物理 電磁気学

半導体とダイオード

羽白 いむ

東京大学医学部医学科卒 現役医師
東大指導専門塾鉄緑会 物理・数学科元講師
物理基礎のトリセツ著者
数学のトリセツ共著者

半導体

半導体とは

電流の流れやすさが導体と不導体の間の物質を 半導体 と呼びます。

金属ほど自由電子を無数に持っているわけではないけれども,ある程度は自由電子(あるいはそれに準ずるもの)を持っているという物質です。

性質によって2つの種類にわけることができるので,それぞれについて確認してみましょう。

n型半導体

ケイ素($\ce{Si}$)に微量のリン($\ce{P}$)を混ぜた物質を考えてみましょう。ケイ素は価電子を4つ持ち,それ単体では共有結合による結晶を作ります。

そこに価電子を5つ持つリンが混ざると,4つが共有結合に使用されて1つの価電子が余ります。この余った価電子が自由電子として電流を流す役割を担うのです。

このような,電流の担い手を キャリア と呼び,自由電子がキャリアとなる半導体を n型半導体 といいます。

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自由電子は負の電荷を持つため,negarive の頭文字を取って「n型」と呼ばれている。

p型半導体

同様の考え方で,ケイ素($\ce{Si}$)に微量のアルミニウム($\ce{Al}$)を混ぜた物質を考えてみます。

アルミニウムは価電子を3つしか持たないため,共有結合に必要な価電子が1つ足りない状態となります。

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本来なら自由電子があるところに穴ぼこができてしまうわけです。

この穴ぼこは「電子が不足している場所」なので正の電荷を持ち,ホール(正孔) と呼ばれます。他の場所がこのホールの場所へ移動してくると,ホールもその自由電子の場所へと移動します。

このように,ホールが移動していくことによって電流が流れます。ホールがキャリアとなる半導体は p型半導体 と呼ばれます。

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ホールは正の電荷を持つため,positive の頭文字を取って「p型」と呼ばれている。

不純物半導体

n型半導体やp型半導体のように,不純物を混ぜることで作られる半導体を 不純物半導体 といいます。

不純物を含まない半導体は真性半導体と呼ばれる。

温度が上昇するほど半導体は電流を流しやすくなる。

ダイオード

2つの半導体の接続

p型半導体とn型半導体を接続すると,「p型半導体側からn型半導体側へのみしか電流を流さない」という素子になります。

これを 半導体ダイオード(あるいは単純に ダイオード)と呼びます。回路図は次の通りで,矢印の方向にのみ電流が流れます。

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回路中でのダイオードの扱い

パターン化!

ダイオードが組み込まれた回路について考える問題があります。

簡単な問題であれば,特に難しく考えるとなく「一方向にしか流れない」という知識のみで解けるのですが,複雑な問題に対しては解き方を知っておく必要があります。

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代表的な以下の2パターンについて確認していきます。

特性曲線が与えられているタイプ

非オーム抵抗と同様

通常の非オーム抵抗と同様に解けばokです。

ダイオードの電圧と電流を文字で設定してキルヒホッフの第二法則を立式して,得られた関係式をグラフにかき込んで解く,というお決まりのパターンですね。

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ダイオードの特性曲線は直線として与えられることが多いため,これを数式化してしまうという方法も利用できます。

特性曲線が与えられていないタイプ

難しい…!

ダイオードの部分に電流が流れているのかどうかを考えるタイプの問題です。こちらのタイプは難しいことが多いのですが,以下の手順で解いていきます。

アプローチ方法

① ダイオードの部分には電流が流れていないものとして考える。

② 回路の状況を整理し,ダイオードの両端の電位を求める。

③ 順方向に電圧が加わっている場合は電流が流れる。電流が流れるものとして再び回路の状況を整理する。

これだけを読んでもわかりづらいと思いますので,実際の問題を解きながら確認していきましょう。

例題

起電力が $10\V$ の電池と,抵抗値がそれぞれ $2.0\punit{\Omega},\,4.0\punit{\Omega},\,6.0\punit{\Omega}$ の抵抗 $\rmR_1$,$\rmR_2$,$\rmR_4$,および抵抗値を自由に変えられる可変抵抗 $\rmR_3$ を図の通りに接続する。回路中のダイオードは順方向のみに電流を流す。以下のそれぞれの場合について,抵抗 $\rmR_3$ にかかる電圧を求めよ。

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$\rmR_3$ の抵抗値が $2.0\punit{\Omega}$ のとき。

$\rmR_3$ の抵抗値が $8.0\punit{\Omega}$ のとき。

手順に沿って

アプローチ手順に従って考えていきます。

ダイオードに電流が流れていないものと考える

$\rmR_1$ と $\rmR_3$ を流れる電流が共通なので,その大きさを $i_1$ とおきましょう。

同様に,$\rmR_2$ と $\rmR_4$ を流れる電流が共通なので,その大きさを $i_2$ とします。

ダイオードの両端の電位を求める

$\rmR_3$ の抵抗値を $R_3$ として,抵抗に電圧をかき込んでいきましょう。

キルヒホッフの第二法則を用いて $i_1,\,i_2$ を計算して,オームの法則から電圧の大きさを求めて…,と定石通り計算してもよいのですが,よりシンプルな方法でもできるように練習をしておきましょう。

