波動 物理

薄膜干渉

羽白 いむ

東京大学医学部医学科卒 現役医師
東大指導専門塾鉄緑会 物理・数学科元講師
物理基礎のトリセツ著者
数学のトリセツ共著者

薄膜干渉とは

膜内に入るまで

空気(屈折率 $1$)から,薄い膜(屈折率 $n$)に,入射角 $i$ で光を入射します。

屈折角を $r$ とし,光の進む向きを2本の直線で表したのが次図です。

物理769
羽白

実際の光の波面はグレーで示した直線です。

左の光が境界の $\rmA$ 点に達したとき,同じ波面をたどると,右の光は $\rmB$ 点に達していることがわかります。

つまり,$\rmA$ 点と $\rmB$ 点に光が届くタイミングがそろっている(位相がそろっている),ということですね。

膜内に入った後

同様に,屈折した後についても考えましょう。

右側の光が境界上の $\rmC$ 点で屈折したとき,波面をたどると左側の光は $\rmD$ 点に達していることがわかります。

つまり,$\rmC$ 点と $\rmD$ 点の光は位相がそろっている,ということになります。

干渉について

以上を踏まえた上で,薄膜での干渉について考えていきましょう。実際には薄膜の下側は空気層になっていますので,次図の通りに整理できます。

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羽白

図示した2つの光について,状況を確認していきます。

光① は,空気と薄膜の境界面($\rmA$ 点)で屈折して薄膜内に入り,薄膜と空気の境界($\rmP$ 点)で反射された後,再度空気と薄膜の境界面($\rmC$ 点)で屈折して $\rmQ$ 点に向かいます。

光② は,空気と薄膜の境界($\rmC$ 点)で反射され,そのまま $\rmQ$ 点に向かいます。$\rmC$ 点を通過してから $\rmQ$ 点に向かうまで,これらの光が重なり合うことで干渉するわけですね。

経路差

これらの光の経路差を考えていきましょう。

ここでのポイントは,「光① の $\rmD$ 点における位相と,光② の $\rmC$ 点における位相がそろっている」ということです。

これは先ほど確認した通りですね。

生徒

よって,$\rmD$ 点と $\rmC$ 点より後の部分の経路差のみ考えればよいことになります。

問題点

光② は $\rmC$ 点で反射されてそのまま $\rmQ$ 点に向かうため,光① は $\overline{\rmD\rmP}+\overline{\rmP\rmC}$ だけ余分に進むことになりますね。

よって,$\varDelta L=\overline{\rmD\rmP}+\overline{\rmP\rmC}$ として干渉条件を考えたいところなのですが,1つ大きな問題があります。

それは「$\overline{\rmC\rmP}$ も $\overline{\rmP\rmC}$ も,薄膜の中での距離である」ということです!

薄膜は屈折率が $n$ なので,その内部では光の波長も $\bun{1}{n}\mskip 5mu$ 倍されていますよね。

干渉条件の「$\varDelta L=m\lambda$」は,「2つの光の経路差の部分に,波がぴったり $m$ 個入る」ということから考えていたわけですが,その基準となる波長が薄膜中では変わってしまっているので,この式をそのまま使うことができません!解決方法を考えていきましょう。

光路差と干渉条件

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2通りの解決策があるので,順番に確認していきましょう。

波長を調節する

経路差が生じている部分では,波長が $\lambda\prime =\mskip 4mu\bun{\lambda}{n}\mskip 5mu$ となっているので,この $\lambda\prime $ を用いて,

$$\varDelta L=m\lambda\prime $$

と立式します。

ただしこの方法は,経路差を生じる部分が2つ以上の領域にまたがると使うことができません

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こうした場合にも対応できる「光路差を考える」方法の方が汎用性が高いので,こちらの方法をしっかりと使いこなせるようにしてください!

