原子物理 物理

コンプトン効果

羽白 いむ

東京大学医学部医学科卒 現役医師
東大指導専門塾鉄緑会 物理・数学科元講師
物理基礎のトリセツ著者
数学のトリセツ共著者

光子の運動量

運動量も考えられるはず

光電効果のセクションで,光量子仮説について学習しました。

羽白

光を光子という「粒」として考えるのであれば,運動量についても考えたいですよね。

運動量といえば $mv$ の形ですが,光子には質量がありませんのでこの形から運動量を考えることができません。

代わりに以下の形の式で運動量を考えます。

光子の運動量

振動数 $\nu$,波長 $\lambda$ の光について,光子の持つ運動量の大きさは,

$$p=\mskip 4mu\bun{h\nu}{c}\mskip 5mu=\mskip 4mu\bun{h}{\lambda}\mskip 5mu$$

で与えられる。$c$ は光速である。

式の変換は,$c=\nu\lambda$ を使えば簡単ですね。

光子はエネルギーが $h\nu$,運動量が $\Bun{h}{\lambda}\mskip 5mu$ というのは確実に覚えてください!

コンプトン効果

光の散乱

電子に光を当てると,光は散乱されます。散乱された光は,もとの光よりも波長が少し大きくなることが知られていました。

羽白

この現象も,光を光子として考えると説明が付きます。

電磁波としての光を電子に照射した,と考えるのではなく,光子と電子が衝突した,と考えればokです。

物理1529
羽白

さて,このときどんな式を立てたいですか…?

「衝突」なので,運動量保存則ですね…!具体的な式の立て方や,式変形の仕方について例題を通して確認しましょう。

例題

波長が $\lambda$ の光を静止している電子に当てた。電子は光の入射方向から $\varphi$ だけ時計回りに回転した方向に速さ $v$ で進んでいき,光は入射方向から反時計回りに $\theta$ だけ回転した方向に散乱された。散乱された光の波長は $\lambda\prime $ であった。この衝突について,図のような座標軸を取って考える。電子の質量を $m$,光速を $c$,プランク定数を $h$ として以下の設問に答えよ。

物理1530

衝突前後において,光子と電子の持つエネルギーの和は保存される。このことを示す式を立てよ。

衝突の前後で,光子と電子の運動量の和が保存される。このことを示す式を立てよ。

光子の波長の変化 $\varDelta \lambda$ を $\varphi,\,v$ を用いずに表わせ。ただし,$\varDelta \lambda=\lambda\prime -\lambda$ は $\lambda$ に比べて十分小さく,$\Bun{\lambda\prime }{\lambda}\mskip 5mu+\mskip 4mu\bun{\lambda}{\lambda\prime }\mskip 5mu\neareq 2$ としてよい。

(1) の解き方

光子のエネルギーは,$h\nu=\mskip 4mu\bun{hc}{\lambda}\mskip 5mu$ の形で表されるのでした。

電子の運動エネルギーは $\bun{1}{2}\mskip 5mumv^2$ とかけるので,エネルギー保存則は,

$$\bun{hc}{\lambda}\mskip 5mu=\mskip 4mu\bun{hc}{\lambda\prime }\mskip 5mu+\mskip 4mu\bun{1}{2}\mskip 5mumv^2\stext{\quad……\ ①}$$

として立式できますね。この式から,$\lambda\prime >\lambda$ であることがわかります。

(2) の解き方

力学で考えたときと同じように,$x$ 軸方向と $y$ 軸方向それぞれについて考えればokです。

光子の運動量の大きさは $\bun{h}{\lambda}\mskip 5mu$ の形で表されるので,

$$\begin{aligned}\stext{$x$ 軸方向:}\quad&\bun{h}{\lambda}\mskip 5mu=\mskip 4mu\bun{h}{\lambda\prime }\mskip 5mu\cos\theta+mv\cos\varphi \\\stext{$y$ 軸方向:}\quad&0=\mskip 4mu\bun{h}{\lambda\prime }\mskip 5mu\sin\theta-mv\sin\varphi\end{aligned}$$

と立式できますね。

(3) の解き方

(1),(2) の式を連立するだけなのですが,少々大変です!

一緒に手を動かしながら計算過程を確認していきましょう。

生徒

まず,$\varphi$ を消去します。運動量保存則から $\sin^2\varphi+\cos^2\varphi=1$ の形を作りたいので,

$$\begin{aligned}mv\cos\varphi&=\mskip 4mu\bun{h}{\lambda}\mskip 5mu-\mskip 6mu\bun{h}{\lambda\prime }\mskip 5mu\cos\theta\\[9pt]mv\sin\varphi&=\mskip 4mu\bun{h}{\lambda\prime }\mskip 5mu\sin\theta\end{aligned}$$

と変形しましょう。

辺々 $2$ 乗して足し合わせると,

$$\begin{aligned}\left(\bun{h}{\lambda}\mskip 5mu-\mskip 6mu\bun{h}{\lambda\prime }\mskip 5mu\cos\theta\right)^2+\left(\bun{h}{\lambda\prime }\mskip 5mu\sin\theta\right)^2&=(mv)^2(\sin^2\varphi+\cos^2\varphi)\\&=(mv)^2\stext{\quad……\ ②}\end{aligned}$$

と計算できます。これで $\varphi$ の消去は完了です!

続いて,エネルギー保存則を利用して $v$ を消去します。①式を変形すると,

$$(mv)^2=2mhc\left(\bun{1}{\lambda}\mskip 5mu-\mskip 6mu\bun{1}{\lambda\prime }\mskip 5mu\right)$$

となるので,これと②式を比べることで,

$$\begin{aligned}2mhc\left(\bun{1}{\lambda}\mskip 5mu-\mskip 6mu\bun{1}{\lambda\prime }\mskip 5mu\right)&=\left(\bun{h}{\lambda}\mskip 5mu-\mskip 6mu\bun{h}{\lambda\prime }\mskip 5mu\cos\theta\right)^2+\left(\bun{h}{\lambda\prime }\mskip 5mu\sin\theta\right)^2\\[9pt]&=\left(\bun{h}{\lambda}\mskip 5mu\right)^2+\left(\bun{h}{\lambda\prime }\mskip 5mu\right)^2-\mskip 6mu\bun{2h^2\cos\theta}{\lambda\lambda\prime }\mskip 5mu\end{aligned}$$

を得ます。

この式を両辺 $\bun{\lambda\lambda\prime }{2mhc}\mskip 5mu$ 倍すると,

$$\lambda\prime -\lambda=\mskip 4mu\bun{h}{2mc}\mskip 5mu\left(\bun{\lambda\prime }{\lambda}\mskip 5mu+\mskip 4mu\bun{\lambda}{\lambda\prime }\mskip 5mu-2\cos\theta\right)$$

になりますね。

右辺について,$\bun{\lambda\prime }{\lambda}\mskip 5mu+\mskip 4mu\bun{\lambda}{\lambda\prime }\mskip 5mu\neareq 2$ の近似を利用することで,

$$\varDelta \lambda=\mskip 4mu\bun{h}{mc}\mskip 5mu(1-\cos\theta)$$

として答えが得られます!

大変な計算ですが,何度も手を動かしてスラスラ計算できるようにしておきましょう。

羽白

コンプトン効果の問題はだいたいこの流れになるので,とにかく手を動かして練習あるのみ!

$\bun{\lambda\prime }{\lambda}\mskip 5mu+\mskip 4mu\bun{\lambda}{\lambda\prime }\mskip 5mu\neareq 2$ の近似もコンプトン効果の問題でよく使いますので慣れてください!

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