式の整理の方法
2つの方法があります。

両方ができる必要はありません。どちらかの方法でないと解けない問題も存在しません。
どちらか自分でやりやすい方法を確実に身に付けておきましょう!
三角関数を合成する方法
合成公式を使う
キルヒホッフの第二法則の式を少し変形すると,
$$V_0\sin\omega t=RI_0\sin(\omega t-\varphi)+\omega LI_0\cos\left(\omega t-\varphi\right)$$が得られます。
やや複雑ですが,$a=RI_0$,$b=\omega LI_0$,$\theta=\omega t-\varphi$ とすれば,右辺は $a\sin\theta+b\cos\theta$ の形になっています。
三角関数の合成公式を使うことで,
$$a\sin\theta+b\cos\theta=\sqrt{a^2+b^2}\sin(\theta+\alpha)$$と変形できますね。
$\alpha$ は,$-\pi<\alpha<\pi$ および $\sin\alpha=\mskip 4mu\bun{b}{\sqrt{a^2+b^2}\mskip 5mu}$,$\cos\alpha=\mskip 4mu\bun{a}{\sqrt{a^2+b^2}\mskip 5mu}$ を満たす角度です。
元の式の計算
さて,元の式に話を戻しましょう。
$$V_0\sin\omega t=\sqrt{a^2+b^2}\sin(\omega t-\varphi+\alpha)$$という形になっています。
両辺の係数同士は等しくなるので,
$$V_0=\sqrt{a^2+b^2}=I_0\sqrt{R^2+(\omega L)^2}$$が得られます。これを変形することで,
$$I_0=\mskip 4mu\bun{V_0}{\sqrt{R^2+(\omega L)^2}\mskip 5mu}$$であることがわかりますね。
式の解釈
三角関数についても,時刻 $t$ によらず $\sin\omega t=\sin(\omega t-\varphi+\alpha)$ が成立している必要があります。
$-\pi<\varphi<\pi$ および $-\pi<\alpha<\pi$ が成立していることを踏まえると,$\varphi=\alpha$ であれば ok です。
よって,
$$\tan\varphi=\tan\alpha=\mskip 4mu\bun{\sin\alpha}{\cos\alpha}\mskip 5mu=\mskip 4mu\bun{b}{a}\mskip 5mu=\mskip 4mu\bun{\omega L}{R}\mskip 5mu$$が得られます。
ベクトル図を使う方法
とっても便利!

数学では使わない方法なので真新しいかと思いますが,非常に便利な方法です!
まずは式の形に注目しましょう。
$$V_0\sin\omega t=RI_0\sin(\omega t-\varphi)+\omega LI_0\sin\left(\omega t-\varphi+\mskip 4mu\bun{\pi}{2}\mskip 5mu\right)\quad……\ ☆$$
です。
位相は違いますが,どの項も「$\sin$」でそろっています。
見方を変えると,「$\sin$ の値」は,ベクトルの $y$ 成分(つまり $y$ 座標)と考えることができますね。
$V_0\sin\omega t$ は,大きさが $V_0$,$x$ 軸となす角度が $\omega t$ のベクトルの $y$ 成分,といった具合です。
$y$ 成分だけで考えると逆に複雑なので,ベクトルの足し算として考えてしまいましょう。
ベクトルの足し算として
☆式は,以下の3つのベクトルについて,①=②+③ が成り立つことを意味しています。
3つのベクトル
大きさ $V_0$,$x$ 軸となす角度が $\omega t$ のベクトル
大きさ $RI_0$,$x$ 軸となす角度が $\omega t-\varphi$ のベクトル
大きさ $\omega LI_0$,$x$ 軸となす角度が $\omega t-\varphi+\mskip 4mu\bun{\pi}{2}\mskip 5mu$ のベクトル
本当は $y$ 成分についての足し算ですが,ベクトルの足し算が成立しているものとして考えるのがポイントです。
この状況を図示すると,次図のようになります。
② と ③ のベクトルがなす角度は $\Bun{\pi}{2}\mskip 5mu$ なので,長方形ができますね。
このような ①=②+③ というベクトルの足し算の関係が常に成立していれば,$y$ 成分同士の足し算も常に成立することとなるため,☆の式も常に成り立ちます。
長方形を元に
この長方形を元に,元の問題を考えていきます。$I_0$ についての式と,$\tan\varphi$ についての立式ができれば ok ですね。

注目するのは,図の直角三角形です。
三平方の定理から,
$$V_0\!^2=(RI_0)^2+(\omega LI_0)^2$$が成立することがわかりますね。
これを整理することで,
$$I_0=\mskip 4mu\bun{V_0}{\sqrt{R^2+(\omega L)^2}\mskip 5mu}$$であることがわかります。
$\varphi$ について
$\tan\varphi$ についても,直角三角形から直接求めることができますね。
$$\tan\varphi=\mskip 4mu\bun{\omega LI_0}{RI_0}\mskip 5mu=\mskip 4mu\bun{\omega L}{R}\mskip 5mu$$
となります。
慣れてしまえば便利!
いかがでしょう!「☆の式をベクトルの $y$ 成分の関係と見て 3 つのベクトルを復元して,☆の式が成立するように長方形を図示する」という方法でした!

数学では使わない方法ですが,なかなか画期的じゃないですか…?
慣れるまでは少々大変かもしれませんが,慣れてしまえば短時間でかけるようになるはずです!
インピーダンス
"抵抗値"について
交流回路全体の抵抗値に相当する値を インピーダンス と呼びます。
回路全体にかかる電圧の最大値 $V_0$ と,回路全体を流れる電流の最大値 $I_0$ を用いて,
$$Z=\mskip 4mu\bun{V_0}{I_0}\mskip 5mu$$で求めることができます。

オームの法則と同じ形ですね。
先ほど確認した例題の回路については,
$$I_0=\mskip 4mu\bun{V_0}{\sqrt{R^2+(\omega L)^2}\mskip 5mu} \qquad \therefore \quad Z=\mskip 4mu\bun{V_0}{I_0}\mskip 5mu=\sqrt{R^2+(\omega L)^2}$$としてインピーダンスを求めることができますね。