力学 物理

単振動のエネルギー保存則

羽白 いむ

東京大学医学部医学科卒 現役医師
東大指導専門塾鉄緑会 物理・数学科元講師
物理基礎のトリセツ著者
数学のトリセツ共著者

単振動のエネルギー保存則

通常のエネルギー保存則

物体が単振動を行う場合にも,エネルギー保存則を考えることができます。前回扱った「ばねにぶら下がった物体の単振動」で考えてみましょう。

原点を位置エネルギーの基準点とします。

手を離した位置

まず,手を離した位置における力学的エネルギーを考えてみましょう。ばねの伸びは $x_1+\mskip 4mu\bun{mg}{k}\mskip 5mu$ ですので,弾性力の位置エネルギーは,

$$U_k=\mskip 4mu\bun12k\left(x_1+\mskip 4mu\bun{mg}{k}\mskip 5mu\right)^2$$となります。

一方,原点よりも鉛直方向に $x_1+\mskip 4mu\bun{mg}{k}\mskip 5mu$ だけ低い位置に物体は存在するので,重力の位置エネルギーは,

$$U_g=-mg\left(x_1+\mskip 4mu\bun{mg}{k}\mskip 5mu\right)$$となりますね。

物体の速さは $0$ であり,運動エネルギーは $K=0$ となりますので,力学的エネルギーは,

$$\begin{aligned}E_0&=U_k+U_g+K\\ &=\mskip 4mu\bun12k\left(x_1+\mskip 4mu\bun{mg}{k}\mskip 5mu\right)^2-mg\left(x_1+\mskip 4mu\bun{mg}{k}\mskip 5mu\right)\end{aligned}$$として得られます。

では,位置 $x$ ではどうでしょう?

生徒

ばねがのびた位置

ばねが $x$ だけ伸びていることになりますので,弾性力の位置エネルギーは $U_k=\mskip 4mu\bun12kx^2$ ですね。

一方,鉛直方向には $x$ だけ低い位置に存在することになりますから,重力の位置エネルギーは $U_g=-mgx$ となります。速さを $v$ とすると,運動エネルギーは $K=\mskip 4mu\bun12mv^2$ になりますので,力学的エネルギーは,

$$E=\mskip 4mu\bun12kx^2-mgx+\mskip 4mu\bun12mv^2$$として得られます。

エネルギー保存

単振動を行っている間,物体に仕事をするのは弾性力と重力のみで,これらはいずれも保存力ですから,力学的エネルギー保存則が成立します。

よって,

$$\Bun12k\left(x_1+\mskip 4mu\bun{mg}{k}\mskip 5mu\right)^2-mg\left(x_1+\mskip 4mu\bun{mg}{k}\mskip 5mu\right)=\mskip 4mu\bun12kx^2-mgx+\mskip 4mu\bun12mv^2$$が得られます。

復元力の位置エネルギー

よりよい方法

弾性力の位置エネルギー,重力の位置エネルギー,運動エネルギーから考える力学的エネルギー保存則について確認しました。

しかし,出てきた式の形は複雑で,とても気持ちよく解けそうにない…。

もっと楽な方法はないのでしょうか?

生徒

物体が単振動を行うとき,物体に作用する力は必ず $f=-k(x-x_0)$ の形にまとめることができるのでした。

ばねにぶら下がった重りの例では,$f=-k\left(x-\mskip 6mu\bun{mg}{k}\mskip 5mu\right)$ という形の復元力となっており,弾性力と重力の合力となっていることがわかりますね。

そこで,位置エネルギーも弾性力と重力を別々に考えるのではなく,まとめて1つの復元力のエネルギーとして考えることはできないでしょうか。

復元力 $f=-k(x-x_0)$ の形は,弾性力 $f=-kx$ の形に似ていますよね。弾性力の $x$ を $x-x_0$ に変えただけです。

よって,仕事やエネルギーの計算を行う際にも同じように $x$ を $x-x_0$ に変えることで,結論をそのまま利用することができるのです。

復元力の位置エネルギー

弾性力の位置エネルギーは,$x=0$ を基準点として,$U=\mskip 4mu\bun12kx^2$ でしたね。

よって,弾性力の位置エネルギーは,$x-x_0=0$ すなわち $x=x_0$(振動中心,つり合いの点)を基準として,$U=\mskip 4mu\bun12k(x-x_0)^2$ とかくことができてしまうのです。

この「$x-x_0$」は,振動中心からのズレを表していますね。つまり日本語で表現すると,

$$U=\mskip 4mu\bun12\times\stext{\hspace{-.5em}(復元力の比例定数:$k$)}\times\stext{\hspace{-.5em}(振動中心からのズレ:$x-x_0$)}^2$$です。

復元力の位置エネルギー

復元力 $f=-k(x-x_0)$ の位置エネルギーは,振動中心 $x=x_0$ を基準点として,

$$U=\mskip 4mu\bun12k(x-x_0)^2$$とかける。

この復元力の位置エネルギーには,弾性力の位置エネルギーや重力の位置エネルギーなど,全ての位置エネルギーが含まれています。

よって,この復元力の位置エネルギーと運動エネルギーのみで力学的エネルギー保存則を考えることができるのです。

逆に,復元力の位置エネルギーを考える際はそこに全ての位置エネルギーが含まれているため,弾性力や重力の位置エネルギーを式に登場させてはいけません。

羽白

復元力の位置エネルギーだけを考えればそれでokです。

よって,必ず,

$$\Bun12k(x-x_0)^2+\mskip 4mu\bun12mv^2=\stext{\hspace{-.5em}(一定)}$$の形で力学的エネルギー保存則を立式することができます。

単振動の力学的エネルギー保存則

復元力の位置エネルギーを用いて,

$$\Bun12k(x-x_0)^2+\mskip 4mu\bun12mv^2=\stext{\hspace{-.5em}(一定)}$$の形で立式する。

かなり式がシンプルになりましたね!

生徒

復元力の位置エネルギーに全ての位置エネルギーがまとまってるってなんだか凄くないですか!

この形の力学的エネルギー保存則を使うことで計算が非常に楽になることが多いので,ぜひ使い慣れてください!

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