電子のエネルギー
さらなる考察
飛び出してくる電子のエネルギーと阻止電圧についてもう少し考えてみます。
これまでに登場した,
$$K\max=\varepsilon-W_0\stext{\quad……\ ①}$$
と
$$K\max=eV_0\stext{\quad……\ ②}$$
の2式から $K\max$ を消去すると,
$$eV_0=\varepsilon-W_0$$
となりますね。
両辺を $e$ で割って整理すると,
$$V_0=\mskip 4mu\bun{\varepsilon}{e}\mskip 5mu-\mskip 6mu\bun{W_0}{e}\mskip 5mu\stext{\quad……\ ③}$$
になります。
当てる光の振動数を固定して,光量を強くしても,阻止電圧 $V_0$ の値は変化しません。
これより,光のエネルギー $\varepsilon$ は,光の振動数によって決まることがわかります。
振動数を変化させる
そこで,当てる光の振動数 $\nu$ を変化させながら $V_0$ を測定し,結果をグラフにしてみましょう。
すると,図のような直線のグラフが得られます($\nu<\nu_0$ のときはそもそも電子が飛び出さないので阻止電圧が存在しません)。
このグラフは,$V_0=A\nu+B$ の形に表されることがわかりますね。③式と比べると,
$$\bun{\varepsilon}{e}\mskip 5mu=A\nu$$
が得られるので,$\varepsilon=eA\nu$,すなわち $\varepsilon$ は $\nu$ に比例していることがわかります。

ということで!
定数をまとめると $\varepsilon=h\nu$ という結果が得られます。この $h$ は プランク定数 と呼ばれる定数です。
$h\neareq 6.626\times10^{-34}\punit{J\cdot s}$ であることが知られています。
結果の解釈
光量子仮説
とんでもない実験結果が得られてしまいました。

光を「波」として考えると,説明が全く付きません。
そこでアインシュタインは,以下のように考えました。
光量子仮説
振動数が $\nu$ の光は,$\varepsilon=h\nu$ のエネルギーを持つ粒子の集合のように振る舞う。
つまり「光を波としてではなく粒子として考えよう!粒子1つが持つエネルギーは $h\nu$ で,それがいっぱい集まったものが光だ!」ということです。

どうですか?ぶっ飛んでると思いません?
それまでの常識をひっくり返して「光は粒として振る舞う!!」と主張したのがアインシュタインなのです。
もう天才としかいいようがないですね。この「光の粒」は 光子 と呼ばれています。
「衝突」としての理解
光を粒だと考えると,スムーズに実験結果が説明できます。
そもそも光電効果は,エネルギー $h\nu$ の光子1つと,エネルギー $-W$ の電子の「衝突」のように考えることができるのです。粒と粒の衝突です。
電子が飛び出るかどうかは光子1つのエネルギー $h\nu$ によって決まり,光量(当てる光子の数)は関係ないことがわかりますね。
弱い光子をいくらたくさんぶつけても電子は金属から飛び出ないのです。
二重性

では「光は波ではないのか」と言われるとそうではないのです。
もう何をいっているのかわけがわからなくなってきました…。
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光は「波としても粒子としても振る舞う,2つの顔を持った物質」と考えます。
この性質は,粒子と波動の二重性 と呼ばれます。
「結局どっちなの!」と白黒はっきりさせることはできません!

どちらの性質ももつ不思議なもの,と理解してください!
波でもあるがゆえ,波長を $\lambda$ としたとき,光速 $c$ は,$c=\nu\lambda$ によって計算できます。
これより,光のエネルギーは,
$$\varepsilon=h\nu=\mskip 4mu\bun{hc}{\lambda}\mskip 5mu$$
ともかくことができますね。
まとめ
全て説明できるように
以上の話をまとめると次の通りです。公式として丸暗記するのではなく,どうしてその式になるのかまでしっかりと説明できるようにしましょう!
光電効果の公式
振動数 $\nu$,波長 $\lambda$ の光は,
$$\varepsilon=h\nu=\mskip 4mu\bun{hc}{\lambda}\mskip 5mu$$
のエネルギーを持つ光子として振る舞う。ただし,$c$ は光速である。
仕事関数 $W_0$ の金属に振動数 $\nu$ の光を当てたときに飛び出す電子の最大運動エネルギーを $K\max$,阻止電圧を $V_0$ とすると,
$$eV_0=K\max=h\nu-W_0$$
が成りたつ。
さて,ここまでは光電効果の理屈を中心に説明してきましたので,例題で実際に公式を使う練習をしましょう。
例題
仕事関数が $W_0$ の金属に,振動数が $\nu$ である光を照射した。プランク定数を $h$,電子の質量を $m$ として以下の設問に答えよ。
飛び出す電子は様々な速さを持つ。最大の速さ $v$ を求めよ。
振動数を変化させていくと,$\nu>\nu_0$ のときのみ光電子が金属から飛び出すことがわかった。$\nu_0$ を求めよ。
エネルギー収支関係より,
$$h\nu=K\max+W_0=\mskip 4mu\bun12mv^2+W_0$$
が成立する。よってこれを整理して,
$$v=\sqrt{\bun{2(h\nu-W_0)}{m}\mskip 5mu}$$
$\nu=\nu_0$ となるとき,光電子がぎりぎり飛び出せる限界の状況となる。$K\max=0$ として考えればよいので,
$$W_0=h\nu_0\qquad\therefore \quad \nu_0=\mskip 4mu\bun{W_0}{h}\mskip 5mu$$
例題
光電管を用いて金属に光を当てる実験を行ったところ,次のグラフに示す結果が得られた。
続いて,当てる光の条件を変えて実験を行ったとき,グラフにそれぞれ変化が見られた。(1),(2) において,それぞれどのような条件を変えたか。簡潔に述べよ。
最大電流は,金属から飛び出した光電子の数を反映する。飛び出す光電子の数は当てる光の光量(光子の数)によって決まる。
したがって,当てる光の光量を下げたことがわかる。
阻止電圧 $V_0$ が小さくなっている。阻止電圧は,飛び出す光電子の最大運動エネルギーによって決まる。
この最大運動エネルギーは,当てる光の振動数によって,
$$K\max=h\nu-W_0$$
の通りに決まる。よって,当てる光の振動数を小さくしたことがわかる。