquad\therefore \quad l_1:l_2=f_2:f_1が成り立ちます。

こちらの力のモーメントのつり合いの式は2力が同じ向きの場合と同様ですが,O\rmO が線分 AB\rmA\rmBl2:l1l_2:l_1 に外分する点であることに注意しましょう。

式の変形と解釈

向きも含むベクトル表記で力のつり合いを考えると,

F+f1+f2=0f1+f2=F\vec{\it{F\prime }}+\vec{f_1}+\vec{f_2}=\vec{0}\qquad\therefore \quad \vec{f_1}+\vec{f_2}=-\vec{\it{F\prime }}ですので,やはり F-\vec{\it{F\prime }} が求める合力のベクトル F\vec{F} になります。

向きは f1\vec{f_1} と同じ,大きさは f1f2f_1-f_2 です。作用点 O\rmO は,線分 AB\rmA\rmB を力の大きさの逆比 f2:f1f_2:f_1 で外分した点となります。

なお,f2<f1\vec{f_2}<\vec{f_1} の場合も同様に考えることができます。

平行で逆向きの2力の合成

平行で逆向きな2力の合力は,2力の作用点を結ぶ線分を「力の大きさの逆比に外分する点」を作用点と考える。

向きは大きさが大きい方の力と同じ向きであり,大きさは2力の差となる。

結局は,「平行な2力の合成」において,f1f1\vec{f_1}\to-\vec{f_1} にしたものを考えているだけである。作用点は「線分 AB\rmA\rmBl2:l1=(f1):f2l_2:l_1=(-f_1):f_2 に内分する点」となるが,これを「線分 AB\rmA\rmBl2:l1=f1:f2l_2:l_1=f_1:f_2 に外分する点」として考えればよい。

偶力

より複雑な状況

羽白

平行で逆向きの2力の大きさが同じになるとどうでしょうか。

力の大きさの比が 1:11:1 ですので,2力の作用点を結ぶ線分を「力の大きさの逆比に外分する点」は存在しません。よって,力の合成はできません!このような2力の組を偶力と呼びます。

偶力の力のモーメント

図の状況を考えてみましょう。棒に作用する2力は偶力となっています。

この偶力の力のモーメントを計算してみます。力の大きさを ff とし,A\rmA 点まわりで考えると,反時計回りに flfl ですね。B\rmB 点まわりで考えても同様に反時計回りに flfl です。棒の中心点 O\rmO まわりで考えても,反時計回りに 2×fl2  =fl2\times\mskip 6mu\bun{fl}{2}\mskip 5mu=fl ですね。

このように,偶力の力のモーメントはどの点まわりで計算しても等しく,flfl の値となることが知られています。なお,2力は常に「力のつり合い」を満たすため,物体を加速させる作用はありません。

偶力

剛体に作用し,互いに大きさが等しく,逆向きの関係となる2力の組のこと。力のモーメントはどの点まわりで計算しても等しくなる。

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