y−x グラフを利用した y(x,t) の求め方
波を巻き戻す

羽白
さて,ここまでの話を踏まえていよいよ y(x,t) を求めていきましょう!
「波を巻き戻す」という考え方を用いるのですが,正弦波だとややこしくなるため,x 軸正の向きに速さ v で進むパルス波で考えていきます。

生徒
「時刻 t における,位置 x の媒質の変位 y(x,t) 」ですね。時刻 t における y−x グラフが次図の通りであるとき,図中に明示した位置 x の媒質の変位が求める y(x,t) です。
これまでの知識の活用
「時刻も t だし,位置も x だしどうしよう…」となってしまいますね。しかしこれまでに学習した内容から,「時刻 t=0 における各媒質の変位を表す式 y(x,0) (時刻 t=0 における y−x グラフの式)」や「原点( x=0 )の媒質の,時刻 t における変位を表す式 y(0,t) (原点の媒質の y−t グラフの式)」であれば,皆さんは求める方法を知っています。
つまり,「時刻 t もしくは位置 x のいずれかを 0 にすることができれば,変位を求めることができるのです!
ということで,時間もしくは位置を巻き戻して考えます。まずは時間を巻き戻す方法から確認していきます。
時間を巻き戻して時刻を t=0 にするためには,t だけ時間を巻き戻す必要があります。時間を巻き戻すと,波形も逆再生されて戻っていきます。

羽白
波の速さは v ですので,vt だけ位置が巻き戻されますね。
求めたかった位置 x の媒質の変位 y に対応するのは,位置 x−vt の媒質の変位であることが図からわかります。
つまり,「時刻 t の位置 x における媒質の変位 y(x,t) は,時刻 t=0 の位置 x−vt における媒質の変位 y(x−vt,0) に等しい」ということです!
数式だと,y(x,t)=y(x−vt,0) と表現できますね!
y(x,0) の利用
正弦波においては y(x,0)=Asin(2πλx+φ) でした。この x を x−vt に変えたものが y(x−vt,0) ですので,
y(x−vt,0)=Asin(2πλx−vt+φ)であることがわかります。
ここで,v=fλ および f=T1 を利用することで,
y(x,t)=y(x−vt,0)=Asin{2π(λx−Tt)+φ}と整理することができます。
長かったですが,無事 y(x,t) を求めることができました!
負の向きに進む場合
波が x 軸負の向きに進む場合には v を −v に書き換えて考えれば ok です。y(x,t)=y(x+vt,0) となりますね。符号が変わるだけですので,
y(x,t)=Asin{2π(λx−Tt)+φ}です。
y−t グラフを利用した y(x,t) の求め方
位置を巻き戻す

羽白
同様の手順で,位置を巻き戻す方法も確認しましょう。
注目している媒質の位置 x が原点に戻ってくるまで波形を巻き戻します。
原点から位置 x まで波が進むのにかかる時間は vx ですので,時間を vx だけ巻き戻せば ok ですね。時刻 t から vx だけ巻き戻すので,時刻は t−vx になります。
求める y(x,t) は,この時刻における原点の媒質の変位と等しくなります。つまり,「時刻 t の位置 x における媒質の変位 y(x,t) は,時刻 t−vx の原点における媒質の変位 y(0,t−vx) に等しい」ということです!
数式で表現すると,y(x,t)=y(0,t−vx) ですね!
t(x,t) の求め方
時間もしくは位置を巻き戻して考える。このとき,
y(x,t)=y(x−vt,0)=y(0,t−vx)が成立する。