下側のループを見ると,$\rmR_2$ と $\rmR_4$ の電圧の合計が $10\V$ になることがわかります。

そしてこれらの抵抗に流れる電流は共通なので,$V=RI$ の式を踏まえると,抵抗値 $R$ の比と電圧 $V$ の比が等しくなることがわかりますね。

抵抗値の比は $4.0:6.0=2:3$ なので,電圧の比も $2:3$ です。合計が $10\V$ であることから,それぞれの電圧が $4.0\V,\,6.0\V$ であることがわかります。

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同様に,全体のループでも考えてみましょう。

$\rmR_1$ と $\rmR_3$ の電圧の比は,やはり抵抗値の比に等しくなります。つまり,$R_3=2.0\punit{\Omega}$ であれば $2.0:2.0=1:1$ です。

合計が $10\V$ ですので,$\rmR_1$,$\rmR_3$ の電圧はそれぞれ,$5.0\V,\,5.0\V$ であることがわかります。

続いて,図の $\rmC$ 点を基準として,ダイオードの両端 $\rmA$ 点,$\rmB$ 点の電位を求めましょう。

どちらも $\rmC$ 点を出発して,電圧の三角形を1つ上れば ok ですね。

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図から,$\rmA$ 点の電位は $V_{\rmA}=5.0\V$,$\rmB$ 点の電位は $V_{\rmB}=6.0\V$ であることがすぐにわかります。

同様の方法で $\rmR_3=8.0\punit{\Omega}$ の場合も計算しましょう。

下側のループはそのままなので,$V_{\rmB}=6.0\V$ です。回路全体のループで考えたとき,$\rmR_1$,$\rmR_3$ の抵抗値の比は $2.0:8.0=1:4$ なので,抵抗 $\rmR_3$ にかかる電圧が $8.0\V$ であることがわかりますね。

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よって,$V_{\rmA}=8.0\V$ です。

回路の状況を整理する

まず (1) について。

$V_{\rmA}=5.0\V$,$V_{\rmB}=6.0\V$ で $V_{\rmA}<V_{\rmB}$ です。よって,ダイオードには逆方向の電圧がかかっているため,電流は流れません!

つまり,Step1で「ダイオードには電流が流れない」として考えたのが正しかったことがわかりますので,Step2で考えた回路の状況が実際の回路の状況になります。

よって求める電圧は,$5.0\V$ です。

続いて (2) について。

$V_{\rmA}=8.0\V$,$V_{\rmB}=6.0\V$ で $V_{\rmA}>V_{\rmB}$ です。よって,ダイオードには順方向の電圧がかかっているため,電流が流れていたことがわかります。

つまり,Step1で考えた「ダイオードには電流が流れない」という前提がそもそも間違っていたことになるので,ダイオードに電流が流れるものとして改めて回路の状況を整理する必要があります。

この際,ダイオードの部分は通常の導線と同じものと考えて ok です(電圧はかかりません)。

つまり,次図の回路と同様に考えてしまってよいということになります。

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ということで,ここからは通常の抵抗回路の問題です!

電流を設定してこの回路についてキルヒホッフの第二法則を考えていくわけですが,各抵抗を流れる電流を $i_1,\,i_2,\,i_3,\,i_4$ と設定せずに,比をうまく利用しながら解いていきましょう。

比を用いて

今回は抵抗 $\rmR_3$ の電圧を求めたいので,$\rmR_3$ に流れる電流を $i$ とおきましょう。続いて,右上のループに注目します。抵抗 $\rmR_3$,$\rmR_4$ の電圧が等しいことがわかりますね。

$V=RI$ の式を踏まえると,電流 $I$ の大きさの比は抵抗 $R$ の比の逆比になります。抵抗 $\rmR_3$,$\rmR_4$ の抵抗の比は $5:6$ ですので,電流の大きさの比は $6:5$ です。よって,抵抗 $\rmR_4$ に流れる電流の大きさが $\Bun56i$ であることがわかります。

$\rmR_3$,$\rmR_4$ に流れる電流の大きさ合計は,
$$i+\mskip 4mu\bun56i=\mskip 4mu\bun{11}{6}\mskip 5mui$$ですね。

左上のループについて同様に考えると,抵抗 $\rmR_1$,$\rmR_2$ に流れる電流の大きさの比が $4:5$ であることがわかります。

キルヒホッフの第一法則を踏まえると,抵抗 $\rmR_1$,$\rmR_2$ に流れる電流の大きさの合計と,$\rmR_3$,$\rmR_4$ に流れる電流の大きさ合計は等しいことがわかります。

これより,抵抗 $\rmR_1$ に流れる電流の大きさが,
$$\Bun{11}{6}\mskip 5mui\times\mskip 6mu\bun{4}{9}\mskip 5mu=\mskip 4mu\bun{22}{27}\mskip 5mui$$として得られます。

以上から,抵抗 $\rmR_1$ にかかる電圧が $5\times\mskip 6mu\bun{22}{27}\mskip 5mui=\mskip 4mu\bun{110}{27}\mskip 5mui$,抵抗 $\rmR_3$ にかかる電圧が $5i$ であることがわかります。回路全体のキルヒホッフの第二法則から,
$$\bun{110}{27}\mskip 5mui+5i=10$$が成立するため,これを整理することで,
$$i=\mskip 4mu\bun{54}{49}\mskip 5mu$$として $i$ を求めることができます。よって,求める答えは,
$$5i=\mskip 4mu\bun{270}{49}\mskip 5mu\V$$です!

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