所感
総評:多種多様な問題のセット
取り組みやすい系,計算が大変な系,設定を理解するのが大変な系と,多様な問題が集まっているセットだった印象です。
こうしたセットの場合には,解く順番などの戦略が重要になります。
うまく解ける問題から順番に解いていけば十分に高得点も狙えますが,1つの問題で悩み込んでしまって時間をロスするなど,戦略を間違えると大失点に繋がりかねません。
2021年全体の特徴
- 取り組みやすい問題,取り組みにくい問題が混在している。
- 全体として計算量が多い。
- 解答する数が非常に多い。
出題量について
解答するものの数は「43個」であり,かなり多め。
第2問,3問については設定を読み取るのにも時間がかかるため,制限時間内(化学との兼ね合いを考えて65分くらい)の中で正確に答えを合わせていくのはなかなか難しかったものと思われます。
1問あたりの配点はおおよそ1.5点ですから,解答の作成にも時間をかけすぎないことがポイントになるでしょう。
内容について
比較的オーソドックスな内容の第1問に対して,第2問,第3問はその場で状況設定を読み取って解き進める必要があるため,難しく感じられたのではないでしょうか。
素早く,正確に題意を理解し,うまく誘導に乗りながら解答していくことが重要です。
解く順番
まず,「コンデンサー回路の問題は計算が多くなることが多い」ことは知っておくと良いでしょう。
図もたくさんかかないといけないですし,キルヒホッフの第二法則と電荷保存則を何度も立式することになります。
したがって,全ての問題を眺めながら「第2問は最後かな…」と判断するのがまずは正解でしょう。第2問を最初に解くと泥沼化しかねません。
続いて,第3問は「ノーベル物理学賞」の話をしており,系も典型的でなく,図も複雑なため,後回しにするという選択をするのが素直でしょう。
第1問は図も複雑ではなく,最初に解くのにも戸惑いはないはずです。
推奨解答順序
第1問 → 第3問 → 第2問
今回のように,計算量が多い問題,系が真新しい問題が多いセットの場合には,特に解く順番が重要です。
苦手分野があると,客観的に解く順番を決められなくなります。「力学が苦手」という意識があり,今回のセットで力学を後回しにしてしまったりすると,大変なことになります。
第1問:素直な力学の問題
全体を通して複雑な考え方は不要で,問題文の流れに沿って素直に解いていく問題です。
山場となるのはⅢ(2)でしょう。式自体を立式するのは容易ですが,計算過程がやや複雑で不安になる内容です。ここさえ乗り越えてしまえばそこから先はスムーズに解ける問題が多く,この設問が高得点への鍵を握ります。
Ⅲ(2)が解ければその先も最後まで得点しやすく,解けなければその先は全て解けないため,ここで大きな差がつくことが予想されます。じっくり時間をかけて計算できるように,それまでの設問を正確に短時間で解き進めていくことも重要です。
この問題が理解できれば,効率よくブランコがこげますね。近所の公園に行って,ブランコに乗っている子どもたちにドヤ顔で説明できます。
第2問:コンデンサーを含む回路の問題
見るからに時間がかかりそうな問題です。本問でいかに時間をかけず,得点を取れるかが物理全体の得点を左右するといっても過言ではありません。
前半はとにかく「回路を適切にわかりやすい形に書き換えながら,図を多用してサクサク解いていく」ことが重要です。本問のような「コンデンサー回路で操作を行っていく問題」では,「図をかいてキル2と電荷保存則」というパターンが大半です。
やることは決まっているけれど,時間がかかることが大半…。
後半は振動回路で,(1)はよくあるパターンなのですが,(2)以降は見慣れない誘導に従いながら解いていかないといけないため,その場で考える力が問われます。残された時間と理解力によって大きく差が付くでしょう。
第3問:真新しい系,素早く読み解く力が重要
見慣れない系で,問題文を速やかに理解しながら誘導に乗って解いていく問題です。見た目はゴッツいので,「解きやすそう!最初に解こう!」とはならないですね…。
Ⅲが難しいため,Ⅱまでを時間をかけずに正解することが何より重要です。
Ⅱまでは比較的容易な問題が揃っているため,ⅡまでとⅢ以降の差が大きく,受験者全体であまり差がつかない問題かと思われます。
目標点
科類 | 第1問 | 第2問 | 第3問 | 計 |
