波動 物理

正弦進行波の一般表現

羽白 いむ

東京大学医学部医学科卒 現役医師
東大指導専門塾鉄緑会 物理・数学科元講師
物理基礎のトリセツ著者
数学のトリセツ共著者

正弦進行波の一般表記

数式の違い

お気づきの人もいるかも知れませんが,$y(x,\,t)=y(x-vt,\,0)$ として考えた場合と $y(x,\,t)=y\left(0,\,t-\mskip 6mu\bun{x}{v}\mskip 5mu\right)$ として考えた場合で,数式が少し異なっています。

前者の方法では,

$$y(x,\,t)=A\sin\left\{2\pi\left(\bun{x}{\lambda}\mskip 5mu-\mskip 6mu\bun{t}{T}\mskip 5mu\right)+\varphi\right\}\stext{\quad……\ ①}$$であり,後者の方法では,

$$y(x,\,t)=A\sin\left\{2\pi\left(\bun{t}{T}\mskip 5mu-\mskip 6mu\bun{x}{\lambda}\mskip 5mu\right)+\varphi\right\}\stext{\quad……\ ②}$$でした。

羽白

見た目はたしかに異なるのですが,実は表している内容は同じなのです。

式変形

このことを確認するために,①式の右辺を少し変形してみます。$\varphi$ は定数ですので,どんな値でも ok です。

そこで,$\varphi\to\pi-\varphi$ とおき換えてみると,

$$\begin{aligned}A\sin\left\{2\pi\left(\bun{x}{\lambda}\mskip 5mu-\mskip 6mu\bun{t}{T}\mskip 5mu\right)+\pi-\varphi\right\}&=A\sin\left[\left\{2\pi\left(\bun{x}{\lambda}\mskip 5mu-\mskip 6mu\bun{t}{T}\mskip 5mu\right)-\varphi\right\}+\pi\right]\\&=A\sin\left[-\left\{2\pi\left(\bun{x}{\lambda}\mskip 5mu-\mskip 6mu\bun{t}{T}\mskip 5mu\right)-\varphi\right\}\right]\\&=A\sin\left\{2\pi\left(\bun{t}{T}\mskip 5mu-\mskip 6mu\bun{x}{\lambda}\mskip 5mu\right)+\varphi\right\}\end{aligned}$$と変形できます。これは ②式の右辺と全く同じですね!

ということで,表しているものはどちらも同じですので,どちらの表記を用いても ok です。いずれの場合でも,波の進行方向が $x$ 軸負の向きになる際には $-$ の符号が $+$ に変わります。

正弦進行波の一般表記

$x$ 軸上を進む波長 $\lambda$,周期 $T$ の正弦進行波について,任意の時刻 $t$ における位置 $x$ の媒質の変位 $y(x,\,t)$ は,

$$y(x,\,t)=A\sin\left\{2\pi\left(\bun{t}{T}\mskip 5mu\pm\mskip 6mu\bun{x}{\lambda}\mskip 5mu\right)+\varphi\right\}$$とかける。波の進行方向が $x$ 軸正の向きのとき,$\pm$ の部分の符号は $-$ として,$x$ 軸負の向きのときは $+$ として考える。

数式の使い方

公式としての暗記はNG!

この形で任意の正弦進行波を表すことができるのですが,この式を覚えて値を代入する,という解き方は推奨されません。

$y(x,\,t)=y(x-vt,\,0)=y\left(0,\,t-\mskip 6mu\bun{x}{v}\mskip 5mu\right)$ を利用しながら解き進めるという方法で問題を解いていきます。

例題で確認してみましょう。

生徒

例題

時刻 $t=0\s$ に原点を通過し,速さ $0.250\ms$ で $x$ 軸上を正の向きに進む正弦進行波がある。$x=0\m$ における媒質の変位 $y\m$ と時刻 $t\s$ の関係を表す $y-t$ グラフを図に示す。

この波の周期 $T\s$,波長 $\lambda\m$ を求めよ。

$t=24\s$ における,$x=2.0\m$ の媒質の変位 $y\m$ を求めよ。

与えられた $y-t$ グラフより,$T=16\s$ であることがわかる。波動の基本公式より,

$$0.250=f\lambda=\mskip 4mu\bun{\lambda}{16}\mskip 5mu$$が成り立つので,これを整理して,$\lambda=4.0\m$ を得る。

与えられた $y-t$ グラフは $-\sin$ 型なので,

$$y(0,\,t)=-3.0\sin2\pi\mskip 6mu\bun{t}{16}\mskip 5mu$$が成立する。時刻 $t$ における位置 $x$ の媒質の変位 $y(x,\,t)$ は,

$$\begin{aligned}y(x,\,t)&=y\left(0,\,t-\mskip 6mu\bun{x}{v}\mskip 5mu\right)\\&=-3.0\sin2\pi\mskip 6mu\bun{t-\mskip 6mu\bun{x}{v}\mskip 5mu}{16}\\&=-3.0\sin2\pi\left(\bun{t}{16}\mskip 5mu-\mskip 6mu\bun{x}{4.0}\mskip 5mu\right)\end{aligned}$$と表すことができる。これに $t=24\s$ および $x=2.0\m$ を代入して,

$$\begin{aligned}y&=-3.0\sin2\pi\left(\bun{24}{16}\mskip 5mu-\mskip 6mu\bun{2.0}{4.0}\mskip 5mu\right)\\&=-3.0\sin2\pi\\&=0\m\end{aligned}$$

実際の流れ

繰り返しになりますが,「まずは与えられたグラフを元に $y(x,\,0)$ もしくは $y(0,\,t)$ を求めて,

$$y(x,\,t)=y(x-vt,\,0)=y\left(0,\,t-\mskip 6mu\bun{x}{v}\mskip 5mu\right)$$を利用して $y(x,\,t)$ を求める」という流れで問題を解くことが非常に多いです。

このことからも,一般形の丸暗記ではなく,

$$y(x,\,t)=y(x-vt,\,0)=y\left(0,\,t-\mskip 6mu\bun{x}{v}\mskip 5mu\right)$$を使いこなせることがより重要であることがわかりますよね。

羽白

なぜこの式が成り立つのかという導出部分も含めて,しっかりと丁寧に身に付けましょう!

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