圧力
圧力とは
気体について考える際には,圧力を考えることが多いです。
風船に空気を入れる状況をイメージしてみてください。少ししか空気が入っていないときはしわしわの状態ですが,たくさん空気を入れるとパンパンになりますよね。
入っている空気の量によってどれだけ気体が風船のゴムを外側に向かって押すかが変わってくるわけです。
内側から気体が風船を広げる力が広がるので,どんどん膨らんでいくわけですね。
このように,気体は接している壁や容器を押す力を及ぼすことが知られています。
このような力は,単位面積(つまり $1\mm$)あたりで考えるとわかりやすいことが多いため,この「気体が周囲の物質を押す単位面積あたりの力」を気体の圧力と呼んでいます。
気体以外でも,「圧力」といったら「単位面積あたりに作用する力」として考えてください。
圧力と力の関係
ではたとえば,以下の状況で壁はどのような力を受けるでしょうか。
壁が受ける力
圧力が $P$ の気体に面積が $S$ の壁が接している。壁が気体から受ける力 $f$ は…?
圧力は,単位面積($1\mm$)あたりに作用する力でした。つまり,壁のうち $1\mm$ の部分を押す力が $P$ ということになります。
壁の面積が $2\mm$ になれば壁が受ける力は $2P$ になりますし,$3\mm$ になれば $3P$ になります。
では壁の面積が $S$ だったら…?もう難しくないですよね。同じように考えれば,$f=PS$ であることがわかると思います。
圧力は $1\mm$ あたりの力 $\left(P=\bun{f\N}{S\mm}\right)$ ですから,単位は $\punit{N/m^2}$ になります。これをまとめて $\punit{Pa}$(パスカル)と表現します。
圧力
単位面積あたりに作用する力を圧力と呼ぶ。$P\punit{Pa}$ の圧力が $S\mm$ の面に加わるとき,面が受ける力 $f\N$ は,
$$f=PS\punit{N}$$と表せる。
水圧
ここまで主に気体の圧力について考えてきましたが,液体やその他の力についても圧力を考えることができます。以下の例題をみてみましょう。
例題
密度が $\rho$,断面積が $S$,高さが $h$ の物体が,密度が $\rho_0$ の水の中に $a$ だけ沈んでいる。以下の問いに答えよ。ただし,大気圧を $P_0$,重力加速度の大きさを $g$ とする。
水面からの深さが $x$ の位置における水圧 $P(x)$ を求めよ。
物体が水から受ける合力を求めよ。
まず,この問題で登場した「水圧」について確認しておきましょう。
言葉の意味は「水が物体に及ぼす単位面積あたりの力」ですが,「あらゆる向きに働く」というのがポイントです。
沈んでいる物体があったとき,上の面には下向きの水圧が,下の面には上向きの水圧がかかりますし,側面にも物体を押す向きの水圧が作用します。
側面の水圧は左右で打ち消し合って $0$ になることが大半ですが,上面と下面に働く力は差が生じるため,その差について考えるというのがこの問題のテーマになっています。
次に,深さ $x$ での水圧について考えてみましょう。ポイントは「深さが同じであれば水圧は同じ」という点です。
水面からの深さで水圧が決まるということですね!
これまでに何度も強調した通り,圧力は「単位面積($1\mm$)あたりの力」ですので,まずは深さ $x$ の位置に面積が $1$ の面(面Aとします)があるものとして考えます。
この面にどれだけの力がかかっているかを考えるわけですが,その面の上に乗っかっているものをまずは考えましょう。
水の柱
断面積が $1$,高さが $x$ の水の柱が面Aの上に乗っかっていますよね。
この水の柱の体積は $1\times x=x$ で,質量は $\rho_0x$ ですから,受ける重力は $\rho_0xg$ となります。
水面の上の空気
要するに大気ですね。
問題文にある通り,大気圧は $P_0$ ですので,大気がこの水面 $1\mm$ あたりを押す力が $P_0$ です。
面Aの上にあった水の柱の断面積は $1$ でした。
よって,この水の柱が大気に接している水面で,大気がこの水の柱を下向きに $P_0$ で押している,ということになります。
以上から,水の柱と大気を合わせると,合計で $P_0+\rho_0xg$ の力が面Aにかかっていることがかかりました。
今は深さ $x$ で下向きの力として考えましたが,上で述べた通り,深さ $x$ であればこの水圧はどの向きにも作用します。
今回の問題で考えている物体の下の面は深さが $a+h$ ですので,水圧は $P(a+h)=P_0+\rho_0(a+h)g$ であり,向きは「面を押す向き」,すなわち上向きです。
では,物体の上の面にかかる水圧はどうでしょうか。
深さは $a$ なので,大きさは $P(a)$ ですが,向きは「面を押す向き」なので,下向きになります。
以上で物体の上の面と下の面にかかる水圧がわかりました。
ただしこれはあくまで「単位面積あたりの力」で,実際にかかる力は面積をかけた $P(x)S$ であることに注意してください。
力の作用図は,次図のようにかくことができます。
$P(a+h)>P(a)$ ですから,物体が受ける合力の向きは上向きで,その大きさは,
$$\begin{aligned} P(a+h)S-P(a)S&=\left\{P_0+\rho_0(a+h)g\right\}-(P_0+\rho_0ag)S\\&=\rho_0Shg \end{aligned}$$
として求めることができます。
物体の体積を $V=Sh$ とすれば,$\rho_0Vg$ とかくことができます。
この式,見覚えがありませんか…?
そう,浮力の公式ですよね。上の例題のように水圧について考えることで,アルキメデスの原理は証明できるのです。
また,「水圧はあらゆる向きに働く」と説明しましたが,これは気体の圧力についても同様です。