---|---|---|---|---|
理Ⅰ・Ⅱ | 13点 | 12点 | 14点 | 39点 |
理Ⅲ | 18点 | 16点 | 15点 | 49点 |
参考資料
東京大学公式ホームページは以下です。
解答の作成方法など,東大物理の対策総論については以下のページもご参考に。
こちらもCHECK
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東京大学 物理 傾向と対策
東大物理の傾向分析のページです。
試験時間の使い方や解答作成方法について,詳しく説明しています。続きを見る
難易度・配点
第1問
設問 | 難易度(A〜D) | 配点 | |
---|---|---|---|
Ⅰ | A | 6点 | |
Ⅱ | (1) | A | 2点 |
(2) | B | 3点 | |
Ⅲ | (1) | B | 2点 |
(2) | C | 3点 | |
(3) | C | 2点 | |
(4) | B | 1点 | |
(5) | B | 1点 |
第2問
設問 | 難易度(A〜D) | 配点 | |
---|---|---|---|
Ⅰ | (1) | A | 1点 |
(2) | A | 1点 | |
(3) | B | 3点 | |
Ⅱ | (1) | B | 2点 |
(2) | C | 3点 | |
Ⅲ | (1) | C | 2点 |
(2) | B | 2点 | |
(3) | C | 2点 | |
(4) | C | 3点 | |
(5) | D | 1点 |
第3問
設問 | 難易度(A〜D) | 配点 | |
---|---|---|---|
Ⅰ | (1) | A | 2点 |
(2) | A | 2点 | |
(3) | B | 2点 | |
(4) | B | 2点 | |
(5) | B | 2点 | |
Ⅱ | (1) | B | 2点 |
(2) | B | 2点 | |
(3) | D | 1点 | |
Ⅱ | (1) | D | 2点 |
(2) | C | 2点 | |
(3) | B | 1点 |
採点基準
第1問
設問 | 基準 | 点数 | |
---|---|---|---|
Ⅰ | 空欄に入る数式を答えて | 各2点 | |
Ⅱ | (1) | 正答を得て | 2点 |
(2) | $\mathrm{GG'}$ を $v\SUB{A}$ で表して | 1点 | |
エネルギー保存則を立式して | 1点 | ||
正答を得て | 1点 | ||
Ⅱ | (1) | エネルギー保存則を立式して | 1点 |
正答を得て | 1点 | ||
(2) | エネルギー保存則を立式して | 1点 | |
近似式を用いてエネルギー保存則を変形して | 1点 | ||
正答を得て | 1点 | ||
(3) | $\theta'=0$ を答えて | 1点 | |
$\theta'=0$ のときの $\theta''$ を求めて | 1点 | ||
(4) | 正答を得て | 1点 | |
(5) | 正答を得て | 1点 |
第2問
設問 | 基準 | 点数 | |
---|---|---|---|
Ⅰ | (1) | 空欄に入る数式を答えて | 各2点 |
(2) | 正答を得て | 2点 | |
$\varDelta V$ を求めて | 1点 | ||
(3) | 方針を正しく示して | 1点 | |
$Q$ を求めて | 1点 | ||
(4) | $W=1/2\,QV_0$ を述べて | 1点 | |
仕事を求めて | 1点 | ||
(5) | エネルギーの種類と量を求めて | 各1点 | |
Ⅱ | 空欄に入る数式を答えて | 各1点 | |
Ⅲ | 到達速さの比を述べて | 1点 | |
到達速さを求めて | 各1点 |
第3問
設問 | 基準 | 点数 | |
---|---|---|---|
Ⅰ | (1) | 正答を得て | 2点 |
(2) | 正答を得て | 2点 | |
(3) | 運動量の変化の大きさを求めて | 1点 | |
運動量の変化の向きを求めて | 1点 | ||
(4) | 力の大きさを求めて | 1点 | |
力の向きを答えて | 1点 | ||
(5) | $\sin\phi$ を求めて | 1点 | |
正答を得て | 1点 | ||
