電流を具体的に考える準備
電流とは
物理基礎で,電流がどのようなものかについて学びました。

この電流について,より詳しい表現を確認してみましょう。
断面積が $S$ の導線に注目します。この導線に電流が流れている際は,無数の自由電子が導線内を動いています。
その速さはバラバラの値ですが,平均して $\overline{v}$ であるものとしましょう。ここから先は,すべての自由電子が $\overline{v}$ の速さで流れているものと考えてください。
電気量の計算
この導線を流れる電流の大きさを求めるためには,導線のある部分に注目して,その断面を単位時間に通過する電気量を求めればokでした。
そこで,導線の色を付けた断面の部分(面 $\rmS$ とします)に注目し,この面を単位時間に通過していく電気量を求める方法を考えます。
ゴールできるのはどのカタツムリ?
5匹のかたつむりがレースをしています。ゴール直前のある瞬間,かたつむり $\rmA〜\rmE$ はゴールまであとそれぞれ $3.6\cm,\,2.1\cm,\,6.3\cm,\,1.2\cm,\,8.5\cm$ でした。5匹のカタツムリの速さがいずれも $5.0\punit{cm/s}$ であるとき,単位時間以内にゴールできるカタツムリはどのカタツムリですか?
突然カタツムリが出てきて戸惑った皆さん,すみません。

でもとってもわかりやすい例なんです。
「秒速 $5.0\punit{cm/s}$ のカタツムリってだいぶ速くない?」って気付いてしまったとしても気にしないで話を聞いてください。
ゴールできるかできないか
さて,単位時間以内というのは「$1\s$ 以内」ということですので,$1\s$ 後の状況を確認してみましょう。
どのカタツムリも $5.0\punit{cm/s}$ で進んでいますので,$1\s$ 後には $5.0\cm$ だけ進んだ位置にいるはずです。
結果として,カタツムリ $\rmA$,$\rmB$,$\rmD$ はゴールできていますね。カタツムリ $\rmC$,$\rmE$ は,もともとゴールから $5.0\cm$ 以上離れた位置にいたため,ゴールできなかったわけです。
結論
つまり,「ゴールからの距離が $5.0\cm$ 以内の範囲にいるカタツムリのみが,単位時間以内にゴールできる」ことがわかります。
残念ながら(?)カタツムリとはここでお別れですが,以上の話を踏まえてもともとの電流の話を考えてみましょう。
電流の具体的な計算
電子の個数
単位時間あたりに導線の面 $\rmS$ を通過する電気量を求めるのが目標でした。
その前にまずは「何個の電子が単位時間以内に面 $\rmS$ を通過するか」を考えます。
が,これって,先程のカタツムリの話と全く同じですよね…!?
面 $\rmS$ を通過することができる電子は,ゴールである面 $\rmS$ から $\overline{v}$ 以内の範囲に存在する自由電子になります。

つまり,図の円柱内の自由電子ということです。
円柱の体積は,$\overline{v}S$ ですね。導線の単位体積あたりに存在する自由電子の数を $n$ 個とすれば,円柱内の自由電子の個数は $n\overline{v}S$ 個です。
電気量の計算
自由電子1つあたりの電荷は $-e$ ですので,$n\overline{v}S$ 個の自由電子が持つ合計の電気量は $-ne\overline{v}S$ です!
よって,単位時間に面 $\rmS$ を通過する電気量は左向きに $-ne\overline{v}S$ ですね。

この電気量がまさに電流です。
しかし,これでは負の値となってしまってややこしいため,「右向きに $ne\overline{v}S$ の電流が流れる」と考えればokです!
電流の大きさ
断面積 $S$ の導線内を流れる電流の大きさ $I$ は,自由電子の平均の速さ $\overline{v}$,導線内の単位体積あたりの電子の数 $n$,電気素量 $e$ を用いて,
$$I=ne\overline{v}S$$
と表される。

この値,公式として覚えてしまってください!
「$ne\overline{v}S$」ってよく見ると「news」っていう英単語に似ていますよね。「愛はnews!」って覚えるのがおすすめです!
オームの法則の確認
より丁寧に
物理基礎でオームの法則について学習しました。

このオームの法則について,より丁寧に考えてみましょう。
上図のような,断面積 $S$,長さ $l$ の抵抗を流れる自由電子について考えます。
この抵抗には,電圧 $V$ がかかっており,右向きの電流 $I$ が流れているものとします。
電子が受ける抵抗力
まず,自由電子の動く向きですが,これは電流と反対向きなので左向きです。平均の速さを $\overline{v}$ としましょう。
自由電子が動いているのは抵抗の内部ですので,速度と逆向きの抵抗力を受けます。
この抵抗力の大きさは,速さ $\overline{v}$ に比例することが知られているため,比例定数を $k$ とすると,$k\overline{v}$ とかくことができます。
電子が受けるクーロン力
一方,抵抗内には電場が存在します。抵抗の両端の電圧が $V$,抵抗の長さが $l$ ですので,一様電場の公式を用いることで $E=\mskip 4mu\bun{V}{l}\mskip 5mu$ であることがわかりますね。
左側が高電位なので,電場の向きは図の右向きです。電子は負の電荷 $-e$ を持つので,電場と逆向きに大きさが $eE$ の力を受けます。
力のつり合い
今回の状況では電流の値 $I=ne\overline{v}S$ は一定ですので,$\overline{v}$ も当然一定です。
ということは自由電子は等速度運動を行うため,
$$eE=k\overline{v}$$
が成り立ちますね!
$E=\mskip 4mu\bun{V}{l}\mskip 5mu$ および $\overline{v}=\mskip 4mu\bun{I}{neS}\mskip 5mu$ を代入すると,
$$e\mskip 6mu\bun{V}{l}\mskip 5mu=k\mskip 6mu\bun{I}{neS}\mskip 5mu \qquad \therefore \quad V=\mskip 4mu\bun{kl}{ne^2S}\mskip 5muI$$
が得られます。
わかること
この式の形から,$V$ と $I$ が比例関係にあり,その比例定数が $R=\mskip 4mu\bun{kl}{ne^2S}\mskip 5mu$ だということがわかりました!上の式がオームの法則 $V=RI$ そのものだったわけです!
さらに!!
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$R=\mskip 4mu\bun{k}{ne^2}\mskip 5mu\cdot\mskip 6mu\bun{l}{S}\mskip 5mu$ とかくことができるため,$R$ が $l$ に比例し,$S$ に反比例することもわかりますね!その比例定数 $\rho=\mskip 4mu\bun{k}{ne^2}\mskip 5mu$ が抵抗率を表すことまでわかってしまうのです!
知っている公式が結論でしたが,抵抗の図をかいて,必要な方程式を立てて,式変形をしていく一連の流れは自分で説明できるようにしっかりと理解してください!