熱量とは
力学で「運動エネルギー」や「位置エネルギー」,そしてこれらの和である「力学的エネルギー」というものを学習しました。熱力学では,熱量という言葉がよく出てきます。
熱量をエネルギーと合わせてどのように扱っていくのか,学習していきましょう。
力学のエネルギーの内容に不安があるならこのタイミングで復習をぜひ!
これまでに学習した通り,「温度」は物質を構成している原子,分子の熱運動を表しているのでした。
熱運動しているということは,運動エネルギーを持っている,ということですよね。
その運動エネルギーを介してやり取りされるエネルギーが熱量なのです。
熱量
熱量は,物質を構成している原子,分子の熱運動(運動エネルギー)のやり取りの量を表すのでした。
とすれば,単位は運動エネルギーと同じ$\punit{J}$(ジュール)であることは問題ないですよね。
しかし,日常生活で「J」という熱の単位を使うことってないですよね…。
日常生活では,熱量を考えやすくするために利用されている別の単位があります。
それが$\punit{cal}$(カロリー)です。
$1\punit{cal}$ は,水 $1\punit{g}$ の温度を $1\K$ だけ上昇させるのに必要な熱量として定義されています。
例:コップの水を温める場合
コップの中に $10\punitDegC$ の水が $200\punit{g}$ が入っているとします。
この水を $30\punitDegC$ に温めるのに熱量はどれだけ必要でしょうか。(コップ自体を温めるのに必要な熱量は無視して考えます)
$1\punit{cal}$ は,水 $1\punit{g}$ の温度を $1\K$ だけ上昇させるのに必要な熱量でした。
では,水 $200\punit{g}$ の温度を $1\K$ だけ上昇させるのに必要な熱量を考えてみましょう。
単純に水の量が $200$ 倍になったわけですから,必要な熱量も $200$ 倍で $200\punit{cal}$ になります。
同じように考えて,温度上昇が $1\K$ ではなく $20\K$ の場合であれば,必要な熱量は $20$ 倍になるはずです。
よって,求める熱量は,
$$200\times20=4000\punit{cal}$$として求めることができます。
ちなみにこの$\punit{cal}$という単位ですが,$\punit{kcal}$という形で目にすることが多いのではないでしょうか。
この $\mathrm{k}$(キロ)は $\punit{km}$ の $\mathrm{k}$ と同じで,$1000$ 倍を表していますので,$1\punit{kcal}=1000\punit{cal}$ です。
コンビニやスーパーで売っている食料品に「◯◯kcal」とかかれていますよね。
その食べ物を食べることで,体内で代謝されるとどれだけ熱量(エネルギー)が得られるかを表しているわけです。
このエネルギーを元に私達は身体を動かして生活しています。
一気に話が現実的になりましたね。食べ物を食べるときに気にする「カロリー」はこれです。
なお,$\punit{J}$ と $\punit{cal}$ の間には,
$$1\punit{cal}\fallingdotseq 4.2\punit{J}$$の関係が成り立つことが知られています。
熱量の単位
熱量の単位として,$\punit{J}$ の他に $\punit{cal}$(カロリー)が使用される。
$1\punit{cal}$ は,水 $1\punit{g}$ の温度を $1\K$ だけ上昇させるのに必要な熱量であり,
$$1\punit{cal}\fallingdotseq 4.2\punit{J}$$の関係が成り立つ。
熱の移動
温かい物体と冷たい物体が触れ合うと,温度が変化していきますよね。この現象は…?
たとえば,風邪を引いて熱が出たとき,おでこに冷えピタを貼ったりしますよね。
するとおでこは冷たくなり,逆に冷えピタはだんだんぬるくなっていきます。
これは,熱が出て温かくなっているおでこから,冷たい冷えピタに熱が移動したからだと考えることができます。
このように,温度の異なる2つの物体が接触すると,温度の高い物体から温度の低い物体に向かって熱が移動します。
この熱の移動は一方通行です。温度の高い物質から低い物質へと自然に熱が移動していくことはありません。
温度の高い(構成する原子,分子が激しく熱運動している)物体が温度の低い(構成する原子,分子があまり熱運動していない)物体に触れるという状況を細かい視点でみてみましょう。
接触している物体同士の表面では,「激しく運動している原子,分子」と「あまり運動していない原子,分子」が触れ合っています。
「激しく運動している原子,分子」が「あまり運動していない原子,分子」に衝突すると,衝撃が伝わることで「あまり運動していなかった原子,分子」が活発に動きはじめます。
逆に,「激しく運動していた原子,分子」は衝撃を与えてしまったことで勢いを失います。
結果として,温度の高い物体の温度が下がり,温度の低い物体の温度が上がることになるのです。
温度差がある限り熱の移動は続き,最終的には2つの物体の温度が等しくなります。このような,「温度が等しくなってそれ以上熱の移動が起こらない状態」を,熱平衡にあるといいます。
温度の高い物質から温度の低い物質に熱が移動したわけですが,外からエネルギーが供給されたり,外へエネルギーが失われない限り,エネルギーのやり取りは2物質間で完結します。
よって,温度の高い物質が失った熱量と温度の低い物質が受け取った熱量は等しくなります。
これを熱量の保存といいます。特に名前を覚える必要はありません。
エネルギーは自然に発生したり,消失したりしないですよ,という当たり前のことをいっているだけですね。