コイルと交流回路
コイルの振る舞い
抵抗について考えたのと同様に,コイルについても交流回路での振る舞いを考えていきましょう。
「各瞬間でキルヒホッフの第二法則が成立する」という原則を忘れずに!

各瞬間ですので,用いるのは瞬時値です!
具体的な回路で
次の図のように,瞬時値が $V=V_0\sin\omega t$ で表される交流電圧を,自己インダクタンスが $L$ のコイルにかけた状況を考えます。
キルヒホッフの第二法則は,
$$V_0\sin\omega t=L\mskip 6mu\bun{\dI}{\dt}\mskip 5mu$$ですね。これを整理することで,
$$\bun{\dI}{\dt}\mskip 5mu=\mskip 4mu\bun{V_0}{L}\mskip 5mu\sin\omega t$$が得られます。
「$I$ を微分したら $\bun{V_0}{L}\mskip 5mu\sin\omega t$ になる」ということですので,
$$I=-\mskip 6mu\bun{V_0}{\omega L}\mskip 5mu\cos\omega t$$として電流の瞬時値 $I$ を求めることができます!
電圧の瞬時値と形をそろえるために,$-\cos\omega t=\sin\left(\omega t-\mskip 6mu\bun{\pi}{2}\mskip 5mu\right)$ であることを利用すれば,
$$I=\mskip 4mu\bun{V_0}{\omega L}\mskip 5mu\sin\left(\omega t-\mskip 6mu\bun{\pi}{2}\mskip 5mu\right)$$になりますね。
コイルにかかる電圧と電流の関係
効率よく変換
交流回路の問題を解く際には,「コイルにかかる電圧を元に電流を求める」「コイルに流れる電流を元に電圧を求める」という手順が頻回に登場します。
上で考えた方法でも求めることはできますが,毎回毎回考えていたらとても時間がかかってしまいます。「電流から電圧を求める」「電圧から電流を求める」という手順は瞬時にできるようにしておくべきなのです。

そのための方法を説明していきます。とってもとっても大事なのでよく理解して下さい…!
わけて考える!
最大のポイントは,抵抗について考えた際に説明した通りで,「最大値同士の関係」と「位相同士の関係」をわけて考える ことです。
$V=V_0\sin\omega t$ の電圧がかかっているときに流れる電流が $I=\mskip 4mu\bun{V_0}{\omega L}\mskip 5mu\sin\left(\omega t-\mskip 6mu\bun{\pi}{2}\mskip 5mu\right)$ であることを利用して考えていきましょう。
最大値同士の関係
電圧の最大値が $V_0$ のとき,電流の最大値は $I_0=\mskip 4mu\bun{V_0}{\omega L}\mskip 5mu$ でした。これを整理すると,$V_0=\omega LI_0$ という形になります。

これって「オームの法則」の形に似ていませんか…?
$\omega L$ を「コイルの抵抗値 $R$ に相当するもの」と考えると,$V_0=RI_0$ の形になっていますよね。
この「コイルの抵抗値に相当する値」を 誘導リアクタンス と呼びます。
この誘導リアクタンスを用いることで,最大値同士の間に「オームの法則の形」が成り立つことがわかります。
位相の関係
電圧の瞬時値の位相が $\omega t$ のとき,電流の瞬時値の位相は $\omega t-\mskip 6mu\bun{\pi}{2}\mskip 5mu$ でしたね。
これより,電流の位相は電圧の位相より $\Bun{\pi}{2}\mskip 5mu$ だけ遅れることがわかります。

電圧が先,電流が遅れる,です!!
「コイルは変化を嫌う」ということからも,電圧に対して電流が遅れてついてくることは想像しやすいはずです!
コイルの電流と電圧の関係
コイルの誘導リアクタンスは $\omega L$ である。最大値についてはこのリアクタンスを用いて,オームの法則の形で考える。$V_0=\omega LI_0$ が成立する。
位相については,電流の位相が電圧の位相よりも $\Bun{\pi}{2}\mskip 5mu$ だけ遅れる。
例題
自己インダクタンスが $L$ のコイルに,瞬時値が $I(t)=I_0\sin\omega t$ で表される電流が流れている。以下の問いに答えよ。
このコイルにかかる電圧の瞬時値 $V(t)$ を求めよ。
このコイルにおける消費電力の時間平均 $\overline{P}$ を求めよ。
最大値については,オームの法則の形から考える。コイルの誘導リアクタンスは $\omega L$ なので,$V_0=\omega LI_0$ として求めることができる。
電圧の位相は電流の位相よりも $\Bun{\pi}{2}\mskip 5mu$ だけ進む。電流の位相が $\omega t$ であるため,電圧の位相は $\omega t+\mskip 4mu\bun{\pi}{2}\mskip 5mu$ である。
以上から,
$$V(t)=\omega LI_0\sin\left(\omega t+\mskip 4mu\bun{\pi}{2}\mskip 5mu\right)$$
$V(t)=\omega LI_0\cos\omega t$ と整理できるので,時刻 $t$ における消費電力は,
$$P=V(t)I(t)=\omega LI_0\!^2\sin\omega t\cos\omega t$$である。
ここで,$\sin\omega t\cos\omega t=\mskip 4mu\bun{\sin2\omega t}{2}\mskip 5mu$ であるが,$\sin2\omega t$ の時間平均は $0$ となる。よって,
$$\overline{P}=\omega LI_0\!^2\overline{\sin\omega t\cos\omega t}=0$$
コイルにおける消費電力
例題から確認できるように,コイルにおける消費電力の時間平均は $0$ です。
このことは覚えておきましょう!
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コイルにおける消費電力
交流回路における,コイルにおける消費電力の時間平均は $0$ となる。