大前提
瞬時にできるように!
このセクションでは,より実戦的な交流回路についての問題を扱っていきます。
抵抗,コイル,コンデンサーについて「電流から電圧を求める」「電圧から電流を求める」が一瞬でできないとどうしようもありません。

本当に「一瞬で」できないとお話になりません…!
以下の例題は1分以内に解けるように何度も練習してください!
例題
抵抗値が $R$ の抵抗,自己インダクタンスが $L$ のコイル,電気容量が $C$ のコンデンサーについて,以下の問いに答えよ。
各素子に流れる電流が $I(t)=I_0\sin\omega t$ であるとき,各回路素子にかかる電圧 $V(t)$ を求めよ。
各素子にかかる電圧が $V(t)=V_0\sin\omega t$ であるとき,各回路素子に流れる電流 $I(t)$ を求めよ。
いずれも,最大値と位相を別に考える。抵抗はリアクタンスが $R$ であり,電流と電圧の位相はずれないので,
$$V(t)=RI_0\sin\omega t$$
コイルはリアクタンスが $\omega L$ であり,電圧の位相は電流の位相よりも $\Bun{\pi}{2}\mskip 5mu$ だけ進むので,
$$V(t)=\omega LI_0\sin\left(\omega t+\mskip 4mu\bun{\pi}{2}\mskip 5mu\right)$$
コンデンサーはリアクタンスが $\Bun{1}{\omega C}\mskip 5mu$ であり,電圧の位相は電流の位相よりも $\Bun{\pi}{2}\mskip 5mu$ だけ遅れるので,
$$V(t)=\mskip 4mu\bun{I_0}{\omega C}\mskip 5mu\sin\left(\omega t-\mskip 6mu\bun{\pi}{2}\mskip 5mu\right)$$
(1) と同様に考える。抵抗については,
$$I(t)=\mskip 4mu\bun{V_0}{R}\mskip 5mu\sin\omega t$$
コイルは電流の位相が電圧の位相よりも $\Bun{\pi}{2}\mskip 5mu$ だけ遅れるので,
$$I(t)=\mskip 4mu\bun{V_0}{\omega L}\mskip 5mu\sin\left(\omega t-\mskip 6mu\bun{\pi}{2}\mskip 5mu\right)$$
コンデンサーは電流の位相が電圧の位相よりも $\Bun{\pi}{2}\mskip 5mu$ だけ進むので,
$$I(t)=\omega CV_0\sin\left(\omega t+\mskip 4mu\bun{\pi}{2}\mskip 5mu\right)$$
問題へのアプローチ
実際の交流回路の問題については,以下の手順で解析を進めていきます。
問題へのアプローチ
なるべく多くの素子に共通する電流もしくは電圧を文字でおく。
各素子の電圧,電流の瞬時値を求める。
回路全体にキルヒホッフの第二法則またはキルヒホッフの第一法則を立てて,ベクトル図(又は三角関数の合成公式)を用いて解く。
それぞれのStepについて解説していきます!
「この電流(もしくは電圧)がわかれば,回路の情報がすべてわかる!」というものを設定します。
問題文で指定されている場合にはそれに従えばよいのですが,自分で設定する際には少々コツが必要です。

