物理 電磁気学

誘導起電力の求め方

羽白 いむ

東京大学医学部医学科卒 現役医師
東大指導専門塾鉄緑会 物理・数学科元講師
物理基礎のトリセツ著者
数学のトリセツ共著者

誘導起電力の具体的な求め方

実際の回路で

さて,これまでの話を踏まえて実際の回路において誘導起電力を求めてみましょう。

羽白

図のような長方形の回路について考えます。

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右側の部分は右向きに速度 $v$ で動く導体棒になっているものとします。

また,回路の縦幅を $l$,左端から導体棒の位置までの距離を $x$ とし,回路には紙面奥向きに磁束密度 $B$ の磁場がかけられているものとします。

この回路に生じる誘導起電力を求めてみましょう!

生徒

2通りの方法がありますが,どちらも非常に重要ですので確実に理解して下さい!

回路の $\varPhi$ を求めて,$t$ で微分する方法

羽白

単純に回路の $\varPhi$ を求めてしまおう,という方法です。

回路の磁束密度は紙面奥向きに $B$,回路の面積は $S=lx$ で表されるので,
$$\varPhi=SB=lxB$$ですね。

あとはこれを微分すればよいわけですが,導体棒の位置が $x$,速度が $v$ で表されていることから,$\Bun{\dx}{\dt}\mskip 5mu=v$ であることに気をつけましょう。

$l$ と $B$ は時間変化しない定数ですので,
$$V=\left|\bun{d\varPhi}{\dt}\mskip 5mu\right|=\left|l\cdot\mskip 6mu\bun{\dx}{\dt}\mskip 5mu\cdot B\right|=lvB$$として誘導起電力の大きさを求めることができます。

向きは「変化を妨げる」という原則から考えましょう。

導体棒が動くことで回路の面積が大きくなるので,紙面奥向きの磁束が増えます。するとこれを妨げるために,紙面手前向きの磁束を作るような働きかけが生じます。

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そのためには回路に反時計回りの電流が流ればよいため,この誘導電流を流す向きに誘導起電力が生じることになります。

$d\varPhi$ を $\dt$ で表す方法

羽白

回路の磁束密度 $B$ 自体は変化せず,面積が変化する状況です。

まずは微小時間 $\dt$ の間の面積変化 $\dS$ について考えましょう。

導体棒の速度は $v$ ですので,時間 $\dt$ の間に $v\dt$ だけ移動します。

このときの回路の面積の変化 $\dS$ は,図のグレーの部分の面積になりますね。

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長方形の面積を考えることで,
$$\dS=l\cdot v\dt=lv\dt$$であることがわかります。

回路の磁束 $\varPhi$ の変化 $\d\varPhi$ は,この $\dS$ の面積の部分を貫く磁束に等しくなりますので,
$$d\varPhi=B\dS=lvB\dt$$として計算できます。

これを整理することで,
$$\bun{d\varPhi}{\dt}\mskip 5mu=lvB$$が得られます。

誘導起電力の大きさは,$\left|\bun{d\varPhi}{\dt}\mskip 5mu\right|=lvB$ ですね。

羽白

誘導起電力の向きは,最初の方法と同様,「変化を妨げる向き」として求めれば ok です。

動く棒の考え方

よくあるパターン

羽白

$d\varPhi$ を $\dt$ で表す方法について,もう少し整理して考えてみましょう。

結論は「棒が速度 $v$ で動いたことで,$lvB$ の誘導起電力が発生した」というものでした。

$lvB$ という値は,「導体棒が単位時間に横切る磁束」を表しています。

「$d\varPhi$ を $\dt$ で表す方法」でも,導体棒が通過した領域を貫く磁束を考えましたよね。

「横切る」

重要なのは,「導体棒が横切っていること」です。

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たとえば上図における導体棒の速度が下向きに $v$ だったらどうでしょう?

羽白

導体棒は磁束線の間をすり抜けるだけで,横切らないですよね。

導体棒が通過する領域は直線になってしまい,通過領域を貫く磁束を考えることがそもそもできませんよね。よって,誘導起電力も生じません。

誘導起電力を正しく求める方法

「導体棒が単位時間に横切る磁束」を正しく求めるためには,「単位時間の間に導体棒が通過した領域を図示して,その領域を貫く磁束を求める」という方法が確実です。

この方法をしっかりと使いこなせるようになりましょう。

向きを考える方法

羽白

また,誘導起電力の向きについても簡便な方法があります。

導体棒上に存在する正の電荷について考えてみましょう。この電荷は,導体棒とともに図の右向きに動いていきます。

「荷電粒子が磁場中を動いている」という状況ですので,ローレンツ力が発生しますね。フレミングの左手の法則から,図の上向きに作用することがわかります。

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これより「導体棒が動いたことで,導体棒内の正の電荷が上向きに力を受けて流れる」ことがわかります。

これは「上向きの電池が発生して上向きの電流を流した」ことと同じですので,誘導起電力の向きは導体棒の上向きに電流を流す向きとして求めることができるのです。

磁場中を動く導体棒

磁場中を導体棒が動くと電池になる(誘導起電力が発生する)。その大きさは,導体棒が単位時間に横切る磁束に等しい。

電池の向きは,導体棒上の正の電荷が受けるローレンツ力を元にして求める。

例題

紙面手前向きに磁束密度 $B$ の磁場がかけられた領域において,図の向きに長さ $l$ の棒が速度 $v$ で動いている。このとき,導体棒に生じる誘導起電力の大きさを求めよ。また,$\rmA$ 点と $\rmB$ 点のいずれが高電位となるか答えよ。

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単位時間の間に,導体棒は $v$ だけ移動する。通過領域を図示すると次図の通りになる。

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この領域の面積は $\bun{1}{\sqrt2}\mskip 5mulv$ である。よって,この領域を貫く磁束は紙面手前向きに,$\Bun{1}{\sqrt2}\mskip 5mulvB$ として求められる。これが誘導起電力の大きさに等しい。

誘導起電力の向きは導体棒上の正の電荷が受けるローレンツ力の向きから考える。

棒上の正の電荷は,図の向きのローレンツ力を受け,導体棒上を下向きに移動する。よって,下向きに誘導電流が流れると考えられるため,誘導起電力は $\rmB$ 点側が高電位となる。

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