回折格子
回折格子とは
ヤングの実験では,複スリットを用いて考えました。
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一方,ガラス板に平行なスリットを等間隔にたくさん($1000$ 本以上!)並べたものを回折格子と呼びます。
スリットの間隔 $d$ は,格子定数と呼ばれます。
干渉縞について

単色光をこの回折格子に入射し,通過した光をスクリーン上に当てるとどのような干渉縞ができるかを考えていきましょう。
スリットの数が増えるものの,考え方はヤングの実験と似ています。ガラス板付近を拡大した図で考えます。
スリットは実際には無数に並んでいますが,そのうち4つのスリットに注目し,上から順に $\rmS_1$,$\rmS_2$,$\rmS_3$,$\rmS_4$ と名前を付けています。
これらのスリットそれぞれを光が通過し,回折してスクリーンに届くのですが,そのうち図のように $\theta$ の方向へ進む光に注目します。
2つの光に注目して
まずは $\rmS_1$,$\rmS_2$ を通過する光について,強め合いの条件を考えてみましょう。
この2つの光についてであれば,ヤングの実験と全く同様に考えることができるため,経路差 $\varDelta L$ は $\overline{S_2H}$ に等しく,図から $d\sin\theta$ と求めることができますね。
よって,強め合いの条件式は,
$$d\sin\theta=m\lambda$$
となります。
全体の考察

続いて,$\rmS_2$,$\rmS_3$ を通過する光についても同様に考えます。
この2つの光についても,先程と全く同じ図で考えることができるため,やはり経路差は $\varDelta L=d\sin\theta$ ですね。よって,強め合いの条件式も $d\sin\theta=m\lambda$ で先ほどと全く同じです。
つまり,$d\sin\theta=m\lambda$ が満たされているとき,$\rmS_1$,$\rmS_2$,$\rmS_3$ から届く光はいずれも位相がそろうため,いずれの光も強め合うことになります。
全く同様に考えれば,この3つのスリット以外からスクリーンに届く光も全て強め合うことがいえますね。
回折格子を通過する全ての光(何千本もの光!)が強め合うので,スクリーン上には明るい明線が観察されます。
ヤングの実験と回折格子の違い
明るさの変化
ヤングの実験は,2本の光のみに注目して考えました。
それゆえ弱め合いの条件は $\varDelta L=\left(m+\mskip 4mu\bun12\right)\lambda$ であり,明線と暗線の間はなだらかに明るさが変化するのが特徴でした。

一方で,回折格子はどうでしょう?
$\rmS_1$,$\rmS_2$ からスクリーンに届く光が弱め合いの条件 $\varDelta L=\left(m+\mskip 4mu\bun12\right)\lambda$ を満たしているとします。
このとき,「$\rmS_1$,$\rmS_2$ からの光」がペアで打ち消し合い,「$\rmS_3$,$\rmS_4$ からの光」がペアで打ち消し合い…,というように,隣同士のスリットからの光がそれぞれ打ち消し合いますね。結果として,スクリーン上は暗くなります。
では,$d\sin\theta=m\lambda$ から少しだけ角度がずれた方向ではどうなるでしょうか…?
無数の光がスクリーンに届き,位相がバラバラの光が無数に重ね合わさり,全体としてみると打ち消し合ってしまうため,スクリーン上は暗くなります。
このように,「$d\sin\theta=m\lambda$ の方向以外は全て弱め合い!スクリーン上は暗くなる!」と考えることができます。

明暗がなだらかに変化するヤングの実験とは大きく異なりますね。
弱め合いの条件をあえて表現するのであれば,$d\sin\theta\ne m\lambda$ ということになります。
回折格子
$d\sin\theta=m\lambda$ が満たされる方向で強め合い,スクリーン上に明線ができる。
それ以外の全ての方向では弱め合うため,スクリーン上は暗くなる。
問題へのアプローチ
例題
格子定数が $d$ の回折格子に,波長が $\lambda$ の単色光を入射すると,回折光が観測された。回折格子に垂直な方向から図の通りに入射光の角度 $\theta_0\ (>0)$ および回折光の角度 $\theta\ \left(-\mskip 6mu\bun{\pi}{2}\mskip 5mu<\theta<\bun{\pi}{2}\mskip 5mu\right)$ を定めるものとし,以下の設問に答えよ。
$\theta_0=0$ のとき,$\theta$ が満たすべき条件を求めよ。
$\theta_0\ne0$ のとき,$\theta$ が満たすべき条件を求めよ。
考え方
各スリットを通過した光は回折することで様々な方向に広がっていきますが,強め合いの条件が満たされる方向以外では互いに打ち消し合ってしまいます。
よって,「強め合いの条件が満たされる方向のみに光が回折して進む」と考えるのが一般的です。
(1) の解き方
通常の回折格子と同様に考えることができるため,求める条件(強め合いの条件)は,
$$d\sin\theta=m\lambda\quad\stext{\hspace{-.5em}($m$ は整数)}$$
となります。

問題文の条件から,$\theta<0$ の場合もあるため,$m$ も負の値を取りうることに注意してください。
それゆえ,「$m$ は $0$ 以上の整数」ではなく,「$m$ は整数」としています。
(2) の解き方
回折格子に斜めに入射するため,回折格子の手前でも経路差が生じます。図をかいて整理していきましょう。
隣り合う2つのスリット $\rmS_1$,$\rmS_2$ を通る光について考えます。
回折格子を通過した後は (1) と同様に考えることができるので,$\rmS_2$ を通過する光が通る経路の方が $\overline{\rmS_2\rmH_2}=d\sin\theta$ だけ長いですね。
一方,回折格子に達する手前では,$\rmS_1$ を通る光が進む経路の方が長くなっています。$\overline{\rmS_1\rmH_2}=d\sin\theta_0$ だけ長いことが図からわかりますね。
これらを合わせると,2つの光の経路差は,
$$\varDelta L=d\sin\theta-d\sin\theta_0$$
として求まりますので,強め合いの条件は,
$$d\sin\theta-d\sin\theta_0=m\lambda\quad\stext{\hspace{-.5em}($m$ は整数)}$$
としてまとめることができます。