力学

ケプラーの法則

羽白 いむ

東京大学医学部医学科卒 現役医師
東大指導専門塾鉄緑会 物理・数学科元講師
物理基礎のトリセツ著者
数学のトリセツ共著者

ケプラーの法則とは

3つの法則

地球や火星,金星などの惑星は,恒星である太陽のまわりをまわっています。

「そんなの当たり前だ!」と思うかもしれませんが,地球上で暮らす人類がこの事実にたどり着くのには非常に長い時間がかかりました。

「天動説」というものを聞いたことがあるでしょう。

羽白

地球のまわりを太陽がまわっている,という説が受け入れられていた時期もあったんですね。

そんな惑星の運動について,17世紀のはじめにケプラーの法則が発表されました。ケプラーの法則は以下の3つです。

ケプラーの法則

第一法則:楕円軌道の法則

太陽系の惑星は,太陽を1つの焦点とした楕円軌道を描いて運動する。

第二法則:面積速度保存則

第三法則:公転周期と長半径の関係

各惑星の周期を $T_i$,長半径を $a_i$ とすれば,

$$\Bun{T_i\!^2}{a_i\!^3}\mskip 5mu=\stext{\hspace{-.5em}(一定)}$$が成立する。

このケプラーの法則によって,惑星運動の理解が深まったのですが,第一法則以外は少し難しいので個別に見ていきましょう!

ケプラーの第二法則

太陽(恒星)を1つの焦点として,惑星(地球など)が楕円軌道の公転運動をする,というのがケプラーの第一法則でした。

この楕円運動について述べているのがケプラーの第二法則です。

ケプラーの第二法則

惑星と太陽を結ぶ線分が単位時間あたりに掃く面積は一定となる。

惑星と太陽を結ぶ線分が単位時間に掃く面積,というのは図の色付きの部分の面積です。

この面積には面積速度という名前が付いているため,ケプラーの第二法則は別名面積速度保存則と呼ばれています。

面積速度の計算

羽白

具体的に面積を考えてみましょう。

惑星の軌道は楕円ですので,色付き部分は2本の線分と楕円の一部で囲まれているのですが,楕円の一部を速度ベクトル(直線)で近似します。

すると,底辺が $r$,高さが $v\sin\theta$ の三角形とみなせるため,その面積が,

$$S=\mskip 4mu\bun12rv\sin\theta$$であることがわかりますね。これが面積速度となります。

結局は,太陽と惑星を結ぶ線分と,速度ベクトルが作る三角形の面積が面積速度,ということです。

注目している惑星について,この面積速度が常に一定というのが面積速度保存則です。

実際に立式する際には,近日点(太陽に最も近い点)と,遠日点(太陽から最も遠い点)で立式することが大半です。

惑星運動以外での面積速度保存則

ケプラーの第二法則としての面積速度保存則ですが,物体に働く力が常にある一点に向かう場合に成立することが知られています。このような力は中心力と呼ばれています。

羽白

具体的には次の例題のような状況です。

「面積速度保存則を使う!」と気付けないと解けませんので,「中心力のみが働くときは面積速度保存則!」ということをしっかりと意識できるようにしましょう。

例題

穴の空いた水平な板がある。穴には質量の無視できる伸び縮みしない糸が通されており,糸の端には質量 $m$ の小球が取り付けられている。はじめ,糸の他端は固定されており,小球は速さ $v$,半径 $r$ の円運動を行っている。以下の問いに答えよ。

糸の張力 $T$ を求めよ。

糸の他端をゆっくりと鉛直下向きに $x$ だけ引き下げて再び固定すると,小球は速さ $V$ で円運動を行うようになった。$V$ を求めよ。

小球の力の作用図は次の通り。

円運動の運動方程式より,
$$m\mskip 6mu\bun{v^2}{r}\mskip 5mu=T$$が成り立つ。よって,

$$T=m\mskip 6mu\bun{v^2}{r}\mskip 5mu$$

小球に作用する張力は,常に穴に向かう向きとなるため,中心力とみなせる。

よって,小球の面積速度は保存される。

糸を引いた後の小球の円運動の半径は $r-x$ なので,面積速度保存則より,

$$\bun12rv=\mskip 4mu\bun12(r-x)V$$が成り立つ。これを整理して,

$$V=\mskip 4mu\bun{r}{r-x}\mskip 5muv$$

なお,張力が小球に仕事をするため,力学的エネルギーは保存されない点に注意しましょう。

ケプラーの第三法則

羽白

同じ恒星のまわりをまわる惑星についての法則です。

各惑星の周期を $T_i$,長半径を $a_i$ とすれば,

$$\Bun{T_i\!^2}{a_i\!^3}\mskip 5mu=\stext{\hspace{-.5em}(一定)}$$となります。

文字よりは日本語で,

$$\Bun{\stext{\hspace{-.5em}(周期)}^2}{\stext{\hspace{-.5em}(長半径)}^3}=\stext{\hspace{-.5em}(一定)}$$と覚えておきましょう。

長半径は,楕円の長軸の半分の長さを表す。

忘れない覚え方

どっちが $2$乗でどっちが $3$乗かわからなくなる人が大量発生します。

漢字の文字数で覚えておきましょう。「周期」は2文字なので $2$乗,「長半径」は3文字なので $3$乗です。

分子分母はひっくり返してしまっても同じ結果になります。

ケプラーの第二法則と違って,2つの惑星を比較する形で立式します。

よってたとえば,

$$\Bun{\stext{\hspace{-.5em}(地球の周期)}^2}{\stext{\hspace{-.5em}(地球の長半径)}^3}=\mskip 4mu\bun{\stext{\hspace{-.5em}(火星の周期)}^2}{\stext{\hspace{-.5em}(火星の長半径)}^3}$$といった形になります。

ケプラーの第二・第三法則

ケプラーの第二法則は注目している惑星の面積速度が常に一定,として立式。一方,ケプラーの第三法則は異なる惑星同士で比較する形で立式する。

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