共通テストの傾向
センター試験の傾向
かつてのセンター試験では,系や状況設定がシンプルな問題が多く,いわゆる「参考書」に掲載されている練習問題に似たような内容の出題が多くなされていました。
難易度はやや高い問題も含まれていましたが,「2次試験の問題を少し簡単にしたもの」といった印象も強く,2次試験対策を行っていれば自然と解けるようになる問題も多かったです。
中には教科書の隅にかかれているような細かな知識が問われることもあり,どんなに物理が得意な受験生でも確実に満点を取るのは難しかった印象です。
羽白も満点を逃すことは多々ありました。どんなに物理が得意でも,安定して満点を取るのは難しかったのです。
例えば2013年の本試験で出題された以下の問題,自信を持って答えることができますか…?
過去の問題
水の入った水槽に,すきまのある薄いつい立てを上部が水面から出るように置く。つい立てに平行な波面を持つ水面波を送ると,波がすきまを通り抜け,つい立ての背後に回り込む様子が観察された。図4は,回り込んだ波のある時刻での波面を模式的に表したものである。ただし,図は真上から見た様子であり,図中の矢印は入射する水面波の進行方向を示している。
この波の代わりに,つい立てに平行な波面を持つ振動数が半分の水面波を送った。このとき観察される波面を模式的に表したものとして最も適切な図を選べ。
うーん,自信を持って選べるかと言われると…。
教科書にも載っている知識ではありますが,「すきまの広さに対して,波長が短くなると回折が起こりにくくなる」ということがわかっていないと解けない問題です。
この年にセンター試験を受けた人で,「覚えてなかったからトイレに行って実験した」と言っていた猛者を知っています。
共通テストの傾向
センター試験と比較して,「物理現象の意味をわかっているか」を問われる問題が大部分を占めるようになりました。
実験の意味を問う内容や,その結果から導かれる事柄についてその場で考える内容になっています。それゆえに問題文もやや冗長な部分が多いです。
長い問題文を読んで,問題の設定を理解するだけで一苦労…。
公式の暗記や,標準的な問題の演習のみでは対応しきれない部分も多く,「公式の意味」や「身の回りの物理現象」についてしっかりと理解しておくことが求められる内容です。
たとえば2022年の共通テストでは,円運動の公式の導出を問われるような内容が出題されました。
重箱の隅をつつくような細かい出題はなくなったので,物理が得意な人にとっては満点が取りやすい構成になっています。
出題量
問題数自体は大きな変化はありませんが,文章の量が多く,内容を理解するまでにやや時間がかかるため,従来のセンター試験と比べると解くのに時間がかかるでしょう。
しかしもともと厳しい時間設定ではないため,60分あれば十分に解き切ることができるはずです。
共通テストの傾向
実験や身の回りの物理現象を通じて,公式を理解して使いこなせるかを問われる。
問題設定がやや複雑で文章が長く,理解するのにやや時間がかかる。
勉強の進め方
対策に大きな変わりはなし!
いくら「公式の理解や身の回りの物理現象が大切!」といっても,対策に大きな違いはありません!
公式は覚えていないとどうしようもないですし,基本問題は解けることが前提になってきます。
基本的な公式をしっかりと意味も含めて理解し,さらにそれに関連する実験や身の回りの現象と結びつけておく必要がある,ということです。
細かな知識は不要になりましたが,逆に基本事項をより深く理解する勉強が必要になります。
学習の順序
まずは細かなことを考えずに,学校の授業や塾の講義の進度に合わせて一通りの基本事項を学びましょう。
はじめから共通テストを意識しすぎた学習は逆に効率が悪いので,独学で進める場合にも「一般的な物理の参考書」を利用するのがオススメです。
時間があるのに,最初から「センター試験対策!」のような参考書を使ってしまうと,浅い知識になってしまい後々メンドウです。
一通り学習が終わったら,共通テスト対策として「教科書を一通り読む」という学習を追加しましょう。
取り組む時期は共通テストの対策を始める高校3年生の夏以降で十分です。
教科書には様々な実験や,物理の現象に関する話題が写真や図を用いて豊富に掲載されています。
こちらが非常によい共通テストの対策となりますので,本文よりもむしろ「実験」や「コラム」のような部分を丁寧に読んでいくとよいでしょう。
市販の参考書は「効率よく必要な部分を学習できる!」という特徴がある反面,こうした「実験」や「日常の物理現象」には触れられていないことが多いです。
高3での対策
開始時期
他科目との兼ね合いがあるので,一概に「この時期から始めるのが正解!」というのはありません。
上にも述べたように,一般的な物理の勉強がベースになるので,2次試験に向けて日々物理を学習しているのであれば,特別に共通テスト対策としての物理の学習を早期から意識する必要はないでしょう。
高校3年生の夏頃から少しずつ過去問の演習を初めていけば十分です。
過去問の使い方
センター試験10年分程度に加え,共通テストの過去問は全て解きましょう。
直前の共通テストの問題は最後に取っておきたい気持ちはわかりますが,傾向を理解して日々の学習に活かすという意味で早めに解いておくのがオススメです。
そういえば去年はこれが問われていたな!といったことがわかっていれば,対策で力を入れるべき部分も見えてきやすいです!
直前期には,対策パックが販売されると思いますのでそちらも可能な限り演習しましょう。
共通テストの出題傾向に合わせて作成されているため,センター試験の過去問より優先順位は高いです!
また,過去問演習をする際には時間を短く設定して解きましょう。45分程度がおすすめです。
羽白は物理と化学を合わせて30分で演習していました。
同時並行で
過去問を解き進めつつ,教科書の読み込みを少しずつ進めましょう。
学校で配布されているもので十分です。300〜400ページであるものが多いので,計画的に読み進めることがポイントです。
他の勉強に疲れたときの息抜き程度に,少しずつ読み進めていくのがよいですね。
高3での学習の進め方
共通テストをあまり意識せずに,一般的な物理の学習を一通り進める。
高3の夏以降,教科書を一読する。
直前の対策
まずは基本の確認
教科書に載っている基本的な公式を「ちゃんと理解しているか?」を確認しましょう。
物理を初めて学習する人に説明するつもりで,その公式について自分の言葉で説明できればokです。
不安な部分は,その導出や意味について教科書や参考書で丁寧に確認しておきましょう。
再度教科書の読み直し
直前期は「問題をとにかく解く」という学習は効率が非常に悪いです。
たまたま解いた問題に似たものが出題されればよいですが,そうでなければ点数に直結しません。
幅広い範囲をさっーっと確認しながら,抜けがないかを確認しつつ,再度教科書を読み直すという勉強がオススメです。
直前ですので時間をかけすぎず。
パラパラとページをめくりながら,「そういえばこんなことがかいてあったなぁ」程度のペースで読み進め,不安な場所を重点的に確認しましょう。
直前の対策
直前に問題をひたすら解くのは非効率的!再度教科書の読み直しで基本事項と周辺事項(特に実験やら身の回りの物理現象やら)の確認を!
試験中の取り組み方
とにかく問題文をよく読む!
問題文は長いですが,そのぶんヒントも散りばめられています。
正しく状況設定を理解しながら,ヒントとなる部分,与えられている情報を丁寧に読むことが非常に重要です。
問題を解く中で手が止まってしまったときも,落ち着いて問題文を読み直すとよいでしょう。
問題を解く順番
時間がなくなることは考えにくいので,どの問題から解いてもよいでしょう。
後半は大きな1つの実験や事柄についての大問になるため,前半の小問から解き進めるのがオススメです。
心に余裕を持つ
「こんな設定見たことない!」と思っても安心してください。
だいたい周りの受験生も同じことを思っているはずです。
問題の設定,状況を知らないのが自分だけなんてことはまずないですからね!
むしろ共通テストはひねられた設定であることが多いので,「この問題見たことある!」とはなりにくいのです。
一見難しそうに見えても必ず落ち着いて。
教科書に載っている公式で解けます。焦らず問題文を読み直しながら紐解いていきましょう。
それでも焦ってしまったら
そういうこともあるでしょう。
そんなときは!トイレに行くのがオススメです!
試験会場のピリついた雰囲気から離れることで,思いの外リラックスできるかもしれません。
試験本番での心得
少しひねった出題ばかりなので,「見たことある問題」はまず出ません。見慣れない設定だからといって焦らないこと!
焦らずゆっくり問題文をよく読むこと!
まとめ
センター試験とは異なり,「公式の意味」や「身の回りの物理現象」についてしっかりと理解しておくことが求められます。
対策は早期から意識する必要はありませんが,教科書を一通り読むことで,各単元の内容を「実験」や「身の回りの現象」と結びつけておくことが重要です。
入試本番は焦らずに!最後まで自分を信じて…!