Ⅱ | (1) | 正答を得て | 2点 |
(2) | 正答を得て | 2点 | |
(3) | 正答を得て | 1点 | |
Ⅲ | (1) | $h$ を求めて | 1点 |
$d$ を求めて | 1点 | ||
(2) | 方針を説明して | 1点 | |
正答を得て | 1点 | ||
(3) | 正答を得て | 1点 |
第1問
手書き解答
東大2021_1Ⅱ(2)について
ちゃんとかくとそこそこ量が増えてしまうのですが,部分点もほとんどないでしょうし,最小限の答案量にすべきでしょう。
Ⅰの $u$ をうまく使うと答案量が減ります。
Ⅲ(2)について
鍵を握る問題です。解答に自信があれば最小限で良いですが,解き切れなければ部分点狙いで丁寧に答案をかいておくのがよいでしょう。
Ⅲ(4)(5)について
正答率も低いことが予想され,最後の方の設問ですので配点も低くなるでしょう。それも見越して,答えのみでもよいかと思います。
Ⅰ
基本的な力学的エネルギー保存則の問題です。
「解けるかどうか」ではなく,「いかに時間をかけずに解けるか」が勝負でしょう。
位置エネルギーの基準点が「支点O」に取られているのが少し厄介ですが,それ以外は難しいポイントがありません。
Ⅱ(1)
これも基本問題ですね。
「衝突,分裂,合体」を見たら運動量保存則という定石通りです。重心系の話は持ち出すまでもないでしょう。
Ⅱ(2)
水平投射の問題。難しい点はほとんどありません。
落下までの時間を求めて,$v\SUB{A}$ の式を使って整理するだけ。
「エネルギー保存則をまた立て直す」などせずに,Ⅰ(3)を使えると時間の短縮になります。$u$ の式で,$\theta\to0$ とすれば,$v_0$ はすぐに求まりますね。
Ⅲ(1)
まずは「なんの式を立式するか」ですが,非等速円運動の話ですので「エネルギー保存則」か「向心方向の運動方程式」の2択でしょう。
後者については,立式する際に「張力」という余計な変数が式中に現れてしまうため,今回は不適です。
ということで,立式するのは「エネルギー保存則」です。
さて,エネルギー保存則を立式することがわかれば,次は「どの点とどの点で立式するか」を考えないといけません。
求めたいものが $\theta''$ ですので,$\theta''$ の位置なのはわかりますが,もう1点は…?
$\theta_0$ の点も候補にはなりますが,$\theta'$ の位置における「立ち上がる」という操作で力学的エネルギーが変化してしまうのでこれは不適。
そうなると必然的に,「$\theta'$ の位置」であることがわかりますね。そもそも使っていい文字の中に $\theta'$ がはいっていて $\theta_0$ が入っていないのだから当たり前。
そもそも高いところに行きたいからブランコをこぐんです。立ち上がったのに力学的エネルギーが変わらなければ,到達する高さもおんなじ。それじゃあこいでいる意味がないし,本問の「Ⅲ(5)」も不成立。
今回の問題のように,「どの式を立てるか」「どの点とどの点で保存則を立てるか」はちゃんと理論的に理由が説明できます。
なんとなく式を立てているうちはまだまだ。「発想」なんてものは物理の問題を解く際には不要なのです。「理解」あるのみ。
Ⅲ(2)
面積速度保存則がわざわざ与えられているわけですから,まぁ使うのは必然でしょう。
与えられていなくても使えるようにしておく必要があります。「中心力のみが作用するときは面積速度が保存する」という点は理解が浅い受験生が多く,差が付きやすいので出題者からすると狙い所なのです(現に,2020年にも出題されています)。
しかしこれだけでは問題は解けません。$\theta_0$ を使って $\theta'$ を求めないといけないですね。
現時点で,「$\theta''$ と $\theta'$ の関係式」は (1) で求まっていて,$\varDelta l$ についての関係式は面積速度保存則です。
となると,あとはこれらと $\theta_0$ を結びつける関係式です。
ここまでくれば,「運動が始まった点($\theta_0$ の位置)」と「立ち上がる直前($\theta'$ の位置)」で力学的エネルギー保存則を立式しよう,と考えられるでしょう。
計算は厄介ですので,残り時間と相談して,立式だけして計算はせずに次の大問に進む,という戦略もありでしょう。
