ファラデーの電磁誘導の法則
物理基礎の確認

物理基礎で,電磁誘導の現象について学びました。
「ループ内部の磁場が変化すると,その変化を打ち消すような誘導起電力が生じる」というものでしたね。
この電磁誘導について,これまでに学習してきた内容を踏まえてさらに理解を深めていきましょう。
「変化」が重要!
物理基礎では「磁場が変化する」と説明しましたが,本来は「磁束 $\varPhi$ が変化する」と考える必要があります。
図のようなループがあり,そのループを貫く上向きの磁束が $\varPhi$ であるとしましょう。
このとき,回路に生じる誘導起電力の大きさは,
$$V=\left|\bun{d\varPhi}{\dt}\mskip 5mu\right|$$として求めることができます。
言葉で表現すると,「ループに生じる誘導起電力の大きさは,ループの磁束の変化率の大きさに等しい」ということですね。
微分で表現されていることからも,「変化」が重要であり,ループの磁束が変化していないときには誘導起電力が生じないことがわかります。
磁束の変化
また,$\varPhi=BS$ という関係式がありました。ループを貫く磁束は,ループの面積と磁束密度によって決まります。
よって,「磁束が変化する状況」は,「ループ内の磁束密度 $B$ が変化したとき」もしくは「ループの面積が変化したとき」の2通りで考えることができます。
向きの考え方
誘導起電力の向きは,「変化を嫌う」という点を元に考えましょう。図のループで上向きの $\varPhi$ が増加した場合について考えてみます。

この変化を妨げるために,下向きの磁場を作るような働きかけが生じます。
そのためにはループに時計回りの誘導電流が流ればよいため,図のような向きの誘導起電力が生じることがわかりますね。
このとき,導線をたどって $\rmB$ 点から $\rmA$ 点に向かう際に電圧の三角形を上ることになりますので,$\rmA$ 点側が高電位となります。
ファラデーの電磁誘導の法則
ループを貫く磁束 $\varPhi$ が変化したとき,ループには大きさが $V=\left|\bun{d\varPhi}{\dt}\mskip 5mu\right|$ の誘導起電力が生じる。
誘導起電力の向きは,磁束の変化を打ち消す向きとして考える。
例題
抵抗値の無視できる導線に,時計回りの電流が流れている。この電流の大きさが減少したとき,$\rmA$ 点と $\rmB$ 点のどちらが高電位となるか答えよ。
回路に流れる電流によって,ループ内には下向きの磁束が生じている(右ねじの法則)。
電流の大きさが減少するとこの磁束も減少するため,ループには下向きの磁束を発生させるような働きかけが生じる。
ループに下向きの磁束を発生させるためには,時計回りの電流が流ればよいため,時計回りの誘導電流を流すような誘導起電力が発生する。
このとき図より,$\rmA$ 点側が高電位となることがわかる。
向きも含めた電磁誘導の議論
別々だと面倒なことも
誘導起電力を求める際には,$V=\left|\bun{d\varPhi}{\dt}\mskip 5mu\right|$ の式から誘導起電力の大きさを求め,「変化を嫌う」という原則から向きを考えました。
このように,大きさと向きを別々に考えてもよいのですが,この方法だと非常に面倒になってしまうこともあります。

たとえば回路を貫く磁束の向きが変化するような場合ですね。
このような場合には,誘導起電力の向きを含めた符号付きの議論を行うと便利です。
考え方の手順
まず,ループを貫く磁束 $\varPhi$ の正の向きを決めます。
今回は次図のように,上向きを正の向きとしましょう。
次に,誘導起電力の向きを右ねじの法則から決定します。
磁束の正の向きに親指を向けたとき,残りの4本指がまわる向きを誘導電流の正の向きとし,この向きの誘導電流を流す誘導起電力の向き(つまり反時計回り)を正の向きとして定めます。
今回は,反時計回りの誘導電流が正の向きとなりますので,誘導起電力も反時計回りの向きが正の向きになります。
向きを含めた議論
まずはこのように,磁束の正の向きを決めて,右ねじの法則から機械的に誘導起電力の正の向きを定めます。
図のループにおいて磁束 $\varPhi$ が増加したとき,実際に生じる誘導起電力の向きは,時計回りに誘導起電力を流す向きになります。

先ほど定めた向きとは逆向きになっていますね。
よって符号付きで考えるにあたっては,逆向きを表すマイナスを付けて,
$$V=-\mskip 6mu\bun{d\varPhi}{\dt}\mskip 5mu$$とすれば ok です。
符号付きで考える誘導起電力
ループを貫く磁束 $\varPhi$ の正の向きを定め,右ねじの法則から誘導起電力 $V$ の正の向きを決定したとき,
$$V=-\mskip 6mu\bun{d\varPhi}{\dt}\mskip 5mu$$
として求めることができる。