物理 電磁気学

電磁力

羽白 いむ

東京大学医学部医学科卒 現役医師
東大指導専門塾鉄緑会 物理・数学科元講師
物理基礎のトリセツ著者
数学のトリセツ共著者

電磁力

ローレンツ力の集まり

電流の正体は電子の流れでした。

磁場中を電流が流れると,電子はローレンツ力を受けるので,電流全体としても磁場から力を受けることになります。この力を 電磁力 と呼びます。

羽白

どのような力なのか,考えてみましょう。

モデル化

長さが $l$,断面積が $S$ の導線に流れる電流について考えます。話をわかりやすくするため,電流と同じ向きに $+e$ の電荷が流れているものとして考えましょう。

電荷の速さはいずれも $\overline{v}$ であるものとし,導線内には単位体積あたり $n$ 個の電荷が存在するものとします。

物理950

この領域に紙面手前から奥向きに強さが $B$ の磁束密度をかけると,電荷はローレンツ力を受けますね。

1つの電荷が受けるローレンツ力の大きさは,$f=qvB$ でした。

この導線の体積は $Sl$ ですので,内部には $nSl$ 個の電荷が存在します。

よって,電流全体が受ける力の大きさは,
$$F=e\overline{v}B\cdot nSl=l\cdot ne\overline{v}S\cdot B$$です。以前学習したように,$I=ne\overline{v}S$ の関係式が成り立つので,これを利用することで,
$$F=lIB$$と整理できます。

これが電磁力の大きさです!

生徒

簡単な例

簡単な例でも確認しておきましょう。

次図のように,紙面手前から奥向きの磁束密度 $B$ がかけられた領域を考えます。

物理940

長さ $l$ の導線に大きさが $I$ の電流が下向きに流れていたとき,電流が受ける電磁力の大きさは,
$$F=lIB$$となるわけですね。

向きの決め方

電磁力の向きはローレンツ力と同様,フレミングの左手の法則 で求めます。

物理939
羽白

中指・人差指・親指の順に「電・磁・力」という覚え方は一緒です。

「電」は電流の向き,「磁」は磁場の向き,「力」は電磁力の向きにそれぞれ対応します。

対応関係が少しだけ異なりますが,ローレンツ力と混乱することはないでしょう。

電磁力

磁場中を電流が流れると,電流は電磁力を受ける。電磁力の大きさは,導線の長さ $l$,電流の大きさ $I$,磁束密度の大きさ $B$ を用いて,

$$F=lIB$$

と表される。向きはフレミングの左手の法則を用いて求める。

電流と磁場が直行しない場合

直行しないとき

ローレンツ力のときと同様,電流のうち磁場に直交する成分の大きさを用いて「$lIB$」の形を利用します。

次図のように,電流と磁場のなす角度が $\theta$ である場合について考えてみましょう。

物理941

電流のうち,磁束密度に垂直な方向成分の大きさは $I\sin\theta$ です。

よって,「$lIB$」の $I$ の部分を $I\sin\theta$ として,
$$F=lI\sin\theta\cdot B=lIB\sin\theta$$と考えれば ok です。

ローレンツ力のときと同じですね!

生徒

向きについてもフレミングの左手の法則を用いて同様に考えることができますが,電磁力の向きは電流にも磁場にも必ず直交する ことはしっかりと意識しておきましょう。

ただし,電磁力はローレンツ力と異なり,仕事をすることがあるので注意してください!

例題

十分に長い2本の平行導線 $\rmP$,$\rmQ$ を距離 $l$ だけ離し,それぞれに大きさが $I$ の電流を上向きに流す。真空の透磁率を $\mu$ として以下の問いに答えよ。

物理942

導線 $\rmP$ を流れる電流が,$\rmQ$ 上の点に作る磁場の大きさ $H_1$ を求めよ。

導線 $\rmQ$ の長さ $L$ の部分が,導線 $\rmP$ を流れる電流から受ける力の大きさ $f_1$ およびその向きを求めよ。

導線 $\rmP$ の長さ $L$ の部分が,導線 $\rmQ$ を流れる電流から受ける力の大きさ $f_2$ およびその向きを求めよ。

直線電流のまわりには,大きさが $H=\mskip 4mu\bun{I}{2\pi r}\mskip 5mu$ で表される円形の磁場が生成される。

導線同士の距離が $l$ なので,
$$H=\mskip 4mu\bun{I}{2\pi l}\mskip 5mu$$

また,右ねじの法則より,磁場の向きは紙面手前から奥向きである。

物理943

導線 $\rmP$ を流れる電流が導線 $\rmQ$ 上の点に作る磁束密度の大きさ $B_1$ は,
$$B_1=\mu H_1=\mskip 4mu\bun{\mu I}{2\pi l}\mskip 5mu$$

よって,導線 $\rmQ$ が受ける電磁力の大きさは,
$$f_1=LB_1I=\mskip 4mu\bun{\mu LI^2}{2\pi l}\mskip 5mu$$

電磁力の向きは,フレミングの左手の法則より,図の右向きである。

物理944

作用・反作用の法則より,導線 $\rmP$ が導線 $\rmQ$ から受ける力は,導線 $\rmQ$ が導線 $\rmP$ から受ける力と等大逆向きである。

よって,
$$f_2=f_1=LB_1I=\mskip 4mu\bun{\mu LI^2}{2\pi l}\mskip 5mu$$

向きは図の左向き。

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