波動 物理基礎

弦振動

羽白 いむ

東京大学医学部医学科卒 現役医師
東大指導専門塾鉄緑会 物理・数学科元講師
物理基礎のトリセツ著者
数学のトリセツ共著者

弦振動

弦・気柱振動とは

波動の最後は,弦・気柱振動です。大学入試共通テストでも出題頻度の高い分野ですので,しっかりと理解しましょう。

まずは弦振動です。1本の弦の両端を固定して,弦を振動させます。

バイオリンや琴などの弦楽器がこの仕組みを利用して音を出していますね。

生徒

身近な例だと,輪ゴムを弾くような現象でしょうか。輪ゴムを切って1本のゴムにして,両端を持って真ん中を手で弾くと振動しますよね。これがまさに弦振動です。

図のように,両端を固定された弦について考えてみましょう。

弦の真ん中を弾くと,その振動が左右に同時に伝わっていきます。これらの波は弦の端で反射されて再び真ん中に戻ってきて,そしてそのまま反対の端にぶつかってまた反射して…,という往復運動を繰り返します。

すると弦には右に進む波と左に進む波が同時に発生することになりますから,条件が整えば定在波が発生します

定在波ですから,速さ,振動数,波長といった波の特徴を有するはずです。これらについて,1つずつ確認していきましょう。

速さ

弦を伝わる波の速さは,「弦の材質」と「弦を張る張力」によって決まります

弦の種類を変えたり,弦を張る強さを変えると,弦を弾いたときに出る音の性質が変わります。

これは,弦を伝わる波の速さが変化することに伴い,弦振動の振動数が変わるためです。

輪ゴムの太さを変えたり,輪ゴムを張る強さを変えたりすると,弾いたときの音の高さが変わるのはこのためですね。

生徒

振動数

弦を伝わる波の振動数はその状況によって異なります。問題の設定から読み取ることが大半です。

たとえば弦に音叉がつながれていて,その音叉が弦に振動を伝えているような状況では,音叉の振動数がそのまま弦振動の振動数に等しくなります

同一の音叉から出る音の振動数は固有のものであり,一定である。

弦に対して音叉を横につなぐと音叉の振動数と弦振動の振動数は等しくなる。一方で,弦に対して音叉を縦につなぐと,弦振動の振動数は,音叉の振動数の $\Bun12$ となる。

波長

弦振動においては,両端が固定されていることが大半です。

固定されているわけですから,定在波が生じている際には「節」になります。

この条件を満たすような定在波が発生するわけですが,最も簡単なのは図のような定在波ですね。

両端が節になっていて,その間に腹が1つだけ存在する状況です。

ここで,弦の長さを $L$ としましょう。図の状況のとき,定在波の節-節間隔は $\Bun{\lambda}{2}\mskip 5mu$ ですから,

$$L=\mskip 4mu\bun{\lambda}{2}\mskip 5mu\qquad\therefore \quad \lambda=2L$$として波長 $\lambda$ を求めることができます。

このような,定在波の腹が1つだけ生じる際の弦振動を基本振動と呼びます。

腹が複数発生する場合には…?

生徒


では,腹が2つ,3つある場合はどうなるでしょうか。

腹が2つの場合は,唇のような形をした「節-腹-節」の形が2つ,弦の中に収まっていますね。

この唇の横幅は節-節間隔 $\Bun{\lambda}{2}\mskip 5mu$ に等しいので,

$$L=\mskip 4mu\bun{\lambda}{2}\mskip 5mu\cdot2\qquad\therefore \quad \lambda=L$$と計算できます。

腹が3つの場合も同様に考えると,

$$L=\mskip 4mu\bun{\lambda}{2}\mskip 5mu\cdot3\qquad\therefore \quad \lambda=\mskip 4mu\bun23L$$として波長を求めることができます。

これらの振動はそれぞれ,$2$倍振動$3$倍振動と呼ばれています。

$n$ 倍振動について

では,$n$ 倍振動はどうでしょう?幅が $\Bun{\lambda}{2}\mskip 5mu$ の唇が $L$ の中に $n$ 個収まることになるので,

$$L=\mskip 4mu\bun{\lambda}{2}\mskip 5mu\cdot n\qquad\therefore \quad \lambda=\mskip 4mu\bun{2L}{n}\mskip 5mu$$として計算できますね。

「$n$ 倍振動とか言っているくせに,波長が $\bun{1}{n}\mskip 5mu$ 倍になっているじゃないか!ふざけるな!」と思ったあなた,非常に鋭いですね。

確かに波長は $\Bun{1}{n}\mskip 5mu$ 倍ですね…。

生徒

では弦を伝わる波の速さはというと,弦の種類も張力も変えないのでそのままです。

$v=f\lambda$ の式に注目したとき,$v$ が変化しないのに対して,波長 $\lambda$ が $\Bun{1}{n}\mskip 5mu$ 倍になっていますね。

ということは,$f$ は $n$ 倍になっているはずです。

つまり,$n$ 倍振動では,振動数が基本振動の振動数(基本振動数)の $n$ 倍になるのです。

問題へのアプローチ

それでは,弦振動についてまとめましょう。

弦振動

波動の基本公式「 $v=f\lambda$ 」の式を元に考える。

速さ $v$:弦の種類,張力によって決まる。

振動数 $f$:状況に応じて考える。音叉がつながれている際は音叉の振動数と等しくなる。

波長 $\lambda$:図をかいて考える!幅が $\Bun{\lambda}{2}\mskip 5mu$ の唇が何個収まるかを考えて立式する。

例題

距離 $L$ だけ離れた支柱A,B間に一定の張力で弦を張り,定在波を発生させた。間に節が1つだけある定在波の振動数が $f$,間に節が2つある定在波の振動数が $\fp $ であった。このとき,弦を伝わる波の速さ $v$ を求めよ。また,$\fp $ を $f$ を用いて表せ。

「間に節が1つだけある定在波」が生じている状況は $2$ 倍振動,「間に節が2つある定在波」が生じている状況は $3$ 倍振動です。

この点を踏まえて,問題を整理していきます。

$2$ 倍振動が生じている際,弦の長さ $L$ は節-節間隔の $2$ 倍に等しい。

よって,弦を伝わる波の波長 $\lambda$ について,$L=\mskip 4mu\bun{\lambda}{2}\mskip 5mu\cdot2=\lambda$ が成り立つ。波動の基本公式より $v=fL$ を得る。

$3$ 倍振動が生じている際も同様に考えると,弦を伝わる波の波長 $\lambda\prime $ について,$L=\mskip 4mu\bun{\lambda\prime }{2}\mskip 5mu\cdot3$ が成立する。

よって,$\lambda\prime =\mskip 4mu\bun{2L}{3}\mskip 5mu$ であることがわかる。

波の速さ $v$ は変化しないので,波動の基本公式 $v=\fp \lambda\prime $ に代入して,

$$v=\fp \cdot\lambda\prime =\fp \cdot\mskip 6mu\bun{2L}{3}\mskip 5mu$$を得る。

これに $v=fL$ を代入して整理すると,$\fp =\mskip 4mu\bun32f$ であることがわかる。

さて,上の例では丁寧に計算しましたが,$\fp =\mskip 4mu\bun32f$ であることは暗算で求められます。

基本振動数を $f_0$ としたとき,$2$ 倍振動の振動数は $f=2f_0$,$3$ 倍振動の振動数は $\fp =3f_0$ になるはずですから,$\fp =\mskip 4mu\bun32f$ になるのは当然なのです。

$n$ 倍振動の振動数 $f_n$ についても,$f_n=nf_0$ が成り立つので,$f_n=\mskip 4mu\bun{n}{2}\mskip 5muf$ としてすぐに計算できます。

$v=f\lambda$ の変化に注目する

例題のように1つ1つ丁寧に立式しても問題自体は解けますが,「$v=f\lambda$」の式の変化に注目するとより楽に問題が解けることが多いです。

弦の種類と張力を変えなければ式の左辺 $v$ は変わらないので,右辺 $f\lambda$ の値もそのままでないといけません。

よってたとえば,$f$ が $2$ 倍になったら $\lambda$ は $\Bun12$ 倍にならないといけませんし,$\lambda$ が $n$ 倍になったのであれば,$f$ は $\Bun{1}{n}\mskip 5mu$ 倍になるはずです。

羽白

この考え方が身に付くと楽に解ける問題が圧倒的に増えますので,問題演習を通じて習得しておきましょう。

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