気体について
熱力学について
熱力学では,主に気体についての性質を扱います。気体の性質といわれて皆さんは何を思い浮かべますか…?
温度,圧力,体積など,気体を特徴づける性質は様々ですが,まずはこれらのそれぞれの性質について確認していきましょう。
セルシウス温度
温度について考える
物質は一般に,気体,液体,固体の状態で存在しています。
水が最も想像しやすいかと思いますが,温度が低ければ個体,通常の温度なら液体,熱すると気体になります。
同じ水でも冷たい水,熱いお湯など温度が異なりますよね。
こうした物質の温度は水に限らず,気体や固体でも測定することができますが,そもそもこの「温度」とは何なのでしょうか。
セルシウス温度
日常生活で液体の温度や気温を表現するときに,「お湯は $100\DegC$ になると沸騰する」「明日の気温は $27\DegC$ だ」など,$\punitDegC$ を用いて温度を表現しますが,この $\punitDegC$ を用いて表現された温度のことをセルシウス温度といいます。
日常生活で普段使用しているこのセルシウス温度ですが,これは氷の融点(氷が溶けて液体の水になる温度)を $0\punitDegC$,沸点(水が沸騰して気体になる温度)を $100\punitDegC$ として,その間を $100$ 等分するように定められています。
このセルシウス温度は,マイナスの値になることもありますよね。
よく天気予報などで「明日の気温は氷点下 $10\DegC$ です」などといった表現を聞くことがあると思いますが,これは気温が $-10\punitDegC$ であることを意味しています。
このマイナスの温度は一体どこまで存在するのでしょうか…?
マイナス $100\punitDegC$ くらい…? マイナス $1000\punitDegC$ くらいまである…?
これの答えを理解するためにまず,「そもそも温度とは何か」を学習しましょう。
温度とは
微視的な考え方
気体にしても液体にしても,状態によらず世の中の物質は原子,分子によって構成されています。
空気の場合,窒素や酸素,二酸化炭素が含まれていますよね。
物質を構成するこれらの原子や分子はそれぞれ常に運動していることが知られています。
大きさが非常に小さいので決して目には見えませんが,空気中の酸素分子や二酸化炭素分子もびゅんびゅん飛び回っているのです。
原子や分子が飛び回る速さが大きければ,接触した際に受ける衝撃(といってもとても目には見えないですが…)は強くなります。
これを私達は「熱い」と認識しているのです。
つまり,物質の温度は原子や分子の運動の激しさを反映しています。
この激しさが大きい状態を「温度が高い」と表現しているに過ぎないのです。
温度
物質の温度は,物質を構成する原子,分子の熱運動の激しさを表している。
絶対温度
マイナスの温度
これまでの話を踏まえて「マイナスの温度は一体どこまで存在するのか」という問いについてもう一度考えてみましょう。
先ほど学習した通り,温度とはその物質を構成する原子,分子の熱運動の激しさを表しているのでした。
とすると,その原子,分子が一切運動しなくなった状態が最も温度の低い状態だと考えられますよね。
この状況における温度はおおよそ $-273.15\punitDegC$ であることが知られています。
この温度になってしまえば全ての原子,分子が静止しているため,それ以上冷やしても更に温度を下げることができないわけです。
絶対温度
日常生活では,マイナスの温度も含めてセルシウス温度で表現することが多いですが,物理や化学の世界では温度を全て正の値として表現できるように,絶対温度で表現します。単位はケルビン$\punit{K}$を用います。
セルシウス温度での $-273.15\punitDegC$ が $0\punit{K}$ になるように基準の位置を変えただけの温度なのであまり難しく考えなくてokです。
$-273.15\punitDegC$ と $0\punit{K}$ が対応していることを踏まえると,$0\punitDegC$ は $273.15\punit{K}$ に対応しますし,$20\punit{K}$ は $-253.15\punitDegC$ に対応することがわかるかと思います。一般に,セルシウス温度 $t\punitDegC$ と絶対温度 $T\punit{K}$ の間には,
$$T=t+273.15$$という関係が成り立ちます。
この式を使えばセルシウス温度と絶対温度を変換することができますが,「どっちに $273.15$ を足すんだっけ…? $T=t+273.15$…? $t=T+273.15$…?」と迷ってしまうことがあると思います。
そんなときには「絶対温度 $T$ は負の値を取らない」ことを思い出してください!
セルシウス温度 $t$ は負の値になりますよね。つまり,どう考えても $t<T$ であるはずです。
この大小関係さえわかれば,どちらに $273.15$ を足せばよいか悩むことはなくなると思います。
絶対温度
セルシウス温度 $t\punitDegC$ に対して,絶対温度 $T\punit{K}$ は,
$$T=t+273.15$$によって定められる。絶対温度は負の値を取らない。
物質の三態
一般に,物質は固体,液体,気体の3つの状態をとります。水の場合は,氷が固体,水蒸気が気体に相当しますね。
固体が液体になる温度を融点,液体が固体になる温度を沸点と呼びます。
固体を熱していくとやがて液体になりますが,固体と液体の違いってそもそもなんでしょうか…?
物質を構成する粒子(原子や分子)のレベルで考えると,粒子同士の結びつきの強さが異なります。
固体は粒子同士が強く結びついているのに対し,液体はその結びつきが固体ほど強くありません。
固体が液体に変わる際に必要な熱は,この結びつきを弱くするために(粒子の運動エネルギーを大きくするために)用いられています。
融点にある固体を完全に液体に変えるのに必要な熱量を融解熱,沸点にある液体を完全に気体に変えるのに必要な熱量を蒸発熱といいます。
また,融解熱や蒸発熱のように,物質の状態変化に伴う熱量のことを一般に潜熱といいます。
共通テストではこうした名前が問われることもあるので,一通りしっかりと確認しておきましょう。