波動 物理

y-xグラフの数式表現

羽白 いむ

東京大学医学部医学科卒 現役医師
東大指導専門塾鉄緑会 物理・数学科元講師
物理基礎のトリセツ著者
数学のトリセツ共著者

正弦進行波の数式表記

3つの変数

物理基礎で,正弦進行波について学習しました。波は常に時間変化していくので,正弦波を考えるにあたっては,「① 媒質の位置 $x$」「② 媒質の変位 $y$」「③ 時刻 $t$」の3つの変数を考える必要があります。

数式表記にあたって

しかし,グラフで波を表現するためには3変数を同時に表現することができなかったため,時刻 $t$ を固定した $y-x$ グラフや,媒質の位置 $x$ を固定した $y-t$ グラフを考えたのでした。

しかし,数式だったらどうでしょう。

生徒

「任意の時刻 $t$ における,任意の位置 $x$ の媒質の変位 $y$」を結びつけることはできないでしょうか。変位 $y$ を,時刻 $t$ と媒質の位置 $x$ の関数として表すことができたら便利ですよね。

そういった式があれば,「$x=3\m$ の位置の媒質の,$t=5\s$ における変位 $y\m$ を知りたい!」といった場合に値を代入するだけですぐに $y$ が求められるわけです。

羽白

そうした正弦進行波の数式表記について考えていきましょう。

時刻 $t$ と媒質の位置 $x$ の関数として表した変位 $y$ の式を,$y(x,\,t)$ と表記する。

目標

正弦進行波について,任意の時刻 $t$ における,任意の位置 $x$ の媒質の変位 $y$ を表す式 $y(x,\,t)$ を求める。

$y-x$ グラフの数式表記

数式表記のために

まずは $y-x$ グラフについて考えてみましょう。$y-x$ グラフは時刻 $t$ を固定し,その時刻の媒質の様子をそのまま形にしたグラフです。

時刻 $t=0$ における $y-x$ グラフの概形が上図の通りであるとき,このグラフを数式として表現してみましょう。

このとき思い出してほしいのが,力学で扱った単振動です。

羽白

込み入った話はしませんので,「単振動アレルギーなんです!」という人も安心してください。

位相について

単振動のグラフを扱った際に4つのグラフについて考えましたよね。今回のグラフは $+\sin$ 型の形をしています。

振幅が $A$ であることを踏まえると,$y=A\sin\stext{◯}$ の形で表記できるはずです。三角関数の中身である◯の部分(位相)がどのようにかけるか考えてみましょう。

位相の1周期は $2\pi$ ですよね。正弦波の波長は $\lambda$ ですので,$x=\lambda$ の位置で位相がちょうど $2\pi$ になる必要があります。

では,位置$x$ における位相の値はどうなるでしょうか?

生徒

位置 $x$ は,$x=\lambda$ の場所と比べて,$\Bun{x}{\lambda}\mskip 5mu$ 倍された場所と考えることができます。よって,対応する位相も $\Bun{x}{\lambda}\mskip 5mu$ 倍すればokです。

注目していたグラフは「時刻 $t=0$ における,位置 $x$ の変位 $y$」を表しているので,変位 $y$ は $y(x,\,0)$ と表記できます。よって,

$$y(x,\,0)=A\sin2\pi\mskip 6mu\bun{x}{\lambda}\mskip 5mu$$が求める式ですね。

$x$ が $\lambda$ 増えるごとに,位相は $2\pi$ 増えることが確認できるかと思います。

生徒

位相に注目した一般化

ここで出てきた $\Bun{x}{\lambda}\mskip 5mu$ という値は,「位置 $x$ が,原点から波何個分離れた位置にあるか」を表す値です。

$x=\lambda$ であれば,$\Bun{\lambda}{\lambda}\mskip 5mu=1$(個分),$x=3\lambda$ であれば,$\Bun{3\lambda}{\lambda}\mskip 5mu=3$(個分)といった具合ですね。

これに位相の周期 $2\pi$ をかけた値である $2\pi\mskip 6mu\bun{x}{\lambda}\mskip 5mu$ は,「位置のズレ $x$ に対応する位相のズレ」と考えることができます。「位置が $x$ だけずれると,三角関数の中身は $2\pi\mskip 6mu\bun{x}{\lambda}\mskip 5mu$ だけずれるよ!」ということです。

羽白

このことを踏まえて,一般化してみましょう。

原点における位相が $\varphi$ である場合,位置 $x$ の位相は $\varphi$ から $2\pi\mskip 6mu\bun{x}{\lambda}\mskip 5mu$ だけずれるため,$2\pi\mskip 6mu\bun{x}{\lambda}\mskip 5mu+\varphi$ と表現することができます。よって,

$$y(x,\,0)=A\sin\left(2\pi\mskip 6mu\bun{x}{\lambda}\mskip 5mu+\varphi\right)$$が一般的な $y-x$グラフを数式化した形になります。

先ほど確認した $+\sin$ 型の場合は,$\varphi=0$ に対応する。たとえば $+\cos$ 型であれば,$\varphi=\mskip 4mu\bun{\pi}{2}\mskip 5mu$ と考えることができる。

$y-x$ グラフの数式表現

振幅が $A$,波長が $\lambda$ である正弦進行波において,時刻 $t=0$ における位置 $x$ の媒質の変位 $y(x,\,0)$ は,

$$y(x,\,0)=A\sin\left(2\pi\mskip 6mu\bun{x}{\lambda}\mskip 5mu+\varphi\right)$$の形で表される。

この数式をグラフとして可視化したものが $y-x$ グラフである。

例題

$x$ 軸正の向きに進む正弦進行波の時刻 $t=0\s$ における波形が右図の通りであるとき,位置 $x\m$ の媒質の変位 $y(x,\,0)\m$ を求めよ。

グラフの波形は $+\cos$ 型であり,グラフより波長が $\lambda=8.0\m$ であることが読み取れる。よって,

$$y(x,\,0)=2.0\sin2\pi\mskip 6mu\bun{x}{8.0}\mskip 5mu\m$$

式を整理して,$y(x,\,0)=2.0\sin\mskip 6mu\bun{x}{4.0}\mskip 5mu\pi\m$ を解答としてもよいが,波長に対応する値がわかりやすい形を答えとした。

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