物理 電磁気学

回路におけるコイル②

羽白 いむ

東京大学医学部医学科卒 現役医師
東大指導専門塾鉄緑会 物理・数学科元講師
物理基礎のトリセツ著者
数学のトリセツ共著者

問題における特徴

しつこいようですが…。

前のページでも述べましたが,とにかく差がつきます!

解ける人はすぐに解ける,解けない人はいくら考えても解けないからです。

羽白

しっかり練習して得意分野にしておきましょう!

問題へのアプローチ

例題を通じて

それでは,問題演習です!

例題

図のように,抵抗値がそれぞれ $R_1,\,R_2$ の抵抗器 $\rmR_1$,$\rmR_2$,自己インダクタンスが $L$ のコイル $\rmL$,起電力が $E$ の電池 $\rmE$ およびスイッチが接続された回路を考える。はじめ,スイッチは開いているものとする。各抵抗を流れる電流は,図の右向きを正として,以下の問いに答えよ。

物理998

スイッチを閉じた直後,抵抗 $\rmR_1,\,\rmR_2$ に流れる電流 $I_1,\,I_2$ を求めよ。

スイッチを閉じてから十分に時間が経過した後,抵抗 $\rmR_1,\,\rmR_2$ に流れる電流 $I_1\prime ,\,I_2\prime $ を求めよ。

(2)の後,スイッチ $\rmS$ を再び開く。スイッチを開いた直後に抵抗 $\rmR_1$ に流れる電流 $I_3$ を求めよ。

(3)の後,十分に時間が経過するまでに抵抗で消費される電力を求めよ。

スイッチを閉じた直後なので,コイルに流れる電流は $0$ のままである。よって,$I_2=0$ であり,抵抗 $\rmR_2$ の電圧は $0$ となる。

以上から,回路の様子は次の通り。

物理999

よって,キルヒホッフの第二法則より,

$$R_1I_1=E,\quad L\bun{\dI_2}{\dt}=E$$

が成立する。したがって,

$$I_1=\bun{E}{R_1}$$

十分に時間が経過すると,コイルに流れる電流は一定となる。よって,コイルにかかる電圧は $0$ である。

回路の様子は次の通り。

物理1000

キルヒホッフの第二法則より,

$$R_1I_1\prime =E,\quad R_2I_2\prime =E$$

が成立するので,これを整理して,

$$I_1\prime =\bun{E}{R_1},\quad I_2\prime =\bun{E}{R_2}$$

スイッチを開いたことで,電池は回路から切り離されたものと考えられるため,必要部分のみ取り出した回路図で考える。

スイッチを開いた直後,コイルに流れる電流 $I_4$ は直前と等しく,$I_4=\Bun{E}{R_2}$ である。

抵抗 $\rmR_2$ を右向きに流れる電流 $I_4$ は,そのまま抵抗 $\rmR_1$ を左向きに流れる。

物理1001

$I_3$ は右向きを正の向きとしているため,

$$I_3=-\Bun{E}{R_2}$$

補足

本問では問われていないが,キルヒホッフの第二法則より,

$$L\bun{\dI_4}{\dt}+R_1I_4+R_2I_4=0$$

が成立する。これより,

$$\bun{\dI_4}{\dt}=-\bun{(R_1+R_2)E}{LR_2}<0$$

が成り立ち,スイッチ操作の直後から抵抗 $\rmR_2$ を流れる電流が減少しはじめることがわかる。

スイッチを開いてから十分時間が経過したとき,抵抗 $\rmR_1$ に流れる電流を $I_3\prime $,抵抗 $\rmR_2$ に流れる電流を $I_4\prime $ とする。

コイルに流れる電流は一定になるため,$L\Bun{\dI_3\prime }{\dt}=0$ である。

回路の様子は次の通り。

物理1002

キルヒホッフの第二法則より,

$$R_1I_3\prime =R_2I_4\prime $$

が成立する。$I_3\prime =-I_4\prime $ であることに注意すると,$I_3\prime =I_4\prime =0$ であることがわかる。よって,回路に流れる電流は $0$ である。

回路のエネルギー保存則より,抵抗で消費された電力はコイルに蓄えられていたエネルギーの変化に等しいため,

$$\bun12LI_4\!^2=\bun{LE^2}{2R_2\!^2}$$

-物理, 電磁気学