くさびガラス
くさびガラスとは

引き続き,光波の干渉について考えていきましょう。
2枚のガラスの板を用意してこれを重ね,片端にだけ紙をはさみます。
大げさに状況をまとめると次図の通りです。
ガラス板の間に,薄いくさび状の空気の層ができますね。
.png)
紙は実際には薄いので,ガラス板の間にできる空気の層も非常に狭いものだと思ってください。
この空気層に向けて,真上から単色光を入射します。すると,上のガラスの下面で反射された光(光①)と,下のガラスの上面で反射された光(光②)が真上に進んでいき,これらが重なることで干渉が起こります。
状況の整理
まずは次図のように座標,長さ,角度を設定します。
これまでと同様に,干渉する2つの光の経路差を考えましょう。
光① と光② の経路を図で比較すると,光② が空気層1往復分$(=2y)$ だけ長く進んでいることがわかりますね。
これより,強め合いの条件は,$2y=m\lambda$ となりそうですが,実際にはそうではありません…!

なぜだかわかりますか…?
反射による位相のずれ
原因は「反射」!
ポイントは「光が途中で反射している」ということです。
反射には2種類ありましたよね。
.png)
自由端反射と固定端反射です。このうち,固定端反射では山と谷がひっくり返るため注意が必要です。
山と谷が $180\Deg$,つまり $\pi$ だけひっくり返ることになるので,位相が $\pi$ ずれると表現します。
光波における反射
光波における反射では,「屈折率がより大きい物質との境界面で反射が起こると,固定端反射となる(位相が $\pi$ ずれる)」というルールがあります。
たとえば上図のように,屈折率が小さな上側の物質中を進んできた光が境界で反射されたときに位相が $\pi$ ずれます。
一方,屈折率の大きな下側の物質中を進んできた光が反射される際には位相がずれません。
合計のズレ
干渉条件を考える際には,注目している2つの光の反射について確認し,合計でどれだけ位相がずれるかを計算します。
固定端反射が2回起こると,合計のずれは $2\pi$ になりますが,これは1周して元に戻ることになりますので「反射による位相のずれはなし」として考えます。

結局は,以下の通りにまとめられます。
反射による位相のずれ
屈折率がより大きい物質との境界面で反射が起こると,固定端反射となる(位相が $\pi$ ずれる)。
固定端反射が偶数回起こると,反射による合計の位相のずれは $0$,奇数回起こると合計の位相のずれは $\pi$ となる。
反射による位相のずれが全体で $\pi$ になる場合には,強め合いの条件式と弱め合いの条件式を逆にして考えればokです。
くさびガラスの干渉の結論
反射による位相のズレ

以上を踏まえて,くさびガラスに話を戻しましょう。
空気の屈折率は $1$,ガラスの屈折率は $n\ (>1)$ であるものとします。
光① は「ガラス→空気」の境界面での反射なので,位相のずれはありません。
一方,光② は「空気→ガラス」の境界面における反射なので,位相が $\pi$ ずれます。
よって,反射による合計の位相のずれは $0+\pi=\pi$ であり,強め合いの条件は,
$$2y=\left(m+\mskip 4mu\bun12\right)\lambda\quad\stext{\hspace{-.5em}($m$ は $0$ 以上の整数)}$$
となるのです。
幾何学的な計算
なお,図から,
$$\tan\theta=\mskip 4mu\bun{y}{x}\mskip 5mu=\mskip 4mu\bun{d}{L}\mskip 5mu\qquad\therefore \quad y=d\mskip 6mu\bun{x}{L}\mskip 5mu$$
であることがわかるのでこれを代入して整理すると,$m$ 番目の明線の位置 $x_m$ は,
$$x_m=\left(m+\mskip 4mu\bun12\right)\mskip 6mu\bun{L\lambda}{2d}\mskip 5mu$$
として求まります。
これより,明線間隔は,
$$\varDelta x=x_{m+1}-x_m=\mskip 4mu\bun{L\lambda}{2d}\mskip 5mu$$
であることがわかりますね。

この結論は暗記しなくてokです。図をかいて速やかに導けるようにしておきましょう。
例題
くさびガラスを上から眺めた場合と下から眺めた場合を比較したとき,明線と暗線の位置関係について述べよ。
解き方
上から眺めた場合はこれまで考えた通りです。
下から眺めた場合は,「反射せずにそのままガラスを透過してきた光」と,「図の2箇所で反射して下側に到達する光」の2つの光の干渉を考えることになります。
後者の光は2回反射が起こりますが,いずれの反射でも位相が $\pi$ ずれることが図からわかりますね。
よって,合計の反射による位相のずれは,$0$ になります。
同じ場所で考えているので,空気層の厚さ$y$ は変わりません。よって,強め合いの条件は,
$$2y=m\lambda$$
となります。
上下からの干渉縞の関係
この「$2y=m\lambda$」の式は,上から眺めた場合は弱め合いの条件式でしたね。
つまり,上から眺めた場合と下から眺めた場合とでは,強め合い・弱め合いの条件式がちょうど逆転していることがわかります。
よって,「明線・暗線の位置がちょうど逆になるような干渉縞が観察される」というのが正解です。
エネルギーに注目すると
ちなみに上の例題ですが,「上から眺めても下から眺めても真っ暗」という場所があったら不思議じゃないですか…?
上側から光を入射しているのに,どちらから見ても真っ暗だと「入射した光のエネルギーはどこへいってしまったんだ…?」という問題が発生します。
このように,光のエネルギーに注目すると「明線・暗線の位置がちょうど逆になるような干渉縞が観察される」という結論は納得しやすいのではないでしょうか。