波動 物理

y(x, t)の求め方

羽白 いむ

東京大学医学部医学科卒 現役医師
東大指導専門塾鉄緑会 物理・数学科元講師
物理基礎のトリセツ著者
数学のトリセツ共著者

yxy-x グラフを利用した y(x,t)y(x,\,t) の求め方

波を巻き戻す

羽白

さて,ここまでの話を踏まえていよいよ y(x,t)y(x,\,t) を求めていきましょう!

「波を巻き戻す」という考え方を用いるのですが,正弦波だとややこしくなるため,xx 軸正の向きに速さ vv で進むパルス波で考えていきます。

まず,求めたいものを確認しましょう。

生徒

「時刻 tt における,位置 xx の媒質の変位 y(x,t)y(x,\,t) 」ですね。時刻 tt における yxy-x グラフが次図の通りであるとき,図中に明示した位置 xx の媒質の変位が求める y(x,t)y(x,\,t) です。

これまでの知識の活用

「時刻も tt だし,位置も xx だしどうしよう…」となってしまいますね。しかしこれまでに学習した内容から,「時刻 t=0t=0 における各媒質の変位を表す式 y(x,0)y(x,\,0) (時刻 t=0t=0 における yxy-x グラフの式)」や「原点( x=0x=0 )の媒質の,時刻 tt における変位を表す式 y(0,t)y(0,\,t) (原点の媒質の yty-t グラフの式)」であれば,皆さんは求める方法を知っています。

つまり,「時刻 tt もしくは位置 xx のいずれかを 00 にすることができれば,変位を求めることができるのです!

ということで,時間もしくは位置を巻き戻して考えます。まずは時間を巻き戻す方法から確認していきます。

時間を巻き戻して時刻を t=0t=0 にするためには,tt だけ時間を巻き戻す必要があります。時間を巻き戻すと,波形も逆再生されて戻っていきます。

羽白

波の速さは vv ですので,vtvt だけ位置が巻き戻されますね。

求めたかった位置 xx の媒質の変位 yy に対応するのは,位置 xvtx-vt の媒質の変位であることが図からわかります。

つまり,「時刻 tt の位置 xx における媒質の変位 y(x,t)y(x,\,t) は,時刻 t=0t=0 の位置 xvtx-vt における媒質の変位 y(xvt,0)y(x-vt,\,0) に等しい」ということです!

数式だと,y(x,t)=y(xvt,0)y(x,\,t)=y(x-vt,\,0) と表現できますね!

y(x,0)y(x, 0) の利用

正弦波においては y(x,0)=Asin(2πxλ+φ)y(x,\,0)=A\sin\left( 2\pi\bun{x}{\lambda}+\varphi \right) でした。この xxxvtx-vt に変えたものが y(xvt,0)y(x-vt,\,0) ですので,

y(xvt,0)=Asin(2πxvtλ+φ)y(x-vt,\,0)=A\sin\left( 2\pi\bun{x-vt}{\lambda}+\varphi \right)であることがわかります。

ここで,v=fλv=f\lambda および f=1Tf=\Bun{1}{T} を利用することで,

y(x,t)=y(xvt,0)=Asin{2π(xλtT)+φ}y(x,\,t)=y(x-vt,\,0)=A\sin\left\{2\pi\left(\bun{x}{\lambda}-\bun{t}{T}\right)+\varphi\right\}と整理することができます。

長かったですが,無事 y(x,t)y(x,\,t) を求めることができました!

負の向きに進む場合

波が xx 軸負の向きに進む場合には vvv-v に書き換えて考えれば ok です。y(x,t)=y(x+vt,0)y(x,\,t)=y(x+vt,\,0) となりますね。符号が変わるだけですので,

y(x,t)=Asin{2π(xλtT)+φ}y(x,\,t)=A\sin\left\{2\pi\left(\bun{x}{\lambda}-\bun{t}{T}\right)+\varphi\right\}です。

yty-t グラフを利用した y(x,t)y(x,\,t) の求め方

位置を巻き戻す

羽白

同様の手順で,位置を巻き戻す方法も確認しましょう。

注目している媒質の位置 xx が原点に戻ってくるまで波形を巻き戻します。

原点から位置 xx まで波が進むのにかかる時間は xv\bun{x}{v} ですので,時間を xv\bun{x}{v} だけ巻き戻せば ok ですね。時刻 tt から xv\Bun{x}{v} だけ巻き戻すので,時刻は txvt-\Bun{x}{v} になります。

求める y(x,t)y(x,\,t) は,この時刻における原点の媒質の変位と等しくなります。つまり,「時刻 tt の位置 xx における媒質の変位 y(x,t)y(x,\,t) は,時刻 txvt-\Bun{x}{v} の原点における媒質の変位 y(0,txv)y\left( 0,\,t-\bun{x}{v} \right) に等しい」ということです!

数式で表現すると,y(x,t)=y(0,txv)y(x,\,t)=y\left( 0,\,t-\bun{x}{v} \right) ですね!

t(x,t)t(x,\,t) の求め方

時間もしくは位置を巻き戻して考える。このとき,

y(x,t)=y(xvt,0)=y(0,txv)y(x,\,t)=y(x-vt,\,0)=y\left( 0,\,t-\bun{x}{v} \right)が成立する。

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