回路におけるコイルの振る舞い
突然の変化

皆さんは,突然終わる恋愛を経験したことがありますか…?
ずっと片想いだった相手が転校してしまったり,付き合っていた相手から突然別れを告げられてしまったり…。
気持ちの整理をするのが難しいことが大半かと思いますが,現実世界ではこのように「突然愛が変化すること」が多々あります。
電磁気の世界ではどうでしょうか?
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やはり電磁気の世界でも $I$ は突然変化してしまうものなのでしょうか?
突然の変化を妨げる!
そのような「突然の電流の変化」を妨げてくれるのがコイルです!
コイルのエネルギーについて学習した際に,「回路中のコイルが電流の変化を妨げる働きかけをするため,コイルの電流は連続的になだらかに変化する」という話をしましたね。
自己誘導によって,電流の変化を妨げるような向きに誘導起電力が生じるためでした。
このように,コイルを流れる電流 $I$ は必ず連続的に変化します。
現実世界の愛とは違って,コイルを含む回路の $I$ は必ず連続的に変化するのです。
よかったよかった。
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以上の話を踏まえて,コイルを含む回路の時間変化(過渡現象)について考えてみましょう。
過渡現象について
具体的な回路で
コンデンサーの過渡現象について学習した際と同様に,具体的な回路を用いて考えていきます。
図のように,起電力 $E$ の電池 $\rmE$,抵抗値 $R$ の抵抗 $\rmR$,自己インダクタンス $L$ のコイル $\rmL$ およびスイッチを接続します。
抵抗を右向きに流れる電流を $I$ とし,スイッチを $\mathrm{b}$ から $\mathrm{a}$ に切り替えた時刻を $t=0$ とします。

3つの過程にわけて順番に考えていきましょう。
スイッチを切り替えた直後
わかる情報から順番に整理していきます。真っ先に注目すべきポイントは「コイルの電流 $I$ は連続的に変化する」です。
スイッチを切り替える直前にコイルに流れていた電流は $0$ でしたので,スイッチを切り替えた直後も電流は $0$ のままです。
ということは,コイルと直列に繋がれている抵抗の電流も $0$ になります。このことから,抵抗の電圧が $0$ であることがわかりますね。
しかし,そのままずっと電流が $0$ であるわけではありません。徐々に連続的に増加していきます。
つまり,電流の増加率 $\bun{\dI}{\dt}\mskip 5mu$ は $0$ ではありませんので,コイルには電圧 $L\mskip 6mu\bun{\dI}{\dt}\mskip 5mu$ が生じることになりますね。
以上を踏まえて整理した回路図が次の通りです。
キルヒホッフの第二法則から,
$$E=L\mskip 6mu\bun{\dI}{\dt}\mskip 5mu \qquad \therefore \quad\mskip 6mu\bun{\dI}{\dt}\mskip 5mu=\mskip 4mu\bun{E}{L}\mskip 5mu$$
が得られますね。
スイッチ操作の直後
コイルの電流は連続的に変化するため,スイッチ操作の直前と等しい。特に,もともと回路に電流が流れていない場合には,スイッチ操作の直後も電流は $0$ のままである。
以上を踏まえて,キルヒホッフの法則を用いて回路の解析を行う。
変化の過程

電流が変化する途中経過について考えましょう。
話の流れはコンデンサーの過渡現象と同様ですので,そちらのページも参照しながら読み進めて下さい!
回路の様子は次図の通りです。
キルヒホッフの第二法則から,
$$E=RI+L\mskip 6mu\bun{\dI}{\dt}\mskip 5mu \qquad \stext{……①}$$
が成立します。

この式の形!!どこかで見覚えがありませんか…??
コンデンサーの過渡現象のときにも登場した「空気抵抗を考慮した落下運動の運動方程式」ですね!
力の作用図は上の通りで,鉛直下向きの運動方程式は,
$$ma=mg-kv$$
でした。$a=\mskip 4mu\bun{\dv}{\dt}\mskip 5mu$ を用いて,式を整理すると,
$$mg=kv+m\mskip 6mu\bun{\dv}{\dt}\mskip 5mu \qquad \stext{……②}$$
です。
①式と対応していますね!
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②式から得られる $v-t$ グラフの概形は次図の通りでした。
よって,①式から得られる電流 $I$ の時間変化を表すグラフもこれと同様の形になるはずです。
$t=0$ のとき,$\bun{\dI}{\dt}\mskip 5mu=\mskip 4mu\bun{R}{L}\mskip 5mu$ であることは①で既に求めました。よって,$t=0$ におけるグラフの傾きは $\bun{R}{L}\mskip 5mu$ であることがわかります。
終端速度 $v_f$ に対応する $I$ の値はどうなるでしょうか…?
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コンデンサーの過渡現象と同様に,③の手順で求めるのが最もシンプルですが,2つの式の対応関係から考えてもokです。
文字の対応関係から,
$$mg=E,\quad k=R,\quad m=L$$
が成り立つものと考えることができます。よって,終端速度 $v_f=\mskip 4mu\bun{mg}{k}\mskip 5mu$ に対応する値は,
$$\bun{mg}{k}\mskip 5mu=\mskip 4mu\bun{E}{R}\mskip 5mu$$
として求まりますね。
十分に時間が経過した後
十分に時間が経過すると,それ以上変化が起こらない定常状態に至ります。
電流も一定の値で流れ続けて変化しない状態に至るので,$\bun{\dI}{\dt}\mskip 5mu=0$ が成り立ちます。これより,コイルの電圧が $0$ となることがわかりますね。
以上を整理して回路図をかくと,次の通りになります。
キルヒホッフの第二法則から,
$$E=RI \qquad \therefore \quad I=\mskip 4mu\bun{E}{R}\mskip 5mu$$
が得られます。②で2式の対応から求めた値と一致していますね!
十分に時間が経過した後
コイルに流れる電流が一定となるため,$\bun{\dI}{\dt}\mskip 5mu=0$ が成立する。すなわち,コイルにかかる電圧は $0$ になる。

コンデンサーの過渡現象と同じじゃんと思ったあなた!その通り!
類似点が非常に多いので,しっかりと関連付けて内容を理解しておきましょう。
コンデンサーの過渡現象でも述べましたが,とっても差が付きやすいです!!