物理 電磁気学

コンデンサーと交流回路

羽白 いむ

東京大学医学部医学科卒 現役医師
東大指導専門塾鉄緑会 物理・数学科元講師
物理基礎のトリセツ著者
数学のトリセツ共著者

コンデンサーと交流回路

具体的な回路で

羽白

コンデンサーについても,交流回路での振る舞いを考えていきましょう。

次の図のように,瞬時値が $V=V_0\sin\omega t$ で表される交流電圧を,電気容量が $C$ のコンデンサーにかけた状況を考えます。

物理1016

キルヒホッフの第二法則は,
$$V_0\sin\omega t=\bun{Q}{C}$$ですね。

連続方程式から,$I=\Bun{\dQ}{\dt}$ が成立するので,これに $Q=CV_0\sin\omega t$ を代入することで,
$$I=CV_0\cdot \bun{\d}{\dt}\left(\sin\omega t\right)$$が得られます。

$\bun{\d}{\dt}\left(\sin\omega t\right)=\omega \cos\omega t$ ですので,
$$I=\omega CV_0\cos\omega t$$として電流の瞬時値 $I$ を求めることができます。

式の整理

$\cos\omega t=\sin\left(\omega t +\bun{\pi}{2}\right)$ ですので,
$$I=\bun{V_0}{1/\omega C}\sin\left(\omega t +\bun{\pi}{2}\right)$$と整理できますね。

コンデンサーにかかる電圧と電流の関係

やはりわけて考える!

やはり「最大値同士の関係」と「位相同士の関係」をわけて考えるのがポイントです。

$V=V_0\sin\omega t$ の電圧がかかっているときに流れる電流が $I=\bun{V_0}{1/\omega C}\sin\left(\omega t +\bun{\pi}{2}\right)$ から,整理して考えていきましょう。

最大値同士の関係

電圧の最大値が $V_0$ のとき,電流の最大値は $I_0=\Bun{V_0}{1/\omega C}$ でした。

これを整理すると,$V_0=\Bun{1}{\omega C}I_0$ という形になります。この形から,「コンデンサーの抵抗値 $R$ に相当するもの」が,$\Bun{1}{\omega C}$ であることがわかりますね。

この「コンデンサーの抵抗値に相当する値」を 容量リアクタンス と呼びます。この容量リアクタンスを用いることで,最大値同士の間に「オームの法則の形」が成り立ちます。

位相の関係

電圧の瞬時値の位相が $\omega t$ のとき,電流の瞬時値の位相は $\omega t+\Bun{\pi}{2}$ でした。

これより,電流の位相は電圧の位相より $\Bun{\pi}{2}$ だけ進むことがわかります。

羽白

電流が先,電圧が遅れる,です!!コイルの逆ですね!

コンデンサーの電流と電圧の関係

コンデンサーの容量リアクタンスは $\bun{1}{\omega C}$ である。最大値についてはこのリアクタンスを用いて,オームの法則の形で考える。$V_0=\bun{1}{\omega C}I_0$ が成立する。

位相については,電流の位相が電圧の位相よりも $\Bun{\pi}{2}$ だけ進む。

例題

電気容量が $C$ のコンデンサーに,瞬時値が $I(t)=I_0\sin\omega t$ で表される電流が流れている。以下の問いに答えよ。

このコンデンサーにかかる電圧の瞬時値 $V(t)$ を求めよ。

このコンデンサーにおける消費電力の時間平均 $\overline{P}$ を求めよ。

最大値については,オームの法則の形から考える。コンデンサーの容量リアクタンスは $\Bun{1}{\omega C}$ なので,$V_0=\Bun{1}{\omega C}I_0$ として求めることができる。

電圧の位相は電流の位相よりも $\Bun{\pi}{2}$ だけ遅れる。電流の位相が $\omega t$ であるため,電圧の位相は $\omega t-\bun{\pi}{2}$ である。

以上から,
$$V(t)=\bun{I_0}{\omega C}\sin\left(\omega t-\bun{\pi}{2}\right)$$

$V(t)=\bun{I_0}{\omega C}\cos\omega t$ と整理できるので,時刻 $t$ における消費電力は,
$$P=V(t)I(t)=\bun{I_0\!^2}{\omega C}\sin\omega t\cos\omega t$$である。

ここで,$\sin\omega t\cos\omega t=\Bun{\sin2\omega t}{2}$ の時間平均は $0$ となるので,
$$\overline{P}=\bun{I_0\!^2}{\omega C}\overline{\sin\omega t\cos\omega t}=0$$

消費電力

コイルと同様,コンデンサーの消費電力の時間平均も $0$ です。

羽白

このこともしっかりと覚えておきましょう!

コンデンサーにおける消費電力

交流回路における,コンデンサーにおける消費電力の時間平均は $0$ となる。

-物理, 電磁気学