抵抗を用いた回路
抵抗に接続
瞬時値が $V(t)=V_0\sin\omega t$ で表される交流電圧を,抵抗値が $R$ の抵抗にかけるとどのようなことが起こるかを考えてみましょう。
まず,$\sin\omega t$ の値は,時間経過にしたがって $-1\leqq \sin\omega t\leqq 1$ の範囲を周期的に変動します。
よって,$V(t)$ の値は $-V_0$ から $V_0$ の範囲で変化することがわかりますので,$V_0$ が電圧の最大値であることがわかります。
キルヒホッフの第二法則
抵抗を右向きに流れる電流を $I(t)$ としましょう。この $I(t)$ も時刻 $t$ の関数となるので,瞬時値です。
さて,この交流回路について考える上でとても大切なことをいいます。各瞬間で,キルヒホッフの第二法則は必ず成立します。
各瞬間の話ですので,最大値や実効値ではなく,必ず瞬時値を使って立式しましょう。
図の抵抗を用いた回路では,抵抗にかかる電圧は $RI(t)$ となりますので,
$$V(t)=RI(t)$$が成立します。よって,
$$I(t)=\mskip 4mu\bun{V_0}{R}\mskip 5mu\sin\omega t$$であることがわかりますね。
これより,電流の最大値が $I_0=\mskip 4mu\bun{V_0}{R}\mskip 5mu$ であることがわかります。
結果として,最大値についても,
$$V_0=RI_0$$という「オームの法則の形」が成立しています。
位相
また,波動の単元で考えた場合と同様に,三角関数の中身の部分を 位相 と呼びます。
$$V(t)=V_0\sin\omega t,\,I(t)=\mskip 4mu\bun{V_0}{R}\mskip 5mu\sin\omega t$$であり,電流と電圧は同位相であることがわかりますね。
これはつまり「電圧が最大のときには電流も最大になり,電圧が最小のときには電流も最小となる」といった具合に,電圧と電流が揃って時間変化をするということです。
交流電圧と抵抗
抵抗値が $R$ の抵抗に,$V(t)=V_0\sin\omega t$ の電圧をかけると,
$$I(t)=I_0\sin\omega t=\mskip 4mu\bun{V_0}{R}\mskip 5mu\sin\omega t$$
の電流が流れる。
最大値の関係:$V_0=RI_0$ という「オームの法則の形」が成立。
位相の関係:電圧と電流の位相は等しい。
上のまとめのように,電流と電圧の関係を考えるときに「最大値同士の関係」と「位相同士の関係」をわけて考えるのがポイントになります!
抵抗における消費電力
消費電力

先ほどの回路で,抵抗における消費電力を計算してみましょう。
電流の値は時刻によって変化しますので,消費電力も時刻によって変化します。
計算式自体は直流の場合と同じですが,瞬時値を用いて,
$$P=RI(t)^2=RI_0\!^2\sin^2\omega t$$と計算します。
式からも時間変化をすることがわかりますが,各時刻における消費電力を考えることはありません…!
なぜかというと,交流の周波数 $f$ は $50\Hz$ もしくは $60\Hz$ であることが一般的で,$1\s$ の間にものすごい勢いで変化しているためです。
1秒間に50回も周期的な変化をするので,ある瞬間の消費電力を考えたところであまり嬉しいことはないのです。
考えるべきは平均
むしろ気になるのは,「その抵抗に交流電流が流れ続けたら,平均して $1\s$ の間にどのくらいのジュール熱が発生するか」という平均値です。
実際に自宅で家電製品を使うときも,「しばらく使い続けたら,平均してどのくらいの熱が発生するか」を知りたいですよね。

ということで,消費電力 $P$ の時間平均 $\overline{P}$ を求めてみましょう。
$R_0I_0!^2$ は一定値であることに注意すると,
$$\overline{P}=RI_0\!^2\overline{\sin^2\omega t}$$であることがわかります。
三角関数の平均
「$\sin$ の $2$ 乗の平均」を考えるために,半角公式を利用しましょう。
$$\sin^2\omega t=\mskip 4mu\bun{1-\cos2\omega t}{2}\mskip 5mu=\mskip 4mu\bun12-\mskip 6mu\bun12\sin2\omega t$$
ですね。
時間変化する部分,つまり $\sin2\omega t$ の時間平均を考えてみましょう。グラフの概形は次の通りです。
このグラフを見れば,平均値は一目瞭然ですね!
そう,$0$ です!
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ということで,
$$\overline{\sin^2\omega t}=\overline{\bun12-\mskip 6mu\bun12\sin2\omega t}=\mskip 4mu\bun12$$であることがわかりました!
平均の計算
ということで,$\overline{P}=RI_0\!^2\overline{\sin^2\omega t}=\mskip 4mu\bun12RI_0\!^2$ です。
式変形することで,
$$\overline{P}=R\left(\bun{I_0}{\sqrt{2}\mskip 5mu}\right)^2$$と書き換えることができるため,$\Bun{I_0}{\sqrt{2}\mskip 5mu}$ の直流電流が流れている抵抗と同じ消費電力になっていることがわかりますね。
実効値との関連
「最大値が $I_0$ の交流電流が流れる抵抗での消費電力は,$\Bun{I_0}{\sqrt{2}\mskip 5mu}$ の直流電流が流れる抵抗での消費電力に等しい」わけです。
つまりこの $\Bun{I_0}{\sqrt{2}\mskip 5mu}$ は,電流の実効値に相当することがわかります!
電圧についても考えてみましょう。$V_0=RI_0$ ですので,
$$\begin{aligned}\overline{P}&=R\left(\bun{I_0}{\sqrt{2}\mskip 5mu}\right)^2\\[9pt]&=R\left(\bun{V_0}{R\sqrt{2}\mskip 5mu}\right)^2\\[9pt]&=\mskip 4mu\bun{\left(\bun{V_0}{\sqrt{2}\mskip 5mu}\right)^2}{R}\end{aligned}$$と書き換えることができます。
直流回路であれば,消費電力は $P=\mskip 4mu\bun{V^2}{R}\mskip 5mu$ という形で計算できるので,これと比較することで,$\Bun{V_0}{\sqrt{2}\mskip 5mu}$ が電圧の実効値であることがわかりますね。
最大値と実効値
電圧の瞬時値が $V(t)=V_0\sin\omega t$ のとき,電圧の最大値は $V_0$,実効値は $\bun{V_0}{\sqrt{2}\mskip 5mu}$ となる。
同様に,電流の瞬時値が $I(t)=I_0\sin\omega t$ のとき,電流の最大値は $I_0$,実効値は $\bun{I_0}{\sqrt{2}\mskip 5mu}$ となる。
電圧も電流も,実効値は最大値の $\bun{1}{\sqrt{2}\mskip 5mu}$ 倍です!

しっかりと覚えましょう!