しかしその際は,必ずその先の問題にも目を通し,独立して解けるものはないか確認すべきです。
今回はこの問題が解けないとその先には進めなさそうです。しかし,ここさえ解ければこの先の設問は見通しがある程度すぐに立つので,時間があるのであればなんとか答えを出したいところ。
Ⅲ(3)
(2)が解けていれば難しくないでしょう。
ここまで後半の問題にくると部分点も少ないでしょうし,解答のみでもokかと思われます。
Ⅲ(4)
癒やし系問題です。(3)まで解けていれば一瞬。
Ⅲ(5)
計算問題なので,時間との相談です。$\log$ なんかも出てくるので少し時間はかかりそう(実際はそんなに複雑ではありませんが)。
どうせ1点の問題ですので,手を付けるかどうかは時間との相談です。
今回のセットだと第1問を最初に解いているでしょうから,20分を過ぎているのであればいったん計算を飛ばして次の大問に移るのがよい選択。
第2問
手書き解答
東大2021_2全体として
自分で設定する文字が多く,図も多用するため,どこまで解答をかくか難しいでしょう。
自分で設定した文字については「極板 $\rmA$ の電荷を $+Q_1'$ と置く」など明記するのが懸命です。しかし,かいているときりがないため,適宜「図のように電荷を設定する」などの記述でうまく済ませるとよいでしょう。
Ⅰ(3)について
答案量が悩ましいところです。答えに自信があればある程度省略しても良いでしょう。後半の問題に自信がない場合,確実に部分点を取っておきたい場合は $\varDelta C$ や $\varDelta Q$ を明記しておきましょう。
Ⅱ(2)以降について
これ以降は正答率も低くなることが予想されるため,設問全体の解答数が多いこととあわせても「解答のみの記述」で十分でしょう。
Ⅰ(1)
癒やし系問題。
Ⅰ(2)
複雑な形をしたコンデンサーの問題です。
変な形をしたコンデンサーは,必ず知っている形のコンデンサーに書き換えましょう。
今回の問題であれば,極板間距離が $d-x$ のコンデンサーとして考えればokです。
逆に「こんなんでいいのか?」と心配になりますね…。
Ⅰ(3)
コンデンサー絡みのよくあるエネルギー保存則の問題です。
外力と電池の仕事の和が,コンデンサーの静電エネルギーの変化になります。慣れるまでは図をかいて考える習慣を付けておくと良いでしょう。
熱力学ではこうした図をかいてエネルギー保存則を考えることが多いですが,その他の分野でも使いこなせると応用範囲が広がります。
Ⅱ(1)
図をかきながら状況を丁寧に整理していきましょう。
導線aを外す直前は,極板D,Bからなる電気容量が $2C_0$ のコンデンサーとして考えられますが,導線aを外すと極板C,Dが"浮いた"状態になります。
導線を外す直前,極板Dには $2C_0V$ の電荷が蓄えられていますので,ここから先はずっと極板C,Dに蓄えられている電荷の和が $2C_0V$ で固定されるわけですね。
あとはわかりやすい回路の図をかいて,状況を整理すればokです。
ここまで整理できればキルヒホッフの第二法則,電荷保存則を立式するのは難しくないでしょう。
コンデンサー回路
立式するのは「キルヒホッフの第二法則」と「電荷保存則」で十分な場合がほとんど。図をかきながら素早く状況を整理していくことが大切。
なお,この設問の時点でコンデンサーの電気容量は $C_0$ を使って書き換えておくのが無難でしょう。こうした些細な工夫が大きな時間短縮に繋がるのです。
Ⅱ(2)
電源の電圧が変わっただけ。Ⅱ(1)の時点で回路の図が整理できていれば本問も楽に答えが出せるはずです。
やはり立てている式は「キルヒホッフの第二法則」と「電荷保存則」ですね。
ここまでで「かちゃかちゃ」とコンデンサー回路をいじる内容はおしまいです。
結局立てている式は「キルヒホッフの第二法則」と「電荷保存則」だけですね。
いかに素早く状況を整理できるか,「電気容量を早い段階で $C_0$ とおいてしまう」「比を使って楽に計算する」といった工夫を取り入れて素早く計算できるか,によって大きな差がつくでしょう。
Ⅲ(1)
残り時間との兼ね合いで戦略を考えるべきでしょう。
キルヒホッフの第二法則を解いてしまって解析を済ませるのか,それともコンデンサーを合成して周期のみ求めるのか,の2択になります。
残り時間に余裕がない場合
