正弦進行波の一般表記
数式の違い
お気づきの人もいるかも知れませんが,$y(x,\,t)=y(x-vt,\,0)$ として考えた場合と $y(x,\,t)=y\left(0,\,t-\mskip 6mu\bun{x}{v}\mskip 5mu\right)$ として考えた場合で,数式が少し異なっています。
前者の方法では,
$$y(x,\,t)=A\sin\left\{2\pi\left(\bun{x}{\lambda}\mskip 5mu-\mskip 6mu\bun{t}{T}\mskip 5mu\right)+\varphi\right\}\stext{\quad……\ ①}$$であり,後者の方法では,
$$y(x,\,t)=A\sin\left\{2\pi\left(\bun{t}{T}\mskip 5mu-\mskip 6mu\bun{x}{\lambda}\mskip 5mu\right)+\varphi\right\}\stext{\quad……\ ②}$$でした。

見た目はたしかに異なるのですが,実は表している内容は同じなのです。
式変形
このことを確認するために,①式の右辺を少し変形してみます。$\varphi$ は定数ですので,どんな値でも ok です。
そこで,$\varphi\to\pi-\varphi$ とおき換えてみると,
$$\begin{aligned}A\sin\left\{2\pi\left(\bun{x}{\lambda}\mskip 5mu-\mskip 6mu\bun{t}{T}\mskip 5mu\right)+\pi-\varphi\right\}&=A\sin\left[\left\{2\pi\left(\bun{x}{\lambda}\mskip 5mu-\mskip 6mu\bun{t}{T}\mskip 5mu\right)-\varphi\right\}+\pi\right]\\&=A\sin\left[-\left\{2\pi\left(\bun{x}{\lambda}\mskip 5mu-\mskip 6mu\bun{t}{T}\mskip 5mu\right)-\varphi\right\}\right]\\&=A\sin\left\{2\pi\left(\bun{t}{T}\mskip 5mu-\mskip 6mu\bun{x}{\lambda}\mskip 5mu\right)+\varphi\right\}\end{aligned}$$と変形できます。これは ②式の右辺と全く同じですね!
ということで,表しているものはどちらも同じですので,どちらの表記を用いても ok です。いずれの場合でも,波の進行方向が $x$ 軸負の向きになる際には $-$ の符号が $+$ に変わります。
正弦進行波の一般表記
$x$ 軸上を進む波長 $\lambda$,周期 $T$ の正弦進行波について,任意の時刻 $t$ における位置 $x$ の媒質の変位 $y(x,\,t)$ は,
$$y(x,\,t)=A\sin\left\{2\pi\left(\bun{t}{T}\mskip 5mu\pm\mskip 6mu\bun{x}{\lambda}\mskip 5mu\right)+\varphi\right\}$$とかける。波の進行方向が $x$ 軸正の向きのとき,$\pm$ の部分の符号は $-$ として,$x$ 軸負の向きのときは $+$ として考える。
数式の使い方
公式としての暗記はNG!
この形で任意の正弦進行波を表すことができるのですが,この式を覚えて値を代入する,という解き方は推奨されません。
$y(x,\,t)=y(x-vt,\,0)=y\left(0,\,t-\mskip 6mu\bun{x}{v}\mskip 5mu\right)$ を利用しながら解き進めるという方法で問題を解いていきます。
例題で確認してみましょう。
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例題
時刻 $t=0\s$ に原点を通過し,速さ $0.250\ms$ で $x$ 軸上を正の向きに進む正弦進行波がある。$x=0\m$ における媒質の変位 $y\m$ と時刻 $t\s$ の関係を表す $y-t$ グラフを図に示す。
この波の周期 $T\s$,波長 $\lambda\m$ を求めよ。
$t=24\s$ における,$x=2.0\m$ の媒質の変位 $y\m$ を求めよ。
与えられた $y-t$ グラフより,$T=16\s$ であることがわかる。波動の基本公式より,
$$0.250=f\lambda=\mskip 4mu\bun{\lambda}{16}\mskip 5mu$$が成り立つので,これを整理して,$\lambda=4.0\m$ を得る。
与えられた $y-t$ グラフは $-\sin$ 型なので,
$$y(0,\,t)=-3.0\sin2\pi\mskip 6mu\bun{t}{16}\mskip 5mu$$が成立する。時刻 $t$ における位置 $x$ の媒質の変位 $y(x,\,t)$ は,
$$\begin{aligned}y(x,\,t)&=y\left(0,\,t-\mskip 6mu\bun{x}{v}\mskip 5mu\right)\\&=-3.0\sin2\pi\mskip 6mu\bun{t-\mskip 6mu\bun{x}{v}\mskip 5mu}{16}\\&=-3.0\sin2\pi\left(\bun{t}{16}\mskip 5mu-\mskip 6mu\bun{x}{4.0}\mskip 5mu\right)\end{aligned}$$と表すことができる。これに $t=24\s$ および $x=2.0\m$ を代入して,
$$\begin{aligned}y&=-3.0\sin2\pi\left(\bun{24}{16}\mskip 5mu-\mskip 6mu\bun{2.0}{4.0}\mskip 5mu\right)\\&=-3.0\sin2\pi\\&=0\m\end{aligned}$$
実際の流れ
繰り返しになりますが,「まずは与えられたグラフを元に $y(x,\,0)$ もしくは $y(0,\,t)$ を求めて,
$$y(x,\,t)=y(x-vt,\,0)=y\left(0,\,t-\mskip 6mu\bun{x}{v}\mskip 5mu\right)$$を利用して $y(x,\,t)$ を求める」という流れで問題を解くことが非常に多いです。
このことからも,一般形の丸暗記ではなく,
$$y(x,\,t)=y(x-vt,\,0)=y\left(0,\,t-\mskip 6mu\bun{x}{v}\mskip 5mu\right)$$を使いこなせることがより重要であることがわかりますよね。

なぜこの式が成り立つのかという導出部分も含めて,しっかりと丁寧に身に付けましょう!