光路差を考える

屈折率が $n$ の物質中では,光の波長が $\Bun{1}{n}\mskip 5mu$ 倍になってしまうため,$\varDelta L=m\lambda$ の式が利用できないのでした。

そこで,波長を真空中での値 $\lambda$ に戻すために,その媒質中の経路も $n$ 倍に引き伸ばして考えます。

物理771

これより,屈折率 $n$ の物質中の距離 $l$ は,真空中での距離の $nl$ に相当することがわかりますね。

この「実際の経路長を屈折率倍した長さ」を光路長と呼びます。

式で表現すると,

$$\stext{\hspace{-.5em}(光路長 $D$)} = \stext{\hspace{-.5em}(屈折率 $n$)} \times \stext{\hspace{-.5em}(実際の距離 $l$)}$$

です。

光路差を用いて

干渉条件をこの光路長で考えれば,波長は真空中の値 $\lambda$ を利用することができます。

2つの光の光路長の差である光路差:$\varDelta D$を用いれば,干渉条件は,

$$\varDelta D = m\lambda$$

となります。

光路差 $\varDelta D$ は,経路差 $\varDelta L$ を $n$ 倍した値でもあるため,$\varDelta D = n\varDelta L$と考えてokです。

干渉条件のまとめ

これまでの内容の整理

干渉条件を考える際には,光路長に変換して考えたり,反射による位相のずれを考えたりと,様々な手順が必要でした。これらをまとめたものが以下になります。

光波の干渉条件

光路差を求める。

まず干渉する2つの光を見つけ,たどる経路を確認してから光路差 $\varDelta D$ を求める。

反射による位相のずれを考える。

光が反射している場合には,反射による位相のずれを考える。屈折率がより大きい物質との境界面で反射が起こるときに位相が $\pi$ ずれる。

干渉条件を立式する。

反射による合計の位相のずれがなければ,干渉条件は,

$$\begin{aligned}\stext{強め合いの条件:\ }&\varDelta D=m\lambda\\\stext{弱め合いの条件:\ }&\varDelta D=\left(m+\mskip 4mu\bun12\right)\lambda\end{aligned}$$

となる。反射による合計の位相のずれが $\pi$ であれば,強め合い・弱め合いの条件を逆にして立式する。

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基本的にはこの手順に従って考えていきましょう!

この干渉条件の考え方は非常に重要ですので,必ず手順をスラスラと説明できるようにしておくべきです。

また,これまでに様々な実験について扱ってきましたが,異なるのは主に最初のステップの光路差を求める部分の手順です。

近似が必要だったりとややこしいものが多いので,手を動かして練習してスラスラと求められるようにしておくことが光波の干渉をマスターするためのポイントです!

薄膜干渉の続き

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光路差を用いた干渉条件で,薄膜干渉について改めて考えていきましょう。

1.光路差 $\varDelta D$ を求める

先ほど求めた $\overline{\rmD\rmP}+\overline{\rmP\rmC}$ について,さらに計算していきます。

光① は $\rmP$ 点で反射しているので,$\rmP\rmC$ の部分を境界面について折り返して整理します。

物理772

図から,$\overline{\rmP\rmC}=\overline{\rmP\rmC\prime }$ であることがわかるので,

$$\overline{\rmD\rmP}+\overline{\rmP\rmC}=\overline{\rmD\rmP}+\overline{\rmP\rmC\prime }=\overline{\rmD\rmC\prime }$$

ですね。

$\triangle\rmC\rmC\prime \rmD$ は直角三角形なので,

$$\overline{\rmD\rmC\prime }=\overline{\rmC\rmC\prime }\cos r=2d\cos r$$

と計算できます。

光路差 $\varDelta D$ はこれを $n$ 倍したものなので,

$$\varDelta D=2nd\cos r$$

ですね。

さらに,$\rmA$ 点における屈折の法則から,

$$\sin i=n\sin r$$

が成立します。これを用いると,

$$\cos r=\mskip 4mu\bun{1}{n}\mskip 5mu\sqrt{n^2-\sin^2i}$$

が得られるため,

$$\varDelta D=2d\sqrt{n^2-\sin^2i}$$

と書き換えることができます。

2.反射による位相のずれを考える

反射が起こっているのは2箇所です。

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光① が $\rmP$ 点で反射する際には位相がずれませんが,光② が $\rmC$ 点で反射する際には位相が $\pi$ ずれます。

よって,反射による合計の位相のずれは $\pi$ になります。

3.干渉条件を立式する

反射による合計の位相のずれが $\pi$ なので干渉条件は,

$$\begin{aligned}\stext{強め合いの条件:\ }&2d\sqrt{n^2-\sin^2i}=\left(m+\frac{1}{2}\right)\lambda\\\stext{弱め合いの条件:\ }&2d\sqrt{n^2-\sin^2i}=m\lambda\end{aligned}$$

として求まります。

羽白

長かったですね!これでようやく薄膜における干渉条件が求まりました!

結論は覚えなくてokですが,図をかく過程から結論を求めるまでの一連の流れをスラスラと説明できるように,何度も練習してください!

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