原子物理 物理

水素原子モデル

羽白 いむ

東京大学医学部医学科卒 現役医師
東大指導専門塾鉄緑会 物理・数学科元講師
物理基礎のトリセツ著者
数学のトリセツ共著者

原子の構造

調べるのは大変…

陽子と中性子からなる原子核があって,そのまわりを電子が回っていて,それが原子だ!

というのは現在では教科書にもかいてあります。

しかし,原子は目に見えない小ささですので,このことを調べるのも大変です。

羽白

どのようにして原子の構造が解明されてきたのかを見ていきましょう。

様々な原子模型

トムソンの模型

原子の構造が明らかになるまでは,様々な原子核のモデルが提唱されていました。

その一例として,トムソンの原子模型があります。

生徒

トムソンの模型は,大きな正電荷の級があり,その中に電子がまんべんなく分布しているというものでした。

物理1531

今となっては「違うでしょ!」とわかりますが,この模型が現実と異なることを示すためには,その根拠となる実験が必要です。

羽白

教科書やインターネットのない世界で,この仮説を否定できますか?難しくないですか?

ラザフォードの実験

そのような実験として,ラザフォードの実験が有名です。

薄い金箔に高速の $\alpha$ 粒子($+2e$ の電荷を持つ粒子)をぶつけるというものです。

金箔にぶつかった $\alpha$ 粒子の大半はわずかに進行方向が変わるのみでしたが,一部の $\alpha$ 粒子は $90\Deg$ 以上進行方向が変わることがわかりました。

物理1532

トムソンの原子模型だと,金箔上には正の電荷がまんべんなく分布していることになります。

このような状況では,$\alpha$ 粒子の進行方向を大きく変えるだけの強い電場を作り出すことが出来ず,実験結果を説明することができません。

ラザフォードの原子模型

原子核

実験結果を説明するためには,「原子の一部だけに強い電場が発生している」必要があります。

そこでラザフォードは,原子の中心部の狭い部分に正電荷が集中しているものと考えました。

さらに,その中心部に原子の質量も集中しているものとし,これを 原子核 と名付けたのです。

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羽白

これが皆さんがよく知っている原子の模型かと思います!

ラザフォードモデルにおける解析

円運動なので

水素原子について,ラザフォードモデルを用いて考えてみます。

水素原子では,陽子を1つ含む原子核(電荷 $+e$)のまわりを1つの電子(電荷 $-e$)が円運動しています。「円運動」なのですから,運動方程式を考えることができますね…!

円の中心には原子核があり,原子核内の陽子との間の静電気力が向心力になります。

円運動の半径を $r$ とすれば,その大きさは $f=k\mskip 6mu\bun{e^2}{r^2}\mskip 5mu$ です。

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よって,電子の円運動の速さを $v$ とすれば,運動方程式より,

$$m\mskip 6mu\bun{v^2}{r}\mskip 5mu=k\mskip 6mu\bun{e^2}{r^2}\mskip 5mu\quad\stext{…… ①}$$

が得られます。

電子のエネルギー

羽白

エネルギーについても考えてみましょう。

静電気力に対して電子が持つ位置エネルギーは,無限遠方を基準とすると $U=-k\mskip 6mu\bun{e^2}{r}\mskip 5mu$ とかけます。

よって,電子の力学的エネルギーは,

$$E=\mskip 4mu\bun12mv^2-k\mskip 6mu\bun{e^2}{r}\mskip 5mu=-k\mskip 6mu\bun{e^2}{2r}\mskip 5mu\quad\stext{…… ②}$$

と表すことができます。

ラザフォードモデルの難点

問題点

一見すると正しそうに見えるラザフォードモデルですが,以下のような問題点を有しています。

半径 $r$ が決まらない

電子の円運動の半径を $r$ としてエネルギーを計算しましたが,そもそもこの $r$ が何によって決まるのかがわかりません。

ラザフォードモデルでは,水素原子ごとに別の値を取ってもおかしくないことになってしまいます。しかし現実の水素原子は,半径 $r$ が決まった値を取ります。

半径 $r$ が減少する

電磁気学の知識から,電子が円運動を行うと電磁波を放出することが知られていました。

$E=-k\mskip 6mu\bun{e^2}{2r}\mskip 5mu$ ですので,電磁波を放出して $E$ が減少すると,円運動の半径 $r$ も減少していきます。

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そのまま円運動を続けると $r\to0$ になってしまい,原子核に電子がぶつかってしまうことになります。

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しかし,実際にはそのようなことは起こりません。

放出される光の振動数が連続的に変化してしまう

原子から放出される電磁波の振動数は,特定の決まった値しか取らないことが経験的に知られていました。

しかし,ラザフォードモデルで考えると,放出される電磁波は連続的な値を取ってしまいます。

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やはり「実際の現象」を説明しきれません。

ということで,ラザフォードモデルにも限界がありました。これらの難点を解決したのがボーアです!

羽白

ということで,次のページでボーアの理論を見ていきます!

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