こちらについては実際の問題を通じて慣れていきましょう。
また,回路に複数の素子が含まれる場合,電源の電圧と,電源を流れる電流の位相は中途半端にずれます。
たとえば図のように,交流電源にコイルとコンデンサーが直列に接続されている状況を考えてみましょう。
コイルは電圧に対して電流の位相を遅らせる一方,コンデンサーは逆の働きをします。
実際に回路に流れる電流の位相が電圧に対してどれだけ遅れるか(あるいはどれだけ進むか)は,コイルの自己インダクタンス $L$ とコンデンサーの電気容量 $C$ の兼ね合いによって決まるので,実際に解いてみるまでわかりません。
そこで,「電流が電圧より $\varphi$ だけ位相が遅れる」というように,どちらの位相がどれだけ遅れるか(あるいはどれだけ進むか)を文字でおいて問題を解き進めます。
これが先ほどの例題で練習した部分です。各素子の情報を求めて回路の情報を埋めていきます。
あとは解くだけなのですが!!スムーズには解けないことが大半です。三角関数の合成公式や,ベクトル図を用いて解くことになります。こちらの方法については実際の例題を通して確認していきましょう。
例題
角周波数が $\omega$ の交流電源に,抵抗値 $R$ の抵抗と自己インダクタンス $L$ のコイルを直列につないだ回路がある。交流電源の電圧は,図の左側を高電位側として,$V(t)=V_0\sin\omega t$ である。以下の設問に答えよ。
回路に流れる電流を時計回りに $I(t)=I_0\sin(\omega t-\varphi)$ とおく。ただし,$\varphi$ は $-\pi<\varphi<\pi$ を満たしているものとする。時刻 $t$ において,抵抗にかかる電圧 $V_{\rmR}$ および,コイルにかかる電圧 $V_{\rmL}$ を求めよ。
回路におけるキルヒホッフの第二法則を立式せよ。
$I_0$ および $\tan\varphi$ を求めよ。
設定について

アプローチ手順に従って,順番に解いていきましょう。
本問の (1) では,電流が設定されていますが,自分で設定しなければいけない状況もあります。
この際,位相を $\omega t-\varphi$ とおくか,$\omega t+\varphi$ とおくか,悩むかもしれません。
結果としてどちらでも解けるのですが,状況に応じてわかりやすい方で設定できるようになっておくとよいでしょう。
今回は,「位相の差を生じさせない抵抗」と「電流の位相を $\Bun{\pi}{2}\mskip 5mu$ だけ遅らせるコイル」が直列に繋がれている状況ですので,「$\Bun{\pi}{2}\mskip 5mu$ ほどは遅れないけれども,多少は電流の位相が遅れるだろうな」と考えて $\omega t-\varphi$ と設定するのが正解です。
(1) の解き方
回路の電流が設定されているので,こちらを利用して各素子の電圧を求めていきましょう。
コイルと抵抗は直列に繋がれているので,流れる電流は $I(t)=I_0\sin(\omega t-\varphi)$ で共通です。
まずは抵抗について考えましょう。電圧の最大値は「オームの法則の形」から,$RI_0$ だとわかります。
位相は電流と電圧で共通しているので,
$$V_{\rmR}=RI_0\sin(\omega t-\varphi)$$です。
コイルについても同様に考えましょう。電圧の最大値は「オームの法則の形」から $\omega LI_0$ として求まります。
位相は「電流が電圧よりも $\Bun{\pi}{2}\mskip 5mu$ だけ遅れる」ことから,$\omega t-\varphi-\mskip 6mu\bun{\pi}{2}\mskip 5mu$ ですね。よって,
$$V_{\rmL}=\omega LI_0\sin\left(\omega t-\varphi+\mskip 4mu\bun{\pi}{2}\mskip 5mu\right)$$として答えが得られます。
(2) の解き方
回路図を見ながら立式するだけです。キルヒホッフの第二法則を立式する際には,最大値でも実効値でもなく必ず瞬時値を用いてください!
$V(t)=V_{\rmR}+V_{\rmL}$ が成立するので,
$$V_0\sin\omega t=RI_0\sin(\omega t-\varphi)+\omega LI_0\sin\left(\omega t-\varphi+\mskip 4mu\bun{\pi}{2}\mskip 5mu\right)$$で ok です。
(3) の解き方
さて,あとはキルヒホッフの第二法則の式を解いて $I_0$ と $\tan\varphi$ を求めるだけです!!
しかし,簡単には解けないですね…。
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さて,(2) の式を解く方法を考えていきましょう。「交流回路②」へと続きます!