この時点で20分程度時間が経過していれば,ひとまずこの設問のみ答えを出すことが優先でしょう。
(2)を見ると,小難しい話をしていそうなので,ひとまず(1)のみ解くことに専念します。
回路の振動の周期のみであれば,コンデンサーを合成してしまえば話が早いですよね。合成したコンデンサーの電気容量$$C=\bun43C_0$$を使って,LC振動回路の周期の式 $T=2\pi\sqrt{LC}$ に代入すればokです。
残り時間に余裕がある場合
15分程度しか経過していない状態であれば,キルヒホッフの第二法則を使って回路の解析をしてしまうという選択肢もありでしょう。
この際も,ひとまず先の設問に目を通して,「この後に何を問われるのか」を確認しておくとよいでしょう。(6)で $Q_3$ と $-Q_4$ のグラフを問われているくらいですから,先に解析をしておけば見通しは良くなりそうですよね。
キルヒホッフの第二法則が,$$\bun{q_3}{4C_0}+\bun{q_4}{2C_0}=L\bun{dI}{dt}$$
連続方程式が(符号に注意!)$$\bun{dq_3}{dt}=\bun{dq_4}{dt}=-I$$
電荷保存則が$$q_4-q_3=2C_0V$$ですね。
連立することで,$$\bun{d^2q_3}{dt^2}=-\bun{3}{4C_0L}\left(q_3+\bun{4C_0V}{3}\right)\quad{\text{…☆}}$$が得られます。
初期条件は,$$q_3=\bun{4(\alpha-1)}{3}C_0V$$ですので,これを $q_0$ としておきます。$\omega=\sqrt{\bun{3}{4C_0V}}$ とすれば,$$q_3=q_0-\left(q_0-\bun{4C_0V}{3}\right)\cos\omega t$$として $q_3$ が求まります。
特に前半部分の式変形は頻出ですので,慣れておくべきといえるでしょう。
本問のように,複数の解法が考えられる場合,残り時間やその先の問題の内容を踏まえて解法選択をすることが重要です。
Ⅲ(2)
コイルの両端の電圧は一瞬です。
本問のような,過渡現象を問う問題は非常に差が付きます。わかっていれば一瞬だし,わからないといくら考えてもわかりません。苦手意識は払拭しておくべきです。
後半は,$\varDelta t$ と $\varDelta I$ の関係式が与えられているので,$L\bun{dI}{\dt}$ の式にたどり着くことは難しくないでしょう。
$t=0$ のコイルの電圧を直前に求めていることもヒントになっていますね。
Ⅲ(3)
(1)の時点で回路の図がかけていれば容易でしょう。$\bun{dI}{dt}=0$ ですので,これを踏まえてキルヒホッフの第二法則$$\bun{Q_3}{4C_0}+\bun{Q_4}{2C_0}=0$$を立てればokです。
$Q_3=0$ のときも同じくキル2で考えればok。
Ⅲ(4)
$E_1$ は計算するだけ。
$E_2$ については(3)を使って計算しても良いのですが,電流が $I_0$ であることがすぐにわかるため,こちらを利用するのが賢明に思います。
エネルギー保存則を踏まえると,$E_2=\bun12LI_0\!\,^2$ であることがすぐにわかりますね。
Ⅲ(5)
ここまでの情報からすぐに答えが得られます。
- $t=0$ で,$\bun{dQ_3}{dt}=0$ (グラフの傾きが $0$ )
- 振動中心が $Q_3=-\bun{4C_0V}{3}$ (☆式より)
この2点を組み合わせると,④ がすぐに選べます。
そもそも振動周期が $T$ なのに,⑤,⑥を選ぶのはナンセンスですし,回路の解析ができていなくても「 $t=0$ で,$\bun{dQ_3}{dt}=0$ 」はすぐにわかるので,③と④の2択まではすぐに絞り込みたいところです。
解説を聞いてしまえば「なんだ,大したことないな」と感じるはずですが,試験場でここまで正確に整理するのは難しいでしょう。2択にまで絞って,あとはひとまず選んでおく,というのが正解なように思います。
どんなに時間がなくても必ずどれか選んで答えだけはかいておきましょう。⑤と⑥を秒で除外して,①〜④の中から好きなものを選ぶ,くらいでもok。選択肢問題を空欄で出すのはアホ。
第3問
手書き解答
東大2021_3Ⅰ(1)について
細かいですが,「屈折の法則より」よりも「スネルの法則より」とかいた方が画数が減ります。
Ⅱについて
部分点はないでしょう。解答のみで十分です。
Ⅲ(1)について
わからなければ途中経過もかきようのない内容ですし,部分点もさほど期待できないため,解答を確実に合わせて最小限の答案をかくのが理想です。
Ⅰ(1)
図を見ながら屈折の法則を立てるだけ。流石に秒殺でしょう。
Ⅰ(2)
誘導が丁寧すぎますね…。そのまま与えられた式を使っていけばokでしょう。
今回の問題では $p=\bun{E}{c}$ が与えられていますが,これは速やかに導出できるようにしておくべきです。
Ⅰ(3)
運動量変化を考える問題ですが,向きがややこしいため,図から考えるのが賢明です。
図さえかければ立式は難しくないはずです。
Ⅰ(4)
作用反作用の法則,運動量変化と力積の関係,平均の力と力積の関係,を丁寧に考えていけばokです。
向きも難しくはないでしょう。
Ⅰ(5)
屈折の法則を使いながら計算してくだけです。
落ち着いて時間をかけずに正解したいところ。
Ⅰについて
状況設定は複雑だけれど,内容は至ってシンプル。いかに時間をかけずに正解するかの勝負。
Ⅱ(1)
光が屈折しないので,光子は力を受けません。ということで反作用も $\vec{0}$ ですね。
Ⅱ(2)
運動量の変化から光子が受ける力を求め,その反作用から微粒子の受ける力を考えればokでしょう。
Ⅱ(3)
ここで一気に難易度が跳ね上がります。
(2)までの難易度は3くらい,(3)で一気に30,000,000くらいですね。ここまでの癒やし系の雰囲気が台無し。
正確な議論をするとなるとかなり難しいです。
問題文で適切な近似も与えられていないですし,正弦定理を使ったり使わなかったりで非常に厄介。
ひとまず飛ばしておくのが正解でしょう。
先の設問がヒントになっている可能性も期待して…。
正確な議論ができていなくても,なんとなく「イ」を選ぶ人が多いような気がします。
Ⅲ(1)
もはや図形問題。与えられている図が複雑で,ぱっと答えることもできないため,いったん時間と相談でしょう。
時間に余裕があれば粘ってみても良いでしょうし,余裕がなければ一旦飛ばすのもok。
解答の図をみれば「あぁ…」と理解できますが,自力で解答にたどり着くのはかなり厳しい気がします。
Ⅲ(2)
$\alpha\pm(\theta-\phi)\fallingdotseq\alpha$ という近似が与えられています。
「屈折によって光が曲がるけれども,微粒子が受ける力を求める際にはこれを無視して良いですよ」という主旨が読み取れれば,Ⅰ(5)の $d$ を Ⅲ(1)で求めた $d$ に置き換えるだけです。
言うのは簡単ですが,試験場では難しく感じる問題でしょう。
さて,上に述べた方針で式を立てると,光線1が微粒子に及ぼす力の大きさが$$f_1=\bun{2Q}{c}\cdot\bun{n-1}{n}\cdot\bun{\cos\alpha}{r}\varDelta x$$として求まるはずです。
ここで,光線2に注目してみましょう。実はこの光線2,図3-4の左側の光線と全く同じ動きをしているのです。
ポイント
図3-5の光線2と,図3-4の左側の光線と全く同じ動きをしている。$\varDelta x$ と $\varDelta y$ が対応している。
ということは,Ⅱ(2)でもこの式が使えてしまうんですよね(ただし,$\alpha\pm(\theta-\phi)\fallingdotseq\alpha$ という近似がⅡ(2)でも使えることを前提としています)。
とすれば,$\alpha$ は $\varDelta x$ に依存しませんので,$f_1$ が $\varDelta x$ に比例することがわかります。
$\varDelta x$ は図3-4の $\varDelta y$ と表しているものが全く同じですので,Ⅱ(3)の答えがイであることがわかります。
Ⅱ(3)を一旦飛ばしているのであれば,「Ⅲでは少し向きが違うけど同じようなことをやっているな…。どこかの結果がⅡ(3)で使えないかな…」と意識しながら解き進めていくことが重要です。
なんとなく解いているだけでは,Ⅲ(2)の結果が使えることに気づけないでしょう。
Ⅲ(3)
計算問題です。(2)まで解けていればスムーズでしょう。
配点は1点だと思われるので,解くかどうかは時間との相談です。