電磁誘導
変化を嫌うツンデレ
「ツンデレ」ってご存知ですか?
普段はツンツンしていて冷たい態度を取っているのに,なにかのきっかけでデレデレとした甘えるような態度を取る人のことです。
皆さんもそんな人に出会ったことがあるのではないでしょうか。電磁気学の世界でも,このような「ツンデレ」な現象が存在します。
図のようなループの形をした導線に棒磁石を近づける実験を考えます。
棒磁石が導線に近づくと,ループを貫く下向きの磁力線の本数が増えることがわかります。
すると,この増加分を打ち消そうとするような働きかけが起こります。
下向きの磁力線が増えてしまったので,上向きの磁力線を作ってこれを打ち消そうとするのです。
どうすれば上向きの磁力線ができるでしょう…?
以前学習した「円形電流の周りの磁場」の話を思い出してください。
円形の導線に電流が流れているとき,ループを貫く磁場が発生しましたよね。
つまり,ループに電流が流れれば磁場を発生させることができます。
右ねじの法則から,反時計回りに電流が流れれば上向きの磁力線ができあがりますね。
電磁誘導
このように,磁場の変化を妨げるために導線に流れる電流を誘導電流と呼びます。
電流を流すためには何が必要かといえば,電池の起電力でした。
この誘導電流を流すために,導線には誘導起電力という起電力が生じるのです。
こうした現象を電磁誘導と呼びます。
電磁誘導によって生じた磁場はループを上向きに貫く磁場でした。
上向きに磁場が生じているということは,「このループの部分に上がN極の磁石ができた!」と考えてもよいはずです。
すると,「磁石が近づいてきたので,それに反発するような仮想的な磁石を誘導電流によって作り,近づいてきた磁石を遠ざけようとした」と考えることができます。
実際,ループに近づく磁石は誘導電流が作り出す磁場から上向きに力を受けます。
磁石が近づいてくると,それを遠ざけるように働きかけるわけですから,とてもツンツンしていますね。
反対の場合
では,磁石がループから遠ざかっていく際はどのような現象が起こるでしょうか?例題で確認してみましょう。
例題
円形のループの上に,下がN極となる向きに棒磁石が設置されている。この棒磁石を遠ざけようとした際,電磁誘導によって生じる磁場が磁石に及ぼす力の向きを答えよ。
磁石がループから遠ざかると,ループを下向きに貫く磁力線の本数が減少する。この減少を補うため,下向きの磁力線を作り出すような時計回りの誘導電流がループに流れる。
誘導電流が作り出す磁場はループを下向きに貫く向きであるため,ループ内に下がN極の仮想的な磁石が発生したものとして考えることができる。
この仮想的な磁石は,遠ざかる磁石のN極を引きつけるため,遠ざかる磁石は下向きの力を受ける。
磁石が遠ざかると,遠ざからないように引っ張る力を及ぼすわけですから,とてもデレデレしています。
これまでの話から,「ループに磁石を近づけると磁石は上向きに力を受け,磁石を遠ざけると磁石は下向きに力を受ける」ことがわかりました。
いずれにしても,変化を妨げるような働きかけが生じています。
電磁誘導とは,「変化を嫌い,変化を妨げるような働きかけを発生させる」ような現象なのです。この点が非常に重要なのでしっかりと覚えておきましょう。
電磁誘導
ループ状の導線の内部の磁場が変化すると,その変化を妨げるような働きかけが生じる。この際,ループには誘導起電力が発生することで,誘導電流が流れる。
ループに磁石が近づいてくれば遠ざけようとし,磁石が遠ざかろうとすると近づけようとするのです。
これってまさに「ツンデレ」ですよね。