正弦波
縄跳びの端(点$\rmA$)を手で持って,手を振動させて連続波を送り続けているような状況を考えてみます。
小学生の頃によくやりました。蛇みたいなアレですね。
手の動かし方によって波の形は変わりますが,縄跳びに伝わる波の形がきれいな $\sin$ カーブになったとしましょう。
このような $\sin$ カーブの形をした波を正弦波と呼びます。
これを図にすると上のようになります。
縄跳びを上から見た様子そのものだと思って下さい。
左端の点Aを手で持って矢印の向きに何往復もさせています。波は全体として右向きに進んでいくように見えます。
波の要素
正弦波について
正弦波についてもう少し考えてみましょう。
$\sin$ カーブの形をした波のことを正弦波と呼びましたが,$\sin$ カーブの波といってもいろいろありますよね。
波の大きさ,波が進む速さなど,その波を特徴づける要素がいくつかありますので,それらについて学びましょう。
まず,正弦波には山と谷があります。上の図に示した通りですが,波形の最も高いところが山,最も低いところが谷になります。
正弦波は見た目が $\sin$ のグラフと同様,周期性を持つ対称性のよい形になっています。
山から山が1周期分に対応するわけですが,波1つ分の長さのことを波長と呼びます(山から谷間での長さではないので注意!)。$\lambda$(ラムダ)という記号を用いて表すことが多いです。
また,山の高さ,ないしは谷の深さを振幅と呼びます(山の高さ$+$谷の深さではないので注意!)。
いずれも長さを表すので,単位は $\punit{m}$ です。
先ほど説明したように,1つ1つの媒質はその場で振動しているだけですが,波全体の形は進んでいるように見えます。
この波の形が単位時間($1$ 秒間)にどれだけ進むかを表すのが速さになります。
単位は速度と同じく,$\ms$ です。また,波が山1つ分移動するのにかかる時間を周期といいます。
周期と振動数
波全体は右に進んでいるとして,波の先端部が含まれる状態を図示します。
1つの媒質の動きについて確認してみましょう。
① の状態から,媒質の動きを確認します。
少しずつ時間を進めていくと,この媒質は上向きに動きはじめます。この媒質の変位が山の頂点に達した状態が ② です。
さらに波を右側に進めていくと,この媒質は下向きに動きはじめ,やがて ① と同じ位置に戻ってきます(③)。
媒質はこの位置を下向きに通過し,やがて谷底に到達します。④ の状態ですね。
その後,媒質は再び上向きに動きはじめ,① の位置に戻ります。
ここまでが1つの媒質に注目した1往復の運動となりますので,「① → ② → ③ → ④ → ①」にかかる時間がこの波の周期となります。
これは波形が1つ分ずれるのにかかる時間とも等しくなります。
① と ③ では媒質は同じ場所に位置しますが,① ではこの点を上向きに通過しており,③ では下向きに通過しています。波全体の形に注目すると,① と ③ では正反対になっていますよね。
① → ③ が1周期ではないので注意しましょう。
周期は時間を表しているので,単位は $\s$ になります。
最後に,振動数です。$f$ の文字を使って表現され,単位は $\punit{Hz}$(ヘルツ) です。
振動数は,「1秒間に波が何個分進むか」を表している値になります。
1つの媒質に注目するのであれば,「1秒間にその場で振動を何回行うか」を表しています。
波の要素のまとめ
正弦波:各媒質が単振動をしており,$\sin$ カーブの形をした波形が伝わる波動。
山と谷:波形の最も高いところが山,低いところが谷。
波長 $\lambda$:波1つ分の長さ。
振幅 $A$:山の高さ,谷の深さ。1つの媒質が基準点から最も離れる距離。
速さ $v$:波形が $1$ 秒間に進む距離。
周期 $T$:波形が1つ分ずれるのにかかる時間。1つの媒質が1往復の上下運動を行うのにかかる時間。
振動数 $f$:$1$ 秒間に波形何個分だけ波動が進むかを表した値。1つの媒質がその場で $1$ 秒間に行う振動運動の回数。
波動の基本公式
波が進む個数
先ほど学習した振動数についてもう少し見てみましょう。まずは以下の例を考えてみて下さい。
簡単な例①
周期が $2\s$ の進行波は,$1$ 秒間に波何個分だけ進むか。
周期が $2\s$ なので,波1個分だけ進むのに $2\s$ かかります。
ということは,$1\s$ の間には波 $0.5$ 個分しか進めません。
では,以下の場合はいかがでしょう。
簡単な例②
周期が $0.5\s$ の進行波は,$1$ 秒間に波何個分だけ進むか。
波1個分だけ進むのに $0.5\s$ しかかからないので,$1\s$ の間には波 $2$ 個分だけ進めますよね。
一般化
ここで考えた「$1$秒間に波何個分だけ進むか」というのは,振動数そのものです。
ということは上の例から,周期が $2\s$ なら振動数は $0.5\Hz$,周期が $0.5\s$ なら振動数は $2\Hz$ であることがわかります。
いずれの場合も振動数を求めるために,$\bun{1}{\text{(周期)}}$ を計算していることがわかります。
では,以下の場合はどうでしょうか。
簡単な例③
周期が $T\s$ の進行波は,$1$ 秒間に波何個分だけ進むか。
これまでの具体例と同じように,$\bun{1}{\text{(周期)}}$ を計算すればよいですね。
求める振動数を $f\Hz$ とすれば,$f=\Bun{1}{T}$ と計算できます。
この「周期と振動数の関係式」は非常に重要ですので必ず覚えて下さい(万が一忘れたとしても,具体例を考えてすぐに導けるようにしておくべきです)。
周期と振動数の関係
進行波の周期を $T\s$,振動数を $f\Hz$ とすれば,
$$f=\bun{1}{T}$$の関係式が成り立つ。
波の速さについて
続いて,波の速さについて考えてみましょう。速度や速さについては力学で扱った通りです。
以下の状況でしたらもう速さを求めるのは朝飯前ですね…?
簡単な例④
$5\s$ の間に $30\m$ だけ進む物体の速さ $v\ms$ を求めよ。
難しく考えることなく,
$$v=\Bun{30}{5}=6\ms$$として答えを導けるはずです。
では,これを進行波に当てはめて考えてみます。わかりやすくするため,1周期の間で考えます。
1周期ですから,経過する時間は波の周期 $T\s$ になります。この間に波は1つ分だけ進むので,移動距離は $\lambda\m$ になりますね。
これらを元に,以下を考えてみて下さい。
簡単な例⑤
$T\s$ の間に $\lambda\m$ だけ進む物体の速さ $v\ms$ を求めよ。
先ほどの動く物体の例と全く同じですね。同様に考えて,
$$v=\bun{\lambda}{T}\ms$$と計算できるはずです。
さらに,$f=\bun{1}{T}$ が成立するので,これを用いて書き換えると,
$$v=f\lambda$$が成立することがわかります。
波動の単元の中でも最も基本的で,使用する頻度も高い公式ですので確実に覚えましょう。
「ブイ イコール エフ ラムダ」と呪文のように唱えて脳裏に焼き付けてください。
波動の基本公式
進行波の速さ $v\ms$ は,波の振動数 $f\Hz$ および波長 $\lambda\m$ を用いて,
$$v=f\lambda